いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。
新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が発令され、店舗営業をするお店が限られているため、しばらくはテイクアウト特集。今回は武蔵境の定食屋さん「にな川」です。
店主の人のよさが窺える定食屋さん
武蔵境駅南口を出たら新宿を背にし、図書館などが入った「武蔵野プレイス」を左に見ながら線路沿いに進むこと数分。国立天文台へと続く天文台通りを渡るとすぐ右に、今回のお目当てである定食屋さん「にな川」が見えてきます。
実はここ、ずーっと気になっていたんです。三鷹に住んでいたころから、おいしいという話をよく耳にしていたもので。しかも調べてみたら、テイクアウトもやっているみたいなんですよ。
Withコロナ生活
出来る事やって行こうかなと
ツイッターに書かれていたメッセージから、店主のやる気と誠意が伝わってくるように感じました。
ちなみに当面はランチ:11:30~14:30、ディナー:17:30~20:00の短縮営業を続けつつ、テイクアウトにも対応するということのよう。
たしかにお昼少し前に伺うと、L字型のカウンターにはすでに3人のお客さんが。どうやら常連さんっぽいですね。とはいえ常連風を吹かしたり、お店の人に話しかけたりするような人はおらず、みんな静かに座っています。
ちなみにお店は、フロア担当のおばあさんと、厨房担当の男性の2人体制。親子でしょうか?
「テイクアウトをお願いしたいんですが」と声をかけると、おばあさんが「こちらでお待ちください」と、テーブル席にテイクアウト用メニューを持ってきてくださいました。
「目玉焼き付き」と書かれたテイクアウトメニューは。AからCまで揃ったセットメニューが気になりますね。迷った末、ハンバーグとからあげが入っているというCセットをお願いしました。
「すみません、15分ぐらいかかっちゃうんですけど」
厨房から声がかかりますが、すでに待っているお客さんが数人いるのですから、まったく問題ありません。
ほどなくもうひとつのテーブル席も埋まり、さすがは人気店という感じ。話し声のしない店内に、米トランプ大統領の横暴を伝えるテレビのニュースが聞こえています。
「お客さん、お待たせしました」
やがて、厨房からふたたび声が。15分と言われましたけれど、そんなにかからなかったんじゃないかな? 感覚的には10分かかったか、かからなかったかというところです。
非常にテキパキと仕事をこなしておられたので、つまりは無駄がないんでしょうね。しかも、非常に真面目な方だということがわかります。
基本的にはずっと真剣な表情で仕事をしておられましたが、「インターネットでご紹介してよろしいですか?」とお聞きしたら、ニコッと笑って「はい、よろしくお願いします」と言ってくださいました。そんなところも含め、好印象。
さてさて、ふたたび電車で帰宅し、いよいよCセットとのご対面です。
手を抜かない"にな川"の味を堪能
キャベツの千切りの上に目玉焼き、その両脇に、肉厚のハンバーグと唐揚げが4個。ご飯は別パッケージで、かなりの大盛りです。それにですね、仕事が非常にていねいなんです。食べてみて、それがとてもよくわかりました。
ハンバーグは、肉の旨味を凝縮したかのような重量感。デミグラスソースもたっぷりと添えられているので、とても食べごたえがあります。
一方の唐揚げは、醤油ベースの味つけ。持ち帰ってもなおカリッとした食感が残っていて、これまたご飯との相性抜群です。
もちろんボリューム満点で、食べ終えるとかなりの満足感。カロリー高そうだけど、たまにはいいかな、と自分を許してしまいたくなる魅力的なセットだったのでした。
なるほどー、これが噂に聞くにな川の味か。テイクアウトでもまったく手を抜いていないことがはっきりとわかるし、評価の高さにも納得できます。
コロナがもう少し落ち着いたら、カウンターにいたおじさんのように、昼飲みしながら舌鼓を打ってみたいところです。
●にな川
住所:東京都武蔵野市境南町3-1-6
営業時間:ランチ:11:30~14:30、ディナー:17:30~20:00(コロナウイルスの影響による短縮営業時間)
定休日:日曜