いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。
今回は、武蔵小金井のカレー屋さん「カレーの店 プーさん」をご紹介。
武蔵小金井のカレー屋さん「カレーの店 プーさん」
武蔵小金井駅南口から、駅を背にして小金井街道を5分ほど進むと、連雀通りと交差する「前原坂上」交差点にぶつかります。以前ご紹介したことのある「コーヒー & パブ KEN」は、右に見えるセブンイレブン脇の質屋坂通りを入ったところ。
でも今回はそちらに曲がらず、もう少しだけ直進してみましょう。するとすぐ右側に、周囲に並ぶお店とはいささか雰囲気の異なる、ベージュ色のレンガで覆われた建物が現れます。
民家のように見えなくもないし、そもそも看板らしきものも見当たりません。でも右側の大きな窓には営業日を示すカレンダーが貼られており、左側にあるガラスの入ったドア脇には、イーゼルに乗せられたメニュー表も。
ってなわけで、中央線沿線の有名店でもある「カレーの店 プーさん」は、少なくとも外見的にはなにかとわかりにくいのです。
それでも行列ができるほど人気があるのは、当然のことながらカレーが魅力的だから。他店にはない個性が備わっているので、並んで待つ理由も充分に理解できるわけさ。
とはいえ個人的には、どんな店であれ行列したりするのは苦手なんですよ。そこでこの日は、開店の11時より15分ほど前に到着。幸いにもまだ誰もいなかったので、一番目の客として開店時刻まで並んで待ったのでした(なんだよ、結局は待ってんじゃん)。
2人ほどが後ろに並んでほどなく、11時ちょうどに開店。ドアを開けてくれた女性から、「お好きな席へどうぞ」と声がかかります。
店内はドアを中心にして左右にカウンター席が並んでいて、正面奥に厨房。
右側にはテーブル席も2卓。
左のカウンターの、いちばん手前の席を選びました。
じつは15年以上前に道路の拡張工事に伴ってリニューアルされた経緯があり、新しい(といってもかなり経つわけだけど)店舗になってからは初めてお邪魔したんですよ。だから、ちょっと新鮮な印象。
コロナ対策だと思われますが、カウンター席はそれぞれアクリル板で仕切られており、各席のスペースにも余裕が。そのため、しっかりとプライベートが保たれています。これはこれで落ち着けますね。
メニューを手にすると、そこには「多種類の野菜、果物をソースのベースに20種類近い香辛料(漢方薬と共通するものも多い)を使用し、油を使わずに仕上げたカレーです。鰹節、昆布、椎茸などを使用して旨みを得て、塩分量を抑えています」と書かれております。
つまりはそれこそが、上記の「他店にはない個性」。
なお、数あるバリエーションのなかかからは、ぜひとも「野菜カレー」をチョイスしたいところ。僕の知る限り、これがもっともプーさんらしいカレーだからです。
それとライスの量は「レギュラー」「プチ(少なめ)」「大盛」の3種があるのですが、レギュラーでもかなりの量があるので注意が必要。
今回は「野菜カレー」の「プチ」で、辛さは5段階のなかから「辛」にあたる4をチョイスしました。
この日は平日でしたが、待っている間にもどんどんお客さんが入ってきます。テイクアウトもできるので、オーダーしてから「あとで来ます」と一度出て行った方も。専門性の高い人気店ではあるけれど、地元にしっかり根づいていることがわかります。
さてさて、やがて登場した野菜カレーに話を戻しましょう。やはり、見るからに圧倒的。
なにしろレンコン、小松菜、オクラ、パプリカ、トマト、茄子、こんにゃく、ズッキーニ、グリンピース、パセリ、カリフラワー、しめじ、舞茸、ししとう、うずらの卵など(見落としもあるかも)、野菜がカレーの上にごっちゃりと乗っているのです。
素揚げされたそれらは素材の味がしっかり生きているので、「こっちはどんな感じかな?」と、食べ進めるほど楽しさが持続するような感じ。
そして、予想どおりライスはプチでもかなりの量。
横から見てみても、山のようにこんもりと盛り上がっております。
大盛だったらどうなるんだろう? 恐ろしや。
カレーに関しても「非常に辛い」というイメージが記憶に残っていたので4を選んだのですけれど、スッキリまとまっているせいか、思っていたほど辛くはなかったかな。
これなら、5の「極辛」でもイケるかもしれない。次回は、ぜひ挑戦してみよう。
食後も辛さで苦しむようなことはなく、サービスのマンゴーラッシーを飲んだらスッキリ爽やか。
快適な気分で、武蔵小金井駅までの帰り道を歩くことができたのでした。
●カレーの店 プーさん
住所: 東京都小金井市前原町3-40-27
営業時間: 11:00~22:00(L.O. 21:00)
定休日: 火曜