いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。今回は、西荻窪の喫茶店「COFFEE & SPACE ひまわり」です。
レトロなフォントの看板が目を引くお店へ
西荻窪駅北口を出て、線路と交差する北銀座通りを青梅街道方向へ。以前ご紹介したことのあるカツ丼の名店「坂本屋」を通り過ぎ、少し進むと黄色い日よけのついた喫茶店が見えてきます。
そこが、今回ご紹介する「COFFEE & SPACE ひまわり」。
目を引くような、際立った個性があるわけではないのです。それどころか、たたずまいは地味なので、意識していなければ気づかず通り過ぎてしまいそうになるかもしれません。
でも、「ひまわり」というフォントのレトロ感が印象的で、ずいぶん前から気になっていたんですよね、
で、先日たまたま通りかかったところ、ランチメニューの看板が出ているのを発見。お昼をどこで食べようか迷っていたタイミングでもあったので、入ってみることにしました。
ドアを開けると、すぐ目の前と右側にテーブル席が。カウンター席の向かいの厨房スペースにいらっしゃる2人の女性は、親子のようにも見えます。家族経営なのかな?
いちばん右のテーブル席から眺めた店内は、予想どおり、いたって"普通"です。けれど、そもそもこういうお店に"強烈ななにか"を求めたくはないのです。だから、逆にこれくらいのほうが安心できますね。
ちなみにランチメニューはABCの3種類あり、どれも捨てがたいのでちょっと迷ったのですが、Bのドライカレーピラフにしました。考えてみるとドライカレーって、久しく食べていない気がしたので。なお、飲み物はアイスティーをお願いしました。
店内には(たぶん)モーツァルトのピアノ・コンチェルトが小さな音量で流れており、カウンター席には常連さんらしき女性がひとり。でも人の気配をあまり感じさせず、とても静かな印象があります。
夏のひと時を感じる店内でまったり
先に出てきたサラダを食べていると、次いでドライカレーピラフがお目見え。平たく盛りつけられており、シンプルの極みです。ピーマン、パプリカ、ニンジンは細かく均等に刻まれていますし、もしかしたら冷凍食品かな? (違っていたらごめんなさい)
でも、仮にそうだったとしてもいいのです。なぜって、これはこれで期待していたとおりのドライカレーだから。こういう当たり前な感じもまた、"喫茶店っぽさ"ではないかと思うわけです。
食べてみれば、ほんのりカレーの風味が。とはいえ、決して辛すぎはしません。小学生のころ、休日のお昼などに食べたドライカレーみたいだから、これは懐かしいなぁ。
ゆっくりいただきながらカウンターに目をやると、娘さんらしき女性がアイスティーをいれてくださっている最中でした。作り置きではなく、オーダーに応じてきちんといれてくれるところがうれしいですね。
そして、ドライカレーを食べ終わろうかとしていた絶妙のタイミングで、木製プレートに載せられたアイスティーが運ばれてきました。透明感のあるグラスが、夏の雰囲気を伝えてくれます。
食後はそんなアイスティーを楽しみながら、しばし読書の時間。必要以上に気を使う必要もないし、予想以上に本に集中することができました。
お会計時に尋ねてみたら、もう30年続いているのだそうです。言われてみれば確かに、テーブルや椅子のデザインは、昭和の終わりくらいの雰囲気ですね。そういう意味では「ギリギリ昭和」なのかもしれませんけれど、それもまたアリではないでしょうか?
●COFFEE & SPACE ひまわり
住所:東京都杉並区西荻北3-41-13
営業時間:10:00~22:00
定休日:日曜日