いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。

今回は、立川の喫茶店「ルーブル」をご紹介。

  • 立川の喫茶店「ルーブル」

開放感のある昭和レトロなフロア

デイヴィッド・バーンの映画『アメリカン・ユートピア』が気になっていて、そのうち観に行こうと思っていたのです。が、仕事をしていても気になって仕方がなく、どうにもこうにも落ち着かなくて。

そこで「そのうち」ではなく、「すぐに」観に行こうと決めたのですが、都心だと混んでいそうじゃないですか。それに僕は多摩地区愛の強い人間なので、せっかくならと思って立川の映画館を選んだのでした。

で、見る前になにか食べておこうと思ってお店を探していたら、古そうなビルの2階に「珈琲&軽食」の文字を発見。「ルーブル」という店名も、いかにも純喫茶っぽくていい感じです。

  • この大きなビルの2階

立川駅からだと、北口大通りを歩くこと数分進み、緑川通りと交わる「曙橋」交差点を越えた右側。一階には佐川急便の集荷所や食器店が入っている、「菊屋ビル」の2階です。

その食器店が菊屋という名なので、どうやらオーナーのようですね。こんなに大きなビルを持ってるのか。すごいな。

  • レトロでかっこいいエスカレーターを上へ

年季を感じさせるエスカレーターで2階まで上がると、真正面にお目当ての「ルーブル」が。ガラス張りで間口が広く、とても開放的左右に広がった店内にも開放感があります。

  • ロゴマークもさりげなくおしゃれ

お昼休みのピークを過ぎていたこともあり、お客さんは2組だけ。離れた場所から、商談っぽい声が聞こえてきます。

それにしても、ずいぶん広いお店です。各テーブル間にもゆったりとスペースがとられているので、たしかにこれなら安心して商談ができそう。

  • 広々としてゆとりのある店内

入り口正面の窓際席に座ると、大きな窓から外を一望できます。一方、反対側の入口からは、ガッコンガッコンとエスカレーターのモーター音が聞こえてくるので、なんとも不思議な雰囲気です。

  • 窓際の席からの景色はこのとおり

この時間には、制服姿の男性店員さんがふたり。ひとりが厨房に入っていて、もうひとりがフロア担当のようです。礼儀正しい物腰も、正統的な純喫茶という感じで気持ちがいいですね。

というわけで、お水を持ってきてくださったその店員さんにオーダー。

  • ランチメニューは3種類

3種類用意されたランチメニューのなかから「ほうれんそうとサーモンのクリームソース」をチョイスして、飲み物はアイスティーのストレートをお願いしました。

やがて、調理をしているらしい作業音が厨房のほうから聞こえてきます。決してうるさくはないその音が、静かな店内に低い音量で流れるクラシックと混ざり合って、これまたいい雰囲気。

落ち着くなー、ここ。

  • ほうれんそうとサーモンのクリームソース

ほどなく登場したパスタは、きわめて正統派。気をてらったところのない、非常にオーソドックスな印象です。でもクオリティは間違いなく、しっかりおいしい。

見ればメニューには「当店のパスタ麺は原料に最高品質のデュラムセモリナ小麦使用の生パスタです」という表記があります。基本を押さえているわけですね。

  • 生パスタにもこだわりが

なめらかで濃厚なクリームソースも、シャキッとしたほうれんそうの味わいを引き立てている印象。サラダもフレッシュでおいしかったです。

  • アイスティーをストレートで

ところで、食後に驚いたことがあったのです。ちょうどアイスティーを飲み終えた絶妙のタイミングで、店員さんがお茶を持ってきてくれたんですよ。

これ、有名な純喫茶「ルノアール」のスタイルじゃないですか。

  • なんと、お茶も登場

気になって調べてみたら、やはりもとはルノアールだったようです。撤退後、ビルのオーナーが店を引き継いだらしく、店員さんもルノアール時代に働いていた方々が残っているのだとか。

なるほど、なるほど。

だから、ルノアールのホスピタリティが引き継がれているわけね。居心地のよさにも納得できます。

2010年ごろに変わったらしいので思いっきり平成ですが、内装もすべてが昭和のままなのですから、これは昭和グルメスポットと認定してよろしいのではないかと思います。

このあと観た『アメリカン・ユートピア』も最高だったし、とてもいい午後を過ごせました。立川に用事ができたら、また寄ってみることにしよう。

●ルーブル
住所:東京都立川市曙町2-9-1 菊屋ビル2F
営業時間:9:00~20:30
定休日:無休