「ともかく◎◎さん(上司)が、鬱陶しいんです」
このようなお悩みを、非常によく伺います。こうした場合、上司自身の「寂しさ」という感情に要因がある可能性が考えられます。
慈愛願望欲求といいますが、人間には誰しも「自分の存在を他者に認めてほしい」という本能があります。(そして、認められたと感じる状態を「充足」と呼びます。)
これはものすごく強い欲求です。
上司を取り巻く環境を考える
考えてみましょう。その上司の職場での立ち位置は、次のような状況にないでしょうか。
・部内のメンバーからもあまり信頼されておらず、好かれていない
・仕事ができるとはいえず、会社からも評価されているとはいえない
・役職をはずれ、重要な仕事をしているとはいえない
・周りがどう接していいかわからず、腫れ物に触るような感じになっている
もし当てはまっているようであれば、(たとえ表面的にはそれを見せなかったとしても)、心では強烈な「寂しさ」を感じている可能性が考えられます。
この感情が強烈にある場合、「自分自身の他者から認められたいという気持ち(=慈愛願望欲求)を充足させる」ため、若手メンバーに対して、無意識に、以下3パターンいずれかの行動を取る可能性があります。
1:「気遣いという大義名分」を装った「自分が感謝されたいがゆえの度を越えたお節介」
例:女性社員が、産休に入るため、上司(男性)に、妊娠したことを伝えると「あなたのことを自分の娘だと思っているから」と言い、毎日、体調について、デリケートなこともお構いなしに、突っ込んだ質問等をし、すべてを把握しようとしてくる。
2:「相手の成長を願った教育という大義名分」を装った「自分がすごいと思われたいがゆえの指導」
例:「あなたにきちんと成長してほしいから」という理由で、こちらの忙しい時間などを無視して、日々、重箱の隅をつつくレベルで、細かいところを指摘してくる。その指導を、どんな状況でも最優先にしないとキレる。
3:「規律の大切さを教えるという大義名分」を装った「自分のいうことを何でもきく人がいるのだから、自分には存在価値があるんだと感じたいがゆえのマウンティング」
例:「組織では規律が大切だ」という理由で、「上長」のいうことには、どんなことにも「ハイ」とすぐに答え、最優先で動くのが当たり前だという指導スタイルを取る。
いかがでしょう? 思い当たる節はないでしょうか?
まず理解すべきは、1~3すべて「あなたの成長」に目が向いていないというところ。つまり、教育でも育成でもありません。
目が向いている先は自分自身。言葉は悪いですが、「自分の寂しさ」を埋めるための手段として(本人は自覚せずとも)あなたを捉えています。
では、どう対処したらよいのでしょうか?
時には自分の身を守ることを優先すべき
難しいのは、先にお伝えしたように、「寂しさ」という感情は強烈なパワーをもっている点です。あなたがたとえ伝え方を工夫して、何かを伝えたところで、解決にはつながらないケースが殆どです。
また誠実に向き合いすぎると、「この人は自分を癒やす手段として使える」という依存が生まれ、エスカレートすることが考えられます。
だからこそ、ドライに聞こえるかもしれませんが、「割り切り」、気にかけないことです。もちろん、上司のあらゆることを受け流すことは、自分の成長にはつながりません。
ただ、すべての上司が、有益な指導をしているとは限りません。受け止めるべきことなのか、受け流すべきことなのか。
大人の対応は必要ですが、上記に当てはまるような場合は、「真摯に受け止めすぎない」ことも時として自分を守る上で大切です。