いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。
今回は、東京の喫茶店「アロマ珈琲」をご紹介。
-
東京エキチカの昭和なオアシス「アロマ珈琲」(東京)
サイフォンで淹れたコーヒーが味わえる、穴場の喫茶店
東京駅の八重洲中央改札口を出たら、そのままヤエチカ(八重洲地下街)を5分ほど直進。京橋方面に近づくにつれて行き交う人の数が少しずつ減ってきたころ、ユニクロのちょっと先の右側にちょっと懐かしい感じがする外観のお店が現れます。
-
ヤエチカの奥のほう
それが今回のお目当てである「アロマ珈琲 八重洲店」。西荻窪にも豆の販売に特化した「杉並営業所」がありますが、こちらは基本的にはコーヒーショップ(もちろん豆も販売しています)。
イマドキのカフェとは違って、サイフォンで淹れた味わい深いコーヒーを味わえる稀有なスポットなのです。しかも人の多いエキチカとは思えないほど、昭和の雰囲気を残した心地よい空間なのです。
-
この階段を降りていくと……
どれだけ素敵なお店であるかは、店内に足を踏み入れて見ればすぐにわかるはず。広々とした店内は昔のままのレトロな雰囲気で、そこにいるだけで疲れがとれてしまうほどに落ち着いているのです。
-
広々とした昭和空間
ちなみにかなり昔のことですが、ここでプリンを食べたことがあるんですよ。それがとてもおいしかった記憶が残っていたので、たまたま東京駅に立ち寄ったこの日も、「せっかくだから、アロマでコーヒーとプリンを」と意気込んで足を運んだのでした。
ところが、奥の席についてメニューをチェックしてみても、プリンが見当たらないんですねえ。
-
「ゲイシャ」も気になる
-
豊富なバリエーション
-
ケーキセットもございます
そこで店員さんに尋ねてみたところ、「すみません、本日は売り切れてしまいました」とのこと。
そうかー、考えてみれば16時すぎだしなー。残念!
しかし、売り切れたんなら仕方がない。そもそもここはコーヒーショップなのですから、定番の「アロマブレンド」をじっくりと味わうことにしましょう。そして、このお店ならではの雰囲気を楽しみましょう。
ってなわけで、読みかけの本をバッグから取り出したのでした。
なお、このお店は自家焙煎の豆を使っていることでも有名で、しかも抽出にはサイフォンを使用。ブラジルをベースに6種類の豆をミックスしたというアロマブレンドも、当然ながらここでしかいただけない安定の味です。
-
アロマブレンド
ほどよい苦味がありつつもクセは少なく、やっぱりおいしい。飲み慣れたスペシャルティコーヒーやサードウェーブコーヒーも魅力的ではありますけれど、それらとはまた違った、普遍的な魅力を感じることができます。
-
シンプルなカップ＆ソーサーにも昭和感
ところで話は変わりますが、ここのお店にはもうひとつ楽しみがあるんですよ。それは、BGMに70年代のロックやポップスがかかっていること。つまり、それがまた70年代っぽい店内の雰囲気と絶妙にマッチしているわけです。
この日もドゥービー・ブラザーズの"What a Fool Believes"とか、アンブロージアの"Biggest Part of Me"とかニコレット・ラーソンの"Lotta Love"とか、あのころに青春時代を送った人ならうれしくなってくるような曲が次々とかかるのです。
しかもこのときはタイミング的にお客さんの数も少なめだったので、ゆったりとその雰囲気を楽しむことができたのでした。いつも感じることだけど、ここって本当に"穴場中の穴場"だなー。
-
奥はこんなに広々と
-
ゆったりとした時間を楽しめます
そして、ページをめくりながらコーヒーをいただいていたら、カップが空になったころを見計らって、サイフォンを手にした店員さんが近づいて来られるんですよ。絶妙のタイミング。
そして、さりげなく声をかけてくれるのです。「コーヒーのおかわりはいかがですか?」って。
こういう細やかな配慮って、間違いなく過去数十年にわたる営業によって培われたものですよね。しかも押しつけがましさのようなものはまったくないから、とても気持ちがいい。
じつは声をかけてもらう直前に「そろそろ帰ろうかな」と思っていたのですが、思わず「じゃあ、お願いします」と答え、2杯目のコーヒーをいただくことにしたのでした。
-
おかわりのコーヒー
たまにしか寄らないお店ではありますし、この日に至っては数年ぶりだったのですけれど、しかし今回も、コーヒーの価格以上の満足感を得ることができたのでした。
次はもっと早い時間を狙って、ひさしぶりにプリンをオーダーしてみよう。
-
壁の色味もいい感じ
●アロマ珈琲
住所: 東京都中央区八重洲2-1 八重洲地下街中4号
営業時間: 月～金7:00～21:30、土7:00～21:00、日・祝日7:30～21:00
定休日: 年中無休(元日を除く)
