東京ディズニーリゾート30周年を祝うイベント「ザ・ハピネス・イヤー」。パーク内のデコレーションやパレードだけではなく、食でもその盛況感を体験してもらいたい――。そんな思いを実現するために、30周年のモチーフ「ハピネス・バルーン」をイメージしたメニューやスーベニア、「30」にちなんだメニューなど、今だからこそ楽しめる料理が提供されている。
30周年ならではのメニューはどのようにして生み出されたのか。フード企画室フード企画グループ後藤一輝さんと、フード仕入開発部フード開発グループ増田博史さんにお話を伺った。
年間600億円の売り上げ、7,000人以上のスタッフを抱えるフードグループ
――まずは、フードグループ全体の規模と、それぞれの業務内容について教えてください。
後藤さん テーマパーク事業の飲食販売の事業規模は年間600億円を超えており、常に7,000人以上のスタッフが働いています。この数字は、大手外食企業に匹敵する規模です。食材の仕入れやメニューの企画開発、製造販売、戦略策定、プロモーション、教育など、フード本部全体でパークのフードビジネスのほぼすべてを網羅しています。
私の部では売り上げや原価などの数字に基づいて、フード本部が上げるべき利益を意識しています。それを実現するための戦略や方針といった大きな枠組みを作り、増田さんが所属する開発グループなどに伝える役割を担っています。
増田さん 開発グループは企画グループから降りてきた枠組みに沿って、メニューの開発を進めます。重要なのは、どうしたらゲストの満足度を上げられるのかということ。その上で、収益を出すには、どのメニューをどの店舗にどのくらいの価格帯で投入するのかを詰めていきます。企画グループの立てた戦略に沿って戦術を練る部署だと思うと、イメージしやすいかもしれません。
東京ディズニーリゾートらしさを表現するため、ストーリーを意識したメニュー開発
――メニューを開発するプロセスについて教えてください。
増田さん 基本的には販売開始前の10カ月前くらいに企画立案を始め、メニューの開発は約6カ月前、メニュー確定はおおよそ3.5カ月前です。メニュー開発はプロのシェフとの共同作業で、テストキッチン(メニュー開発の段階で試作品を作るキッチン)で実際に調理や盛り付けを行います。
また、ゲストサービスを見越した調理オペレーションやサービスオペレーションの確認作業も開発段階で実施します。試作品は、部長・マネージャーやエグゼクティブシェフ、エリアシェフや現場の担当者、さらにウォルト・ディズニー社を交えて、味はもちろん、オペレーションが回るかどうか、コンセプトと合致しているかなど、さまざまな観点からチェック。そこでGOサインが出れば、晴れて皆さまの前にお出しできるようになるわけです。
後藤さん 東京ディズニーランドと東京ディズニーシーで計91店舗の飲食施設があるのですが、それぞれの店舗にバックグラウンドストーリー、そしてコンセプトが存在します。つまり、パーク、レストラン、今回でいえば30周年イベントと、幾重にも重なるコンセプトがあり、それらすべてに合致するものでないとメニューとして完成しないのです。ですので、このレストランのストーリーにこのメニューは合わないという理由で、最終的に見送る案も多々あります。
縛りとして考えればかなり厳しいのですが、だからこそ東京ディズニーリゾートならではのメニューが出せるという重要なものです。限られた空間に91店舗もの飲食施設が集約され、それぞれが異なるコンセプトやメニューを持つというのは、飲食業界でも他に類を見ない大きな特徴ですね。
※フード担当(2)へ続く。(2月1日更新予定)