10月23日、ソースネクストが手のひらサイズの通訳デバイス「POCKETALK(ポケトーク)」を発表した。音声で話しかけるだけでマイクを通してクラウドで翻訳され、音声で読み上げてくれる。オランダのTravis社と共同で開発した。
まさに漫画に出てくる未来の道具のようだ。だが、最近ではスマートフォンの翻訳アプリも充実している。専用デバイスにはどのような優位性があるのだろうか。
クラウドで翻訳、通信はソラコムのSIM
POCKETALKの大きさは、モバイルWi-Fiルーター程度。重さも90gと軽い。使い方は、話したい言語のキーを押してから話しかけるだけ。2~3秒待った後、翻訳結果が音声で読み上げられる仕組みだ。
すでに50以上の言語に対応しており、多くの主要言語は音声読み上げに対応済みだ。画面を見ながら言語の組み合わせを選択することで切り替える。クラウド上ではGoogleやBaiduなど翻訳エンジンが自動的に選択される。複数の文をまとめて翻訳できるので、伝えたいことを小分けにする必要もない。
バッテリーで6時間駆動し、スリープ状態なら5日間持つ。充電には一般的なMicroUSBを利用する。ビジネスでの出張にも1台持っておくと心強い存在になりそうだ。
クラウドとの接続に必要な通信はどうなっているのか。POCKETALKはWi-Fiモデル以外に、「専用グローバルSIM」を同梱したモデルも提供する。このグローババルSIMを提供するのは、2017年8月にKDDIに買収されたことでも知られるソラコムだ。
このグローバルSIMを使えば、世界61カ国でのデータ通信が可能になる。見知らぬ国でWi-Fiを探す必要はない。グローバルSIM同梱モデルの価格はWi-Fi版より5000円高い2万9800円(税別)だが、SIMを2年使えることを考えれば割安なパッケージといえる。
スマホにはない専用機のメリットを強調
一方で、気になるのはスマートフォン用の翻訳アプリとの関係だ。Google翻訳のように高性能なものが無料で使えるにも関わらず、専用機の存在意義はあるのだろうか。ソースネクストも製品発表会ではこの点を掘り下げてきた。
まずは手間の違いだ。スマホのロックを解除し、アプリを起動する手間に比べると、POCKETALKはいきなり話し始めることができる。スピーカーの音量も、POCKETALKなら相手に聞かせるのに十分な量まで引き上げておける。
特に注目したいのが、スマホを相手に手渡して話してもらう場面だ。「海外で他人にスマホを手渡すのは、心理的な抵抗がある」とソースネクストの松田社長は指摘する。POCKETALKにはスマホのように大事な情報が入っていないので、その不安はかなり払拭できるだろう。
ソースネクストは、POCKETALKをどのように展開していくのか。まず国内では12月14日に家電量販店で個人向けに発売する。さらに、事業者向けのレンタルサービスも提供するという。旅行者向けには空港でのレンタル需要がありそうだ。
さらに大きな需要が見込まれるのが、2020年に約3700万人にまで増えると予想される訪日外国人需要だ。いま、日本を訪れる外国人の多くが言葉の壁に不満を覚えているという。都心でも、外国人観光客が交通機関や飲食店で意思疎通に苦労する場面をよく見かける。
もちろん、今後は英語を習得しようと考える人も増えるだろう。ソースネクストも「ロゼッタストーン」製品のバリエーションを強化するなど、語学学習の需要も取り込んでいく構えだ。
訪日外国人に対応できるようになり、新たなビジネスにつながる可能性も
だが英語だけでなく、中国語、韓国語など多様な言語に対応することを考えれば、POCKETALKの可能性が見えてくる。海外旅行に持ち出すだけでなく、日本国内で訪日外国人向けに活用していけば、これまでにないビジネスチャンスにつながりそうだ。