インターネットは全世界に繋がるオープンなネットワーク環境として構築されており、ECサイトやSNS、電子メールなど、法人から個人まで多種多様なシーンで利用されています。一方で、企業活動はあらゆる情報が電子化されており、顧客情報から請求管理、営業活動の分析、業務・運用に至るまで、多くの情報システムが存在しています。
これらのシステムでは、秘匿性の高い機密情報を扱うため、企業内に限定した通信環境が不可欠となっています。現在、企業活動を支える拠点間のネットワークとしてVPN (Virtual Private Network)サービスを利用するケースが主流になっており、多くの企業で利用されています。
閉域網とは?
VPNサービスは主に、インターネット上で仮想的にプライベートネットワークを構築するインターネットVPNサービスと、インターネットからの到達性を通信事業者内で遮断したクローズドVPNサービスの2種類があります。後者のネットワークは「閉域網(クローズドネットワーク)」と呼ばれ、公共団体・金融業から製造・流通業まで、あらゆる業種で「安全に利用可能な管理されたネットワーク」として活用されています。
閉域接続とは?
一昔前まで、企業内の情報システムはオンプレミス(自社内で機器類を導入すること)が主流でしたが、昨今はクラウドサービスを積極的に活用するケースが増えています。
クラウドサービスはその性質から、インターネット環境から簡単に接続できますが、企業内システムのクラウド化では企業内ネットワークからインターネット環境を経由することなく、ダイレクトにクラウド環境に接続することが求められます。このような接続形態を「閉域接続」と呼びます。閉域接続はインターネットの脅威リスクを回避できる上に、到達経路が限定されることで利用環境が正常か、確認が容易になるなどのメリットがあります。
これに加えて、モバイルデバイスが世の中に浸透したことで、社外からリモートアクセスで業務を行うことが珍しくない時代となりました。また、M2M (Machine to Machine)の世界でも、「IoT」が叫ばれるようになり、クラウドにデータを送信・分析したり、機器を遠隔管理・制御したりするニーズが増大しています。
これらの通信も企業内システムと接続することになりますので、インターネットから隔離された安全な接続環境のニーズがあり、企業内ネットワークとモバイル網をダイレクトに接続(閉域接続)するゲートウェイサービスが活用されるようになっています。
まとめ
企業活動を支えるネットワークサービスとして、プライベートな環境を構築する「閉域網(クローズドネットワーク)サービス」があり、モバイルデバイスからクラウドまで閉域接続することで、安全に管理されたネットワークサービスが活用されています。
通信事業者が用意するクローズドVPNサービスは、やや高価ながらも帯域を確保して安定した品質を提供するサービスから、安価に利用できるベストエフォートサービスまで、幅広いアクセスラインアップが用意されています。クラウドやモバイルを活用するケースが増えることで、コストや事業部門のニーズに合わせて柔軟なネットワークの選択・構築が求められます。セキュリティ性を保ちつつ、企業活動の効率化・向上に繋がる見直しをタイムリーかつ柔軟に行うためにも、VPNサービスを検討してみてはいかがでしょうか。
著者紹介
川原 正勝(かわはら・まさかつ)
ソフトバンク 法人事業統括 ICTイノベーション本部 ネットワークサービス第2統括部
法人向けVPNサービスの技術設計および構築部門を経て、現在は「ソフトバンク 法人向けネットワークサービス」のサービス開発部門を担当