会社員の場合、源泉徴収の形で給料から天引きされるため、あまり意識しないままに払っていることが多い税金。しかし、せっかく給料が増えても、「手取りが増えないのは何でだろう?」と手をこまねいているだけなのは、あまりにももったいない。税金の種類や仕組みを理解して、払うべきものは払って、後から慌てないように、また取り戻せるものは取り戻して、"お得生活"ができるように、ゼロから勉強しよう。


消費税はなぜ給与天引きされない?

税金というと何となく、給料から知らぬ間に取られているイメージが強い。実際、給料から毎月天引きされているのが「所得税」と「住民税」で国と自治体にとっての大きな収入源だ。実は税金には大きく分けて2種類あり、所得税や住民税のように「入ってくるお金にかかる税金」と、消費税やたばこ税のように「出ていくお金にかかる税金」がある。

2014年4月から税率アップが決まったのが、この「出ていくお金」にかかるのが消費税だ。消費税とは、モノやサービスを買った時に支払う税金のこと。実際はモノを買った消費者が納めるのではなく、提供したお店が政府に納税する仕組みのため、直接支払わないという意味で「間接税」といわれている。

消費税率がアップしたのは、減収を補うため

消費税がスタートしたのは1989年4月1日。税率は3%だった。97年4月1日から5%に引き上げられ、今回の8%への増率は17年ぶりとなる。

図表(1)

税率の引き上げの背景としては、社会保障負担増や国の借金比率のことなどがよくいわれる。しかし、端的にいうと、1989年から91年のバブル時に頂点だった所得税と法人税収が、その後減少の一途をたどっていることが大きな要因。所得税は91年に約26.7兆円だったものが2012年に約14兆円に、法人税は89年に19兆円だったものが2012年には約10兆円となっている。消費税は97年以降10兆円前後の安定した税収があるため、ここを引き上げることで、国の収入減少分を補てんできるというわけだ。

給料や収益など「入ってくるお金」は減少すると課税できなくなるが、消費といった「出ていくお金」は常にある一定は発生する。そのため、税収が半分になることがなく、税率アップは国の収入アップに確実に貢献するというわけだ。

消費税率アップで生活にどんな影響がある?

来年4月に消費税がアップすると、実際の生活にはどんな影響があるのだろうか。まず、公共料金には3%分がただちに上乗せされる。電気、ガス、水道などすべてが料金アップとなる。4月以降使用分が反映されるので、5月から料金が上がる見込みだ。携帯電話なども上がる予定だ。

交通運賃にも反映される見込みで、現在議論されているのがICカード。「1円単位」での運賃改定が検討されている。券売機の場合、1円単位はムリなので、10円単位での運賃アップとなりそうだ。タクシーの初乗り運賃も上がりそうな気配だ。

学校の学費などはどうだろう。実は大学、専門学校、私立の小中高校などの授業料は非課税となっている。そのため、直接な影響はない。ただし、体操服や教科書代、給食費などは消費税がかかっているので、値上げの可能性もある。

病院の診療費も消費税が非課税化されている。ただし、初診料などには消費税がかかっているので、一部の支払いには影響が出るかもしれない。

日常の食品や雑貨はどうなるのだろうか?実は、消費税は、来年の4月に8%、再来年の10月に10%と二段階で税率変更をする予定となっている。景気の状況を見て判断ということになっているが、二段階アップになる可能性は高い。そのため、今回、店での商品価格表示は消費税込みでも、抜きでも表示してよいことになっている。たとえば、今までなら100円のものは105円と表記されていたが、来年4月から100円と表記しても、108円と表記してもよいのだ。 

ただし、100円と表記する場合には、本体価格であることは併せて表記する必要があるため、100円(税抜き)となり、108円と表記する場合には108円(税込)となる。消費税が8%になると表記がわかりにくくなる可能性があるので、注意したい。

また、97年に消費税が3%から5%に上がったとき、「消費税5%還元セール」といった売出しが多くされたが、今回はこうした文言のセールは禁止となっている。消費者には何かと厳しい、値上げの春となりそうだ。

消費税駆け込みは、得か損か?

消費増税は、所得の低い世帯に不利な不公平増税とよく言われる。なぜなら、生活必需品や公共料金の支払いなどの消費額は、所得の高低に関係なくある一定の範囲で、どの世帯も同じだからだ。実際、消費税の負担割合は、現行の5%では、年収300万円未満世帯は3.8%、1000万円以上世帯は1.7%(みずほ総合研究所試算)という試算もある。

少しでも家計負担を和らげるには、価格の高いものをせめて消費税が5%のうちに購入しよう、というどうしても考えざるをえない。

その典型が住宅だ。9月末までに請負契約を結べば、4月以降の入居でも消費税率は5%でよいという経過措置があるため、駆け込みで購入した人も多かったようだ。

ただし、来年以降に住宅を購入した場合の住宅ローン控除は大幅に減税される予定。還付額を試算すると、場合によっては、来年以降に購入した人も得な場合もあるので微妙だ。

次に高いのは自家用車だろう。これについても、購入時の取得税や重量税の減税が検討されている。つまりは慌てる必要はないということだろうか。

しかし、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などの家電などは、どうせ買おうと思っている人はやはり、来年3月までの購入がお得なのではないだろうか。

また、注意したいのが子どもの通信教育など。たとえば、来年4月から1年間受講する場合、3月31日までに申込んで、1年分をクレジットカードなどで一括払いすれば、消費税は5%で済む。1回ずつ払いの場合は、3月に支払った4月分は消費税5%だが、4月に支払う5月分は消費税8%となる(図表(2)参照)。

図表(2)

こうしたサービスを利用している人は、各社ともHPに詳しく消費税の経過措置について掲載しているので、よく調べて少しでもお得な支払いをするのが賢明だろう。

<著者プロフィール>

酒井 富士子

経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。 上智大学卒。日経ホーム出版社入社。 『日経ウーマン』『日経マネー』副編集長歴任後、リクルート入社。『あるじゃん』『赤すぐ』(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に『0円からはじめるつもり貯金』『20代からはじめるお金をふやす100の常識』『職業訓練校 3倍まる得スキルアップ術』『ハローワーク 3倍まる得活用術』(株式会社秀和システム)など。