本連載では、まだFXや先物取引を始めて間もない方や、現在勉強中という方を対象に、毎回、ある1つのテクニカル指標をピックアップし、知識編・実践編の2回に分けてご紹介していきます。知識編では、その指標の概要を解説し、値の求め方や一般的な使用方法をお伝えします。実践編では、システムトレードで活用できるよう、知識編でご紹介したテクニカル指標を用いたシステムトレードのプログラミングに挑戦していきます。
今回は、価格変動の強さを統計学に基づいて判断するテクニカル指標、「ボリンジャーバンド」をご紹介します。
■指標解説
「ボリンジャーバンド(Bollinger Bands)」は、統計指標の一つである標準偏差を用いてボラティリティ(価格変動率)の度合いを測る分析指標です。1980年代後半にジョン・A・ボリンジャー氏により考案された同指標は、単純移動平均とそこから乖離する2本のラインで構成された標準偏差バンドにより、価格変動の強さを視覚化しています。ボラティリティの高い相場局面ではバンド幅が拡大し、逆に保ち合い相場ではバンド幅は狭くなるのが特徴です。なお、標準偏差(σ)は、平均値±1σの範囲内でデータの約68%が集約され、平均値±2σにおいては、約95%が集約されるという正規分布の考えに基づいています。
■ラインの算出方法
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単純移動平均(n日) = 当日を含む直近n日間の終値の総和 ÷ n日間
(※一般的には終値を使用しますが、高値・安値・終値から算出する方法もあります。)
sumSqr = ( n日間の各終値 - 単純移動平均 )^2 の n日間の累計
1標準偏差(1σ) = √ ( sumSqr ÷ n日間 )
2標準偏差(2σ) = √ ( sumSqr ÷ n日間 ) × 2
ボリンジャーバンドのアッパーバンド = 単純移動平均 + 標準偏差
ボリンジャーバンドのローアーバンド = 単純移動平均 - 標準偏差
■売買への使用例
ボリンジャーバンドは、順張りでも逆張りでも両方で使用することが可能です。こちらでは、売買の一つの方法として、逆張り手法をご紹介します。
標準偏差の考え方である、平均値±2σにおいては約95%のデータが集約されるという前提から、バンドの外に価格が抜けてきたとき、価格がそれ以上の範囲外で動くことは5%ほどの確率しかないという仮定に基づいて売買を行います。ただし、逆張りが有効となるのは、トレンドが強く出ておらず、統計学的な正規分布に近い相場状況のときであると言えます。トレンドが強く発生しているときは逆張りが大きな損を招く恐れがあり、これこそボリンジャーバンドの弱点だと言えます。
買いシグナル:価格が-2σラインを下抜いたとき、新規買い。
売りシグナル:価格が+2σラインを上抜いたとき、新規売り。
(※損切り注文:[トレンドが強く出た場合を考慮して設定しましょう])
次回「ボリンジャーバンド 実践編」では、今回ご紹介した指標を用いて、システムトレードのプログラミングに挑戦していきます。
参考書籍・参考URL
- 『テクニカル分析全集』(田中勝博/著:1998年6月)
- ひまわり証券「FXテクニカル指標 活用と応用」
- ひまわり証券「トレードシグナル 基本情報」
-「実践編」へ続く-