前回は、「Azure Stack Technical Preview 2(TP2)」のサービスメニューおよびその内容について紹介しました。Azure Stack TP2には、「Microsoft Azure」にはない、サービスプロバイダー向けのメニューがあることをご理解いただけたと思います。今回は、Azure Stack TP2で仮想マシンを実際に作成していく流れを見ていきたいと思います。Microsoft Azureとの違いがわかりやすいように、画面キャプチャを多数用意しました。
作成の流れ
大まかな作業の流れは、以下の3ステップになります。
- ストレージアカウントの作成
- 仮想ネットワークの作成
- 仮想マシンの作成
それでは早速作業に入りますが、事前にAzure ADに作成したAzure Stack用ユーザーでAzure Stack TP2にログインしておいてください。
1. ストレージアカウントの作成
まずはストレージアカウントを作成します。メニューバーから「New」→「Data + Storage」→「Storage account」を選択すると、普段Microsoft Azureを利用される方にはなじみのあるストレージアカウントの作成画面が表示されます。
入力項目は下記の通りです。
設定項目 | 設定値(例) |
---|---|
Name | teststorageaccount.AzureStack.Local |
Account Kind | General purpose |
Performance | Standard |
Replication | Locally-redundant storage (LRS) |
Subscription | Default Provider Subscription |
Resource group | Create new |
Location | local |
一見したところ、Microsoft Azureと設定項目が全く同じであるように見えますが、細かい部分で異なる点があります。差分がある個所は次のとおりです。
●Name
Microsoft Azureでは、ストレージアカウントのURLは「core.windows.net」ドメインでユニークである必要があります。一方、Azure Stack TP2では「.AzureStack.Local」ドメインでユニークである必要があります。Azure Stack TP2はローカルの物理マシンにデプロイしているので、グローバルでユニークである必要はなく、Azure Stack TP2をサービス提供する範囲でユニークであれば問題ありません。
●Replication
Microsoft Azureでは「ローカル冗長ストレージ(LRS)」「ゾーン冗長ストレージ(ZRS)」「geo冗長ストレージ(GRS)」「読み取りアクセスgeo冗長ストレージ(RA-GRS)」が選択可能ですが、Azure Stack TP2で選択できるのは「ローカル冗長ストレージ(LRS)」のみです。
●Location
Microsoft Azureでは「東日本」や「西日本」などのリージョンを選択できますが、Azure Stack TP2では「local」のみ選択可能です。
2. 仮想ネットワークの作成
次に仮想ネットワークを作成します。Azure Stack TP2のポータルから「New」→「Networking」→「Virtual Network」を選択すると仮想ネットワークの作成画面が表示されます。
ストレージアカウントと同様、Microsoft Azureと入力項目は同じです。以下が入力項目になります。
入力項目 | 入力値(例) |
---|---|
Name | testVirtualNetwork |
Address Space | 10.0.0.0/16 |
Subnet Name | default |
Subnet address range | 10.0.0.0/24 |
Subscription | Default Provider Subscription |
Resource group | testResource |
Location | local |
ストレージアカウントと同様に、Locationは「local」しか選択できないところが、Microsoft Azureとの主な差分です。
3. 仮想マシンの作成
ストレージアカウント、仮想ネットワークを作成した次はいよいよ仮想マシンの作成です。「New」→「COMPUTE」→「Virtual Machines」を選択します。
デフォルトでは「WindowsServer-2012-R2」の仮想マシンのみ作成できるので、今回は「WindowsServer-2012-R2」をデプロイしていきます。まずは、基本設定の入力です。
ストレージアカウント、仮想ネットワークと同様、画面構成はMicrosoft Azureと変わりません。
次に、仮想マシンのサイズを選びます。Azure Stack TP2では基本と標準の「A0-A4」まで選択が可能でした。今回はRecommendで表示された「A2(CPU:2コア、RAM:3.5GB)」を選択しました。
サイズを選択したら、次は「Settings」タブの入力です。
ここで、先ほど作成したストレージアカウントと仮想ネットワークを選択します。仮想マシン作成時の入力項目は以下になります。
入力項目 | 入力値(例) |
---|---|
Name | testvm |
User disk type | HDD |
User name | testuser |
Password | *********** |
confirm password | *********** |
Subscription | Default Provider Subscription |
Resource group | testResource |
Location | local |
Size | A-2 |
Storage | teststorageaccount |
Network | test-VirtualNetwork |
Subnet | test-subnet |
Public IP address | testvm-ip |
Network security group | testvm-nsg |
Extensions | No extensions |
High availability | None |
Boot Diagnostics | Enabled |
Guest OS diagnostics | Disabled |
Diagnostics storage account | resource00diag336 |
全て入力したら、「Summary」画面に遷移して仮想マシンを作成します。少し待つと仮想マシンが作成されます。作成された仮想マシンの概要画面は、以下のようになっています。
この画面もMicrosoft Azureと画面構成が変わりません。Azure Stack TP2ではMicrosoft Azureと異なり、Public IPに「192.168.102.0/24」のセグメントのIPアドレスが付与されています。このセグメントは、Azure Stackでインターネット接続のためにリザーブされているサブネットです。
それでは、いよいよ仮想マシンに接続してみましょう。概要画面からRDPファイルをダウンロードして、仮想マシンを作成した際に入力したユーザー名・パスワードで仮想マシンに接続します。
問題なく接続できました。仮想マシンが保持するIPアドレスを確認すると、仮想ネットワーク作成時に指定したサブネットのIPアドレスが付与されていることがわかります。
仮想マシンに付与されたPublic IPアドレスは、一見したところ、プライベートIPアドレス(「192.168.102.0/24」のセグメントのIPアドレス)のように思えますが、Microsoft AzureのグローバルIPアドレスのように利用されています。TP2の段階でその理由について考える必要はありませんが、TP3や正式なバージョンが出てくるタイミングでは自社環境との整合性など、検討すべきポイントになっていくことでしょう。
* * *
今回の記事のとおり、Azure StackはMicrosoft Azureとほぼユーザーインタフェースが変わらないため、Microsoft Azureを使用している方であれば、仮想マシン作成に関しては難なく実施できると思います。また、Azureを使ったことがない方も、一連の流れから、Azure Stackの仮想マシンサービスがどのようなものかをご確認いただけたのではないでしょうか。
さて、これまでにエヌ・ティ・ティ・データ(NTTデータ)の技術メンバーから、第15回でAzure Stack TP2特有のサービスメニューを紹介した上で、今回、仮想マシン作成方法の流れを説明したことになります。
これら4回の記事で取り上げたほかにも、Azure Stack TP2にはMicrosoft AzureにはないAdd-onなどの機能があります。検証作業を進めていくなかで、まだまだ多くの可能性があると感じており、これからも引き続き注目して行きたいと思います。
著者紹介
株式会社NTTデータデータセンタ&クラウドサービス事業部
岡本 迅人、奥村 康晃
NTTデータで提供するiDCサービスの保守運用に携わる。また、プライベートクラウドやパブリッククラウド、ハイブリッドクラウドの構築支援を行っており幅広い技術領域に携わっている。最近では、Azure Stackの情報収集を目的にMAS研(Microsoft Azure Stack 研究会)に参加している。