「上司Aさんが、人の話をまったく聞きません」
「例えば、Aさんの立てた企画をブラッシュアップすることが目的の会議。当然、みんなが自分の意見を伝えるのですが、意見を途中で遮ります。そこから感情的な口調で自分の考えの正しさばかりを主張するのです」
「正直、うんざりです……」
話を聞かない人の心理メカニズム
自分が「こう」と思ったことに対して、他人の話に聞く耳を持たない。こういうタイプの上司とのコミュニケーションはストレスが溜まりますし、モチベーションが下がりますよね。
なぜ、他人の意見を聞こうとしない人はいるのでしょうか? 考えられる理由は「自己肯定感が低く、自分に対する自信がない」という可能性です。
自分に自信がないと、自分を守る「心の自己防衛反応」が起きます。
このエピソードのように「自分の企画に対して他者が意見を言う」という場面では、自分に対する自信がないがゆえ、「他者の意見=自分への否定」と捉え、本人は強い恐怖心を感じます。
その感情から逃げるために「相手の意見を感情的に遮る」という行動で自分を守ろうとするのです。会議の目的は「みんなで企画をバージョンアップし、良いものにする」です。 しかし、「自己肯定感が低く、自分に対する自信がない」人にとっての会議の参加スタンスは、自己保身。
「他人の意見をどう排除して、自分を守り、その時間を終わらせるか」が(無意識の)ゴールになっているケースが多くなります。つまり他人に意見をしてほしくないわけです。
因みに、「心の自己防衛反応」が強い人は、日常から、2つの傾向が見られます。
「こうあるのが当然」という発言が多い
自信がないがゆえ、自分を守るために、「××というのは、こうあるのが「常識」」「○○は、こうある『べき』」「■■に関しては、こうするのが『当たり前』」といった「自分の意見を絶対視する発言」が多く、他人の意見を排除しようとします。
表情の変化が薄い
他者に自分の自信のなさを悟られないようにするため、威圧的な空気を出す場合があります。顔の表情が硬い、相槌やうなずきといったリアクションが薄く、ぶすっとしていて、「何を考えているのかわからない」といったように見られる傾向があります。
しんどいですよね。このようなタイプの上司にどう対応したらよいのでしょうか? まず前提として、自分自身に強いストレスがかかりますから、「この人は、こういう人だ」と割り切ることが必要です。
話を聞かない上司のトリセツ
その上で、「あなたのことを尊重している」ということを、ちょっとした工夫で伝えると効果的です。ポイントは3点。
1.言葉を一旦、受け止める
バックトラッキングといいますが、上司が発言したことを一度、繰り返してみましょう。 例えば、上司が「○○の分野のマーケットが大きい」といったときに「なるほど。○○ですか」といった形です。これを繰り返すと、「自分の意見を否定せずに受け止めてくれる人だから安心だ」という認識を作れます。
2.良いところを見つけ、一旦、肯定した上で、許可をとって意見する
先の会議であれば、「この企画。○○という点が、私は、すごく良いと思いました。一点だけ、感じたことがあるのですが、よろしいでしょうか?」といった形です。このような流れであれば、「「良い点」をみてくれる人だから安心だ」という認識を作れます。
3.日頃、「あなただから」という相談をする。
「Aさんだから、本音で相談させていただきたいのですが……」といったように、「あなただから」というメッセージを入れると、「自己肯定感を高めてくれる存在」だという認識を作れます。
このように、相手に「この人は安心だ」「この人は自己肯定感を高めてくれる」という認識を与えると、生産性のあるコミュニケーションを取りやすくなるのです。