いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。

今回は、八王子の洋食店「あしたば」をご紹介。

  • 昭和のいいところを令和の世にも「あしたば」(八王子)

八王子の洋食店「あしたば」

賑わう北口とは違い、八王子駅南口には穏やかな空気が流れているように思います。大きな建物は駅に隣接したビックカメラとかJ:COMホール八王子程度だし、「とちの木デッキ」という名がついたペデストリアンデッキを降りれば人の姿もまばらだし。

でも、その正面の「とちの木通り」を少し進むと、魅力的なお店があるのです。左側に見えてくる「とちの木ビル」(とちの木だらけだな)というオレンジ色をした古い建物の一角にある、「あしたば」という名のお店がそれ。

  • とちの木通り沿い

「とちの木にあしたばとは?」という疑問はさておき、外見からしてレトロ感満点。以前から、一度お邪魔してみたいと思っていたのです。

  • レトロな食品サンプルも魅力

  • わかりやすいですね

「ピザ・サラダ・食事 あしたば」と書かれた、ちょっとすすけた頭上の看板もいい感じですねえ。

  • 「あしたば」のフォントが凝ってます

驚くべきことに朝の9時半から開いているようで、伺った11時過ぎの時点ではまだ店頭にモーニングサービスのディスプレイが出ていました。

  • モーニングサービスは

でも11時からはランチメニューが食べられるらしく、ほどなくディスプレイはランチタイム仕様に変更されたのでした。

  • すぐランチメニューに変更

さて、茶色い木枠のガラス扉を開けて入ってみましょう。右側奥にはカウンターがあり、左側に4人がけのテーブルが2卓。

  • 家庭的な店内

よく見てみると、そちらの席のテーブルは昔の喫茶店でよく見かけたゲームテーブルですね。ほら、インベーダーゲームとかができるアレ。

  • あのテーブルは……

高校時代、学校帰りに寄った喫茶店でよくやってたよなー。懐かしいわ。ただし、もうテーブルとしてしか機能していないようで、側面のコントローラー部分はガムテープで塞がれておりました(残念)。

  • 残念ながら使用不可

そちらの2卓にはお客さんがいたため、手前右側のテーブル席へ。

  • テーブルの柄も魅力的

そして、さっそくメニューを開いてみます。

  • ベーシックメニュー

  • こちらはおすすめ

ちなみにメニューブック以外にもモーニングサービス用のメニューがあったのですが、よく見れば「モーニングンサービス」になってますねえ。

  • モーニングンサービス

また、メニューブックのほうは、ページをめくるごとに「支払は現金で」という表示が目につく仕様。

  • くれぐれも支払は現金で

  • コーヒー・紅茶の欄にコーンポタージュが

おそらく過去に、カードで支払おうとしたお客さんとの間でなんらかのバトルが繰り広げられたのでしょう(すみません、推測です)。

メニューのバリエーションは豊富で、どれもがとても魅力的。なので迷って当然ですが、「ハーフ・2品盛り」のなかから「ハンバーグ・ナポリタン(コーヒー付)」をチョイスしてみました。初めてのお店では、オーソドックスなものをいただいてみようということで。

  • そそられる「ハーフ・2点盛り」

ママさんが奥の厨房内のご主人にオーダーを伝え、調理スタート。

カウンター席では常連さんらしき女性がずっと話をしており、ママさんは「うん、そうよね」と共感を示しています。素晴らしいのは、そんなときにも動きを止めず、てきぱきと働き続けていること。もちろん他のお客さんへの配慮も万全で、しかも物腰柔らか。万全のホスピタリティです。

ひと足先にみそ汁とチーズ、タバスコが運ばれてきて、

  • 最初に到着

少しあとに大皿に盛りつけられた「ハンバーグ・ナポリタン」が登場。

  • ハンバーグ・ナポリタン

大きめのハンバーグにはたっぷりデミグラスソースがかかっており、すぐ隣のナポリタンもボリューム満点。

  • デミグラスソースがたっぷり

  • ナポリタンの炒め具合も絶妙

つけ合わせのサラダもたっぷりとした量があるし、ライスの量も申し分ないし、なかなか食べごたえがありそうです。

  • もちろんサラダだってフレッシュ

  • ごはんが進みます

ナイフを入れてみると、明らかに手作りのハンバーグは柔らかく、肉がみっしり詰まっています。デミグラスソースの味もバランスがとれており、まさに「昭和のハンバーグ」といった趣。これはライスに合うやつだぞ。

  • 手づくり感が魅力的

そして、しっかり炒められたナポリタンもまた、どこか懐かしい昭和な味わい。どちらかといえばミートソース派の僕も、「ナポリタンって、こんなにおいしかったっけ?」と感心してしまうほどでした。

  • まさに昭和のナポリタン

もちろん、だしをしっかり効かせたみそ汁もまた絶品でございましたよ。

先ほど触れたゲームテーブルのみならず、テーブルや椅子のデザインもレトロ。

  • 光が差し込んで爽やか

くまのプーさんをはじめとするぬいぐるみ類が飾られていたり、本棚には「ゴルゴ13」が並んでいたりと、いろいろな意味で昭和感満点。

  • グッズがいろいろ

  • 赤電話の横にあるのはなに?

かなりの年月を経てこられたお店だと思われますが、お客さんの視点に立った万全のホスピタリティ、そして料理のクオリティの高さが評価されてきたからこそ、令和の世にも支持を得ているのでしょう。

その証拠に、食後のコーヒーをいただいている間にも、お客さんが次々と入ってきたのでした。

  • 締めはコーヒーで

●あしたば
住所: 東京都八王子市子安町4-26-6
営業時間: 9:30~18:30
定休日: 火曜