パパ活や不倫などは、一昔前ならドン引きものの醜聞でした。男と女の色と欲、時々本気の道ならぬ恋愛。それがいつの間にか時代と共に、割とよく聞く話になってしまいました。特に既婚者同士のダブル不倫は、とても増えています。

職場で、同窓会で、PTAなど保護者同士で、あるいはアプリで。出会い方は違えど、刺激のないマンネリ化した日常にもたらされたときめきに心奪われ、一線を越える既婚者たち。それがお互いの心にそっと仕舞い込まれるひと夜の思い出で終われば、大きな問題には発展しないのですが、ズルズルと関係を続けてしまい、苦しんだり、略奪を望んだり、相手の配偶者にバレて修羅場になったりしてしまうことも多々あります。中には、今回の事例のようなケースも……。

  • ※画像はイメージです


今回の依頼内容
相談者は既婚女性。不倫の相手は従兄弟。彼がまだ未婚の時に関係を持ち、後にダブル不倫に。別れたくない。お互い家庭を大事にして、うまくやっていければと思うが、彼には自分以外にも女性の影がちらほら。そんなある日、彼が交通事故に遭い、お金が必要に。夫への罪悪感はあるが……


15年前に始まった、従兄弟との“不適切な関係”

今回お話を伺った文(あや)さんは、既婚者です。ダブル不倫中の既婚女性や、10年以上の不倫関係という話には驚かない相談員も、その不倫彼氏が7歳年下の従兄弟というケースは初めてです。しかも、従兄弟の純さんがまだ未婚の時に関係を持ってしまったと言うのです。さらに、ここ数年の話かと思いきや、なんと純さんがまだ10代、しかも高校生の時に、文さんの言葉を借りると「強引に襲われました」。ボクシングが趣味で一時はボクサーを目指していた純さんは、なかなかのマッチョな上に、顔は人気の韓国イケメン俳優似。当然、女子からはモテモテでした。

罪悪感や嫉妬が理由で、数回関係を持った後に逃げるように一度は関係を切った文さんでしたが、純さんの「子供のときからずっと文ちゃんが好きだった」「俺が大学合格したら、もうダメな理由ないでしょ」といった熱烈なLINEや、クリスマスに一人暮らしの文さんのマンション前で何時間も待っていたいじらしい姿に、すっかりやられてしまいます。

「どうしても別れられない」

親には言えない秘密の関係はそのまま続き、喧嘩、自然消滅、復縁、別の交際相手など紆余曲折あって、後にダブル不倫に変わります。いわゆる腐れ縁、約15年の関係です。文さんが優しい夫をパートナーに選びながらも、どうしても純さんと別れられない理由は、いくつかあることがわかりました。まず純さんが、女性からは非常にモテるタイプのイケメンだということ。その上甘え上手で情熱的、そして女性好き。また恋愛経験が少なく、純さんと今の夫以外とは長続きしなかった文さんにとり、純さんがほぼ初めての相手で、かつ今までの性体験のほとんどを占めていること。その上、夫は純さんとは真逆のタイプで、文さんとの間に濃厚なスキンシップはほとんどありません。何度も離れてはよりを戻したことで、「もう、彼とは離れられない」という依存や執着、無力感が文さんの中にあるようです。とは言え、純さんと2年前に授かり婚をしてすぐ流産してしまった妻との間には、先々月、お子さんが産まれているのですが……。

「純とは別れたくないです。最後に別れていた時、本当に辛くて、毎日泣いてました。もうあんな思いはしたくない。純も最近は、何があっても私とは別れないと言ってくれてます。奥さんの妊娠を知ったときは正直ショックでしたが、奥さんの体調が良くなくて、だから私といつも以上に会いたがったし求めてくれました。『子供がいなかったら、このまま文ちゃんと暮らすのに』とも。」

それは人生を賭ける恋なのか

妊娠中の妻が体調不良の時に、せっせと不倫相手と……。と言いたい言葉は飲み込んで、文さんにお互いの離婚と純さんとの再婚を望んでいるのか尋ねてみたところ、意外にも返事はイエスではなかったのです。

「お互い家庭を大事にして、このままずっと上手くやっていければと…思ってます」

その言葉の裏には、不安、不信、保身、そして揺れる想いが見え隠れします。純さんはかねてから女癖が悪く、未だ文さん以外にも女性の影が絶えずちらついているのです。考えてみれば、思春期男子の勢いとは言え、文さんとの関係スタートも純さんの身勝手で強引な性欲が動機。そんなにガツガツと強引に口説いた割に、他の男性から奪い返してでも文さんと結婚して彼女を幸せにする意志も持ち合わせていません。そして、一夫多妻制を肯定する発言も、純さんの口からは何度も出ていました。

ですがある日、純さんは事故を起こし、大怪我をしたばかりか、多額のお金が必要になります。純さんの若い妻はパニックで泣くばかり。それを見た文さんの中に生まれた感情は……「彼に相応しいのは私」「私なら彼を助けられる」。彼の周りの他の女性に差をつけるチャンス。夫への罪悪感はあるけれど、マイホーム資金、不妊治療費用、子供が産まれた後の資金として貯めているこの定期預金と株式から出せば……よくない? そう考えた文さんですが、どうしても最後の決断ができないでいます。

純さんとの甘い未来を思い描き、しかし彼をそこまで信用し切って人生を賭けていいのか逡巡し、夫への罪悪感と女としての多幸感の狭間で悩む文さん。この道ならぬ恋は、赤い糸で結ばれた運命なのか。それとも幻を愛しているのか。答えが出せない文さんを見た探偵は、誰かに、できることなら恋愛のプロに、話を聞いてもらいたいと心の底から思ったのでした。