会社員の場合、源泉徴収の形で給料から天引きされるため、あまり意識しないままに払っていることが多い税金。しかし、せっかく給料が増えても、「手取りが増えないのは何でだろう?」と手をこまねいているだけなのは、あまりにももったいない。税金の種類や仕組みを理解して、払うべきものは払って、後から慌てないように、また取り戻せるものは取り戻して、"お得生活"ができるように、ゼロから勉強しよう。
2013年1月から所得税の課税がスタートしている「復興増税」。知らぬ間になんとなく支払っている「復興増税」について改めてチェックしてみたい。
復興特別所得税は2013年1月から、2.1%上乗せでスタート
東日本大震災からの復興に使う予算の財源を確保するため、所得税を上乗せする「復興増税」が2013年1月からスタートしている。既に給与から復興増税分が上乗せされて所得税が源泉徴収されて1年以上が経つわけだ。
復興増税のうち、現在課税されて、給与から源泉徴収されているのは「復興特別所得税」と呼ばれるもの。増税額は「基準所得税額×2.1%」で計算される。本来の所得税額が10万円であれば、2100円が上乗せされ、10万2100円が徴収されている。この2.1%の上乗せは、何と2037年までの25年間続く。実際の影響額は夫婦と子ども2人の世帯で年収600万円の場合、年2700円、年収1000万円だと年1万4000円の負担になる。年2700円というと負担は軽そうに見えるが、25年間で計算すると6万7500円。バカにならない金額なのだ。
今年6月から住民税課税もスタート
これに加えて今年6月からは、住民税も10年間、一律1000円が課税されることになる。こちらは、年収に関係なく年間1万2000円の負担となる。10年間で計算すると、12万円。先ほどの所得税6万7500円と合計すると、18万7500円にもなる。
政府は2011年度から15年度までの5年間で約19兆円を復興計画に使う予定を立てている。歳出削減だけでは財源が捻出できず、政府保有株や資産売却なども予定しているが、所得税や法人税への上乗せも財源確保のために必須だったというわけだ。増税による税収は年0.3兆円。25年間で計7.5兆円になる見通しだ。
企業への負担も2012年4月から始まる事業年度で3年間、復興特別法人税という形で法人税額に10%上乗せされている。しかし、こちらは3年間の予定を2年間に削減し、その分を賃上げに回すようという減税が既に決まっている。個人への負担は今年6月からさらに増すなか、法人の負担は早々になくなることへの批判もなくはない。企業は浮いた分をきっちり賃上げに向けてくれるといいのだが。
預金利息や配当、株式等の売買益にも課税
また、復興特別所得税は、実は給与からの天引き以外からも徴収されている。例えば、預金利息。これまで所得税15%、住民税5%の20%が課税されていたが、2013年から所得税部分に2.1%が上乗せされている。つまり、20%課税が20.315%に増税となっているのだ。もちろん、あまりの低金利に利息が1円、2円ということも多いので、あまり復興増税を意識する機会はないが、今後金利がアップすると負担の重みを感じる場面が出てくるかもしれない。
同じく上場株式や投資信託の配当・売買益、債券の利子の課税も同じく、復興特別所得税がかかっている。特に、今年1月から上場株式や投資信託の課税は10%から20%と本来の税率に戻された。株式投資で10万円儲かると、2万315円の源泉徴収がかかってしまうのだ。これは投資信託の配当や債券の利子でも同じ。こちらの負担については、今年からNISA(少額投資非課税制度)がスタートしているので、まずは利用して税負担を回避するのがいいだろう。
4月1日からいよいよ消費税が5%から8%にアップし、生活全般に負担が増える。これ以外にも、国民年金保険料が4月から月額280円アップするほか、9月には厚生年金保険料も引き上げられ、10月の給与天引き分から負担が増す。こちらは2017年まで毎年保険料率が0.354%ずる引き上げられることが既に決まっている。
税金や社会保険料の引き上げが相次ぐ厳しいスタートの2014年度。もう1度、お金の出入りをきちんと把握して、無駄な出費は極力減らす努力が必要そうだ。
(※画像は本文とは関係ありません)
<著者プロフィール>
酒井 富士子
経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。上智大学卒。日経ホーム出版社入社。 『日経ウーマン』『日経マネー』副編集長歴任後、リクルート入社。『あるじゃん』『赤すぐ』(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に『0円からはじめるつもり貯金』『20代からはじめるお金をふやす100の常識』『職業訓練校 3倍まる得スキルアップ術』『ハローワーク 3倍まる得活用術』『J-REIT金メダル投資術』(秀和システム)など。