無理が通れば道理がひっこむ。「別れさせ屋は何ができますか?」という質問があれば、一番わかりやすい答がこれかもしれません。このままでは、自力では、どうもできない。そんな行き詰まった状況を打開するお手伝いをするのが、別れさせ屋の工作です。どんな人がどんな時に、別れさせ屋を利用するのか。一般的に思い浮かぶのは、不倫や復縁といった訳アリな男女の恋愛模様でしょう。そして依頼内容は、略奪したいから相手を配偶者や恋人を別れさせて欲しい。これが、ステレオタイプな別れさせ屋のイメージです。
これまで、あえてそのような“ステレオタイプなものではない事例”をご紹介してきました。パパ活、ストーカー、イジメなど、別れさせ屋ってこんな使い方もあるんだ! と驚きの声が寄せられています。
以前にも触れたのですが、全国でも有名な縁切り神社に奉納されている絵馬を見ると、「彼があの女と別れますように」といった願いに負けず劣らず多いのが、「私を苦しめる姑が早く亡くなりますように」「息子があの嫁と別れて、孫に会えますように」といった内容です。令和の今も、嫁姑の確執はドロドロとしているようで……。 今回お届けするのは、正に泥沼の嫁vs姑+小姑の戦い。さらに不倫に走った夫と夫婦関係の危機を迎えたサレ妻が全ては姑息なトメコトメの企みだったと知り、全力で逆襲するお話です。
堪忍袋の尾は切れた! 鬼にも蛇にもなろうじゃないか
これまでの顛末を記録したノート。血の気のない白い顔。何度も噛み締めたのであろう、唇の傷が痛々しい。決意して相談に来られた美和さん(仮名)に、まず最初にやっていただいたのは、X(Twitter)のアカウントに鍵をかけることでした。これからのミッションは秘密裏に遂行されなければなりません。親しいお友達や、実家のお母さん、お姉さんにも作戦内容は口外禁止です。
美和さんと夫の大介さんは、結婚8ヶ月目。本来ならまだまだ新婚生活を楽しんでいるはずの時期ですが、夫の実家での完全同居で始まったこの結婚生活は、絵に描いたような嫁いびりの連続だったのです。特に夫の妹(以下コトメ)は、美和さんがまだ彼女だった頃から何かと口出しや嫌味な発言が多く、彼女との同居生活は悩みの種でした。 料理の味付け、掃除の仕方、服装、結婚半年でまだ妊娠していないこと、親戚や近所との付き合い、美和さんの派遣社員としての仕事、実家への帰省、友人との電話や女子会までありとあらゆることに文句を言われる毎日。美和さんは、大介さんの低い給与や奨学金と車のローンの返済、老後資金や子供の教育費のためとはいえ、最初から同居を選んだことを深く後悔していました。
大介さんはというと、家族仲が良く、妹を可愛がっているため、美和さんの訴えに最初こそ耳を貸していたものの、今では「そんな事言っても仕方がないんだから、何とか上手くやってくれよ」と言うばかり。当てになりません。それどころか、仕事や付き合いを理由に、平日の帰宅が遅くなり、休日も美和さんをおいて1人で出かけることが増えたのです。
そして発覚したのが、大介さんの浮気。さらに追い討ちをかけるように、信じられない言葉が、トメコトメから発せられたのです。「アンタみたいなのが嫁じゃ、そりゃ浮気もしたくなるよ」「お前が出て行けばいいのに。新しいお嫁さんは若くて可愛いからいいね」 ……若くて可愛い? なぜ、あなた達がそれを知っている? 美和さんが違和感を覚えたその瞬間から、今回の報復ストーリーは始まりました。
鬼トメ、鬼コトメ、そしてだらしないプリンとシタ夫
読者の皆さんもお気づきでしょう。そうです。なんと夫である大介さんの不倫相手は、コトメの友人だったのです。この不倫相手の女性をプリンと呼びます。バツイチのプリンはコトメの長年の友人で、大介さんと美和さんが結婚する前に何度も家に遊びに来たことがあり、トメとも面識があります。清楚なメイクやシンプルな服装でダークヘアのボブの美和さんとはかなりタイプが異なる、いわゆる女子力が高いタイプの女性ですが、前夫と離婚したものの、独り身でしっかり働いて自活していくというより、お金がないから実家に身を寄せる、でも実家はうるさいから出て行きたい、誰かいい男性いないかなという感じで再婚希望のようです。
ここで、美和さんのことが邪魔で仕方ないコトメが画作します。「お兄ちゃんとくっつけちゃえ。そうすれば、うざいアイツがいなくなる。お兄ちゃんに捨てられろ。ざま〜」 そして、何ともゲスな娘の発案をたしなめるどころか、トメも乗っかります。「そうねえ。辛気臭い美和より華もあるし、コトメちゃんとも仲良しだから家が明るくなるわ。大体、大介が小中学校で好きになった女の子って確かギャルだったじゃない」
さらに信じられないことに、大介さん自身が、コトメの御膳立てとプリンからの猛プッシュに満更でもなく、数回飲みに行った後、酔った勢いで関係を持ってしまいました。さすがに我に帰り、一旦は会うのをやめようとしたのですが、コトメから「お兄ちゃんひどいよね。私の友達を泣かせるつもり?」と責められ、美和さんとトメコトメの板挟みに悩み、また仕事、ワンオペ家事、義家族との不和で疲弊した美和さんとの喧嘩が増えたのを機に、またプリンとの関係を再開してしまったのです。初めは美和さんへの罪悪感にさいなまれていた大介さんも、徐々に、「家の居心地が悪いんだから仕方ない」「俺の家族と仲良くできない妻にも問題がある」「結婚してから、見た目にも手抜きすぎじゃないか」と、サレ妻である美和さんに責任転嫁するようになり、離婚、再婚、または独身者として自由を謳歌するという考えがよぎるようになりました。
無力感に打ちひしがれる必要はない
なんとひどい。ここまで読んで、憤慨していらっしゃる方も多いでしょう。こんなことがあるなんて、なんて恐ろしい。そう感じた方もいらっしゃるかもしれません。 トメコトメがしたことは決して許されませんが、しかしながらこれをトメやコトメ、あるいは夫の立場から見ると、こう言えなくもないのです。
仲の良い家族。息子に甘い母親。立派に成人しても家族を大事にする息子。ずっと背中を見てきた父親と同じ職種を選んだ息子。ブラコン、シスコンと言われるほど仲の良い兄妹。完全に平和な家族に一つの不協和音。それが美和さんです。美和さんがいなくなれば、一家は元の平和を取り戻すであろうことは事実。
結婚というのは両性が親の戸籍から離れ、新たに家族を作ることだろう。親離れしない、子離れできない家族に問題がある!苦しんでいる妻に対し知らぬ存ぜぬどころか不倫など、最低の夫だ! そんなお子ちゃまに結婚する資格などない! このように怒り心頭の方もいるでしょう。そのとおりです。
しかしながら大介さんのようにずっと実家暮らしで仲良し家族であった場合、また完全同居で自分は何一つ環境も責任分担も変わらず結婚がスタートした場合、新たに一から家族を作っていくという責任感が希薄になるのは当たり前といえば当たり前なのです。物事は一長一短。生活費や子育て、将来の介護を考えれば、同居にもメリットはあります。 と物事を俯瞰的に見ようとする人であればあるほど、このようなハラスメントと裏切りを受けても、自分も悪いのではないかと考えてしまいがちです。まして日々、嫌味を言われ家の中で孤立していれば、正常な判断力が削がれていきます。そうして無力感が増して、引き下がるしかないと考えてしまいがち。
でもこのトメとコトメとプリンの奸計は、許すべきことではありません。どんな言い訳も、この事実のまえには無意味です。
トメとコトメとプリンとシタ夫をどう成敗するか。これは依頼主である美和さんが今後どうしたいかによって、いくつかの選択肢があります。一部をご紹介しましょう。
作戦A:離婚。プリンとシタ夫、それぞれへの慰謝料請求。こちらは不倫の証拠がある以上、問題なく行えます。加えて、コトメへの慰謝料請求。慰謝料支払を回避するために、義実家によるサレ妻の帰責事由でっちあげへの対策。もちろん、共通の知人には事の顛末を知らせましょう。
作戦B:再構築。この場合、プリンとシタ夫を別れさせる必要があります。また、コトメとトメの悪事を義父(ウト)に知らせることも大切。必要であれば、親戚やご近所、勤務先などにもコトメとトメの悪巧みがバレる流れも作りたいところ。 このようにこれまでの経緯、状況、依頼者の希望する着地点など丁寧にヒアリング、調査し、複数の工作プランをしっかり練った上で、ターゲットを追い詰めます。もちろん、想定外のことが起きることも稀にありますが、人間心理を知り尽くしたプロの工作員は慌てず怯まず、作戦変更します。
信じられないような悪いヤツに立ち向かうには、こちらも単純なやり方ではなく、度肝を抜くような大胆な工作が必要です。でもそれを、既に心が疲れ果てている個人ができるのかというと難しいところ。これからの人生、幸せになるためには(それが一番の復讐です)、法を犯したり、自らの手を汚すわけにはいきません。心を鬼にしても、自分が鬼になってはいけないのです。そんな正面突破が難しい悩みだからこそ、別れさせ屋の工作を利用する価値がおおいにあると言えます。
このように別れさせ屋に持ち込まれる相談・依頼内容は様々です。別れさせ屋は弁護士事務所の法律相談とは異なります。こんな依頼は無理だよね…と思う前に、一度相談だけでもしていただければ、あなたの苦しみや執着が解決に向かって動き出すかもしれません。