いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。
今回は、新宿のカレーショップ「モンスナック」をご紹介。
"トロトロ"派も納得の "サラサラ"カレー
日本のカレーって、"トロトロ"か"サラサラ"かで好みが分かれるじゃないですか。
僕に関していえば圧倒的にトロトロ派で、サラサラなカレーにはさほど引かれないんです。もちろん好みの問題ですけれど、スープカレーにもさほど魅力を感じないし。
ただし、どんなことにも例外があるもので、カレーについてもそれは同じ。具体的にいえば、トロトロ派の僕も「モンスナック」のサラサラカレーにだけは納得できてしまうのです。
新宿のどまんなか、紀伊國屋書店本店の地下1階。地下通路からだとB7出口のエスカレーターを上がってすぐですが、紀伊國屋で本を見た帰りに立ち寄るという方も多いのではないでしょうか?
僕も以前はしばしば、そんな利用の仕方をしておりました。
お客さんの出入りは激しく、コの字型のカウンターだけの店内にはいつもお客さんの姿があります。とはいってもほぼ全員が、ササッと食べてササッと帰っていく感じ。
そういうお店なのです。この日、11時の開店間もない時間を狙ったのも、早々に混雑することが予想できていたから。
壁には芸能人などのサイン色紙がズラリと貼られていますが、そんなところからも人気のほどが伺えます。
ところでカレーのバリエーションも豊富なのですが、僕はここではどうしてもカツカレーを頼みたくなってしまうんですよね。
そこで迷うことなく、カツカレーとトッピングのゆで玉子をお願いしました(ちなみに玉子は、「ゆで」か「生」かを選べます)。
でも実際のところ、カツカレーはこの店の一番人気。事実、この日も訪れる人はみんなカツカレーを注文していました。
おっと、それからコーンサラダも忘れずに。無料サービスなんですが、注文しないと出てこないのです。でも、シンプルなこれがとてもおいしいんですよ。シンプルだから、というべきかな。
カレーが出てくるのを待ちながらコーンサラダをいただいていると、奥の厨房からカツを揚げる音が聞こえてきます。そう、ここではオーダーが入ってからカツを揚げるんです。
来客数の多さを考えると、手間のかかることだと思うのですけれど、そういうところに手を抜かないのはさすが。手間を惜しまないからこそ、長く人気を維持できているのかもしれませんね。
さて、ちょうどコーンサラダがなくなったころ、いいタイミングでカツカレーが登場です。
サラサラカレーのなかに沈んでいるのは、厚めの豚肉が3切れほど、そして半分に切られたゆで玉子。けっこうなボリュームのあるご飯の上には、スライスされたカツが並んでいます。
そのルックスに無駄な装飾はなく、いい意味で"当たり前"な感じ。それがいいのです。
カレーをスプーンですくってみれば、当然のことながら安定のサラサラ感。初めて食べた学生時代となんら変わらない、モンスナックらしいカレーです。
辛さは抑えめなのに、辛いもの好きの僕でも充分に納得できる安定の味。ひと口食べるごとに、なんとなくホッとするのです。
なお、揚げたてのカツは非常に熱いので、急いで食べると口のなかを火傷してしまう可能性が。いや実は、なるべく焦らずに食べたつもりなのに、今回もうっかりやらかしてしまいました……。
とはいえ、そんな痛い失敗も満足感につながってしまう、不思議なお店ではあるのです。
●モンスナック
住所:東京都新宿区新宿3-17-7 紀伊國屋ビル地下1階
営業時間:月曜日~土曜日11:00~21:15(L.O.20:45)
日曜日・祝日11:00~21:00(L.O.20:30)
定休日:無休(臨時休業あり)