不倫と聞くと、既婚男性と若い独身女性という組み合わせを思い浮かべる人は少なくありません。某有名小説コンクールには、審査員が「もう、それは読みたくない……。違う内容の作品が読みたい……」と呻き声を上げるほど、この中年男性と若い女性の関係を描いた原稿が大量に寄せられるそうです。書き手は自分の願望を綴った中年男性であることは、言うまでもありません。

ところがリアルで不倫恋愛をしている人達を見ると、ダブル不倫が占める割合が非常に高いのです。最近は特に多い。出会い方は、職場、同窓会、アプリなど様々です。そして今回の事例のように、子供の学校のPTAやお稽古ごとなどをとおし、保護者同士という立場で不倫が行われていることもあります。


今回の依頼内容
子供の友達のパパと不倫。ばれたら大変なことになるのはわかっているがやめられない。因みに一緒になれる方法はあるのか知りたい。他の女性が彼にちょっかいを出した時は、あらゆる手で妨害した過去あり。


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マンネリ化した夫婦関係、刺激のない日常、老いていく自分。そんな中で、父親母親ではなく男、女になれるトキメキに心奪われ、一線を越えてしまう既婚者たち。その関係を一度きりの過ちでなく継続するならば……ダブル不倫には絶対ルールと言っても過言ではない掟があります。

それはお互いに、そしてお互いの、家庭を壊さないことです。お互いの心にそっと仕舞い込まれる一夜の思い出。或いは絶対にバレないよう、仕事や家族に皺寄せがいかないよう、最新の注意を払いながら募る思いをコントロールし、会えた時にはその限られた時間を目一杯愛おしむ。そのような忍び愛とでもいうような形で、お互いが同じ方向を向いていれば、比較的、周りにも害なく関係を継続できます。

しかし現実には、好き、会いたいという気持ちが強くなり過ぎて心が壊れてしまうほど苦しんだり、略奪を望んだり、相手の配偶者にバレて修羅場になったりしてしまうことも多々あります。今回の事例は正に、そのバランスが崩れてしまった、だらしない男と恋に狂い夜叉と化した女性のストーリーです。

PTAは不倫の温床?

今回お話を伺った桜子さんは、既婚者。大手シンクタンクで働く夫との間に、二人の小学生の子供がいます。スモーキーピンクのバッグとパンプス、モーブカラーのニットワンピース、色白の整った顔立ちにふんわりとかかるセミロングの髪、細い指には夫から結婚10周年の記念に買ってもらったマトラッセリングと、もう一つ可愛らしい小さなダイヤのリングが嵌められています。珍しいデザインのリングですね、素敵です。そう褒めると、桜子さんは嬉しそうに頬を染め、彼氏からの誕生日プレゼントだと話してくれました。

彼氏。そうです。桜子さんには不倫中の彼氏がいるのです。その彼氏とは、長男・誠也君の同級生、海斗君のパパである隆司さん。二人の子供達は、幼稚園と少年野球チームが同じであったことから非常に仲が良く、また不倫彼氏隆司さんは自営業者で、海斗君の弟や妹の育児で多忙な妻に代わり、学校行事、PTA、試合などに頻繁に顔を出していました。イケメンでイクメンで、人当たりが良く、アルファードとレクサスを乗り分け買い出しや荷物運び、送迎を買って出る隆司さんが姿を現すと、ママたちのテンションが一気に上がり、ちょっとしたハーレム状態に。

お互いに隆司さんへの好意を探り合う会話の中でポロポロとこぼれる夫への不満やセックスレス、疑似恋愛願望、ほかの男性との比較、隆司さんの妻の特徴、そしてその場にいない誰かの不倫の噂。子の家庭教師と、スイミングスクールのコーチと、そしてPTAのメンバー内で。複数の不倫話を耳にするうちに、「なんだ、皆やってるんだ」という気持ちが芽生えてくるのは、第二子が産まれてもう7年以上、レスだった桜子さんにとり当然の成り行きかもしれません。

きっかけさえあれば欲望に火がつき燃え上がる。そんな桜子さんと隆司さんの不倫が始まったのは、子供の怪我がきっかけでした。その場にいた隆司さんは服が汚れるのも構わず応急処置し、車で病院まで搬送した上に、真っ青になって駆け込んできた桜子さんを落ち着かせ、彼女と子供を自宅まで送る道中、「痛い時にはこれが効きますよ!」とアイスクリームを買って手渡しました。我が子と冗談を言い合う隆司さんの姿を見て、子育てに消極的な実の父である夫より父子らしいと感じてしまった桜子さん。後日、この前のお礼をしたいという口実で二人で会う約束を取り付けます。打ち合わせ、買い出し、お礼、ついでに送迎と、一緒に行動する口実が作りやすいPTAは、生活圏が重なる不倫相手のパートナーや周りの人にバレるリスクが低くないものの、社内不倫同様に、多発しているのです。

仰天の力技で、彼に近付く他ママ達を粉砕

金銭的、時間的に余裕があり、家事育児に追われる妻をよそに、独身気分が抜けない隆司さん。経済的には何不自由ないものの、仕事人間で家のことはお前に任せたとばかりな態度の夫との、レスとワンオペの結婚生活に女性として不満を抱いていた桜子さん。凸凹のようにお互いの不足を補う関係は心地よく、年をまたいでも続きました。

しかしながらここにきて、新たな悩みが桜子さんに生まれました。まず、夫のことが鬱陶しくてたまらなくなってしまったのです。面白いもので、桜子さんから誘っても「疲れてる」とスキンシップや夫婦生活を拒否していた夫は、桜子さんの気持ちが離れていくに従い、3人めを作ることを提案してきました。この人に抱かれたくない。そうはっきりと自覚した桜子さんは、隆司さんと一緒になれたら……と考えるようになります。

一方で、隆司さんのような肉食系男性にとり、桜子さんとの関係は心地よく「お気に入り」ではあるものの、長くなるほど他の女性にも興味を持ってしまいます。過去数回、他のママが彼に接近していることに気づいた桜子さんは、あらゆる手で妨害しました。その中にはモラルに反したやり方や、一歩間違えれば警察沙汰になったり訴えられてもおかしくない犯罪スレスレの嫌がらせも。その一部をご紹介しましょう。

桜子さんが隆司さんと付き合いだして3ヶ月が経とうという頃、PTA内で不穏な噂が流れました。前年度までPTAで会計係を務めている田中さんという女性が、隆司さんの会社でパート社員として働き始めたが、どうやら田中さんは母子家庭で、以前から隆司さんに好意を寄せていたというのです。隆司さんの妻が悪阻など体調不良であることを理由に、お惣菜やお弁当を手作りして差し入れていることも、桜子さんの気持ちを逆撫でしました。「出過ぎた真似をするんじゃないわよ! 妻を何だと思ってるの? 泥棒猫!」と、なぜか自分のことは棚に上げて義憤に駆られた桜子さんは、率先して田中さんの悪い噂を広めたのです。皆の何となく冷ややかな目線を田中さんがはっきりと感じた頃、PTA、学校長宛、教育委員会に怪文書が届きました。それは田中さんによる経費横領の疑いと、相手男性については名を伏せたまま不倫関係を厳しい言い方で指摘するもので、調査と適正な処分がされないならメディアに話すつもりという内容でした。その後、一身上の理由で会計役を辞した田中家は、夏休みを挟み、転校してしまいます。

田中さんの件の時は一方的に、あの女が隆司さんを誘惑している、けしからんと憤慨した桜子さんですが、程なく、隆司さんが浮気症であることを思い知ります。隆司さんのスマホとSNSを覗き見したところ、自分以外に少なくとも二人の「彼女」がいることがわかったのです。一人は隆司さんの取引先で働いている20代独身の派遣社員で、既に深い関係が数ヶ月以上続いており、もう一人は最近関係がスタートしたばかりと見られる、転校生の母親でした。自分よりずっと若い女性と、海外帰りの元駐在妻。華やかな二人に対し、女としての嫉妬がメラメラと……。彼を奪われたくないという焦りと、とにかくあの女がムカつく、許せないという理不尽な憎しみに、桜子さんは恐ろしい行動に出ます。

まず元駐在妻であるユキナさんからです。クリスマス前のPTAの集まり。隆司さんから、その日は出席できないから会えないと言われた桜子さんは、鋭い女の勘で二人が会うに違いないと考えました。隆司さんがこんな怪しまれずに会え、ロマンティックなイベントで女性をいい気分にできる機会を逃すはずがないからです。いつものホテルで見張っているとやはり! 二人がやってきました。探偵もびっくり、変装した桜子さんは密会の証拠写真を撮り、なんとユキナさんの夫の勤務先に送りつけたのみならず、ユキナさんたちが住むマンションの前に「うっかり」落としたのです。もちろんその時も変装し顔がわからないようにして、監視カメラを避けたことは言うまでもありません。ユキナさんと家族にとって、日本に本帰国してはじめてのクリスマスと年末年始が、地獄のようなホリデーになったことは明らかです。幸か不幸か、ユキナさんが浮気の相手が隆司さんだと口を割らなかったため、慰謝料請求などの修羅場にはなりませんでした。女性側から「夫にばれてしまったので、もう会えない」と言われ、二人の関係は終わりを告げました。

次に取引先の若い女性従業員であるハルヒさんに対してですが、桜子さんはまず名前や写真などからSNSを調べ上げます。LINEと同じアカウント名や写真でInstagramなどをしていたため、特定はあっという間でした。十分に情報収集した後、ハルヒさんが隆司さんと喧嘩したり病んだタイミングで、桜子さんは大胆にも隆司さんの自宅に無言電話を何度もかけ、隆司さんの妻を疑心暗鬼に。そしてなんと、勝手に保存したハルヒさんの写真や投稿を、SNSの捨てアカから隆司さんの妻のアカウントに送り付けたのです。

そんなことをしたら自分と隆司さんの関係も危うくなるのでは? と思いますが、この頃の桜子さんは隆司さんの浮気症にも既に気付いており、また自分を裏切った隆司さんも少し痛い目にあわせてやりたいという気持ちがあったようです。「彼にはそんな気持ちはこれっぽっちも見せてませんけどね(笑)」と、聞いているこちらの血の気が引くような嫌がらせや潰しの数々を、悪びれもせず語る桜子さん。

彼は私のもの、誰にも渡さない、ちょっかいを出す女性は全力で潰す。そう言い切るまなじりを釣り上げた彼女の姿は、正に恋に狂い業火に焼かれる夜叉そのもの。自分と隆司さんの不倫がばれたらどうなるか。怪文書や嫌がらせの主が自分だとばれたらどうなるか。大変なことになるのはわかっているが、やめられないのです。危なっかしい桜子さんはこの先どうなるのでしょう。

不倫関係から略奪を成功させるにしろ、好きな男性とライバルを別れさせるにせよ、一歩間違えば自分の破滅や破局に繋がるのですから、客観的視点、慎重さ、確実さ、用意周到さが絶対に必要です。その点、不倫相談や別れさせ屋といったプロのサポートがあるのとないのとでは、リスクや成功率も変わってきます。

「妻でもなく母でもなく、一人の女として」という時代の呪縛

ダブル不倫が増えた理由は、いくつかあります。平均寿命が長くなったこと。「女は三界に家無し」な男尊女卑社会から、女性でも自立できる社会になったこと。見た目年齢、そして恐らく精神年齢も、昭和時代に比べると信じられないほど若くなったこと。30代はまだまだ若い、中高年の恋愛や結婚も珍しくないという生涯現役社会になったこと。

恋愛や結婚のみならず、仕事、生涯学習、アンチエイジング、オシャレなど、あらゆる面で「ずっとずっと女」であることが求められます。妻であっても、母であっても、それとは別に「妻でもなく母でもなく、一人の女として」充実しているべき。この考えは、結婚してしまうと誰かの妻(もっと言えば嫁)、誰かの母としか扱われなかった女性が解放され自由になった証ですが、同時に、一人の女として魅力を認められ愛されなくては十分でない、という時代の呪縛を生み出しているのではないでしょうか。

妻になって何年経っても、婚外恋愛にシンデレラの靴(桜子さんの場合は、アガットのダイヤのリングですが)とロマンスの王子様を求める女性は、果たして幸せになれるのでしょうか。知人である、幸せのわらしべ長者と呼ばれているセレブ妻(バツ4)ならどう言うか、非常に気になります。