いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。
今回は、国分寺の食堂「だるまや」をご紹介。
「え、うそ……こんなにデカかったっけ……?」
国分寺駅の北口に出たら、すぐ右側に見える「富士そば」脇の「大学通り」へ。線路と並行する形で数分進むと左側に、今回お目当てのお店が見えてきます。
赤い日除けが目印。その上には白地に「めし処 だるまや」書かれた看板があり、入り口にも赤く「定食」と書かれた白くパリッとしたのれんがかかっているので、見つけたくなくとも見つかってしまうシステム。ちなみに以前ご紹介したことのある「淡淡」は、この道をさらに奥へ進んだ突き当たりです。
その「淡淡」も懐かしかったのですけれど、こちらも自動的に青春時代の記憶と直結してしまうのです。国分寺に行ったときたまに立ち寄っていたのがいつごろだったのか、記憶は定かではないのですけれど、僕のなかでは国分寺のイメージといえば「淡淡」「だるまや」「フジランチ」って感じなんですよねー。
すべてガッツリ系かよって感じですが、まー20代くらいだったわけだし。
店内はテーブル席のみですが、大きなテーブルがたくさん並んでいるので、かなりの人数が入れます。当たり前だけど、数十年前にお邪魔したときよりもさらに年季が入っており、いい感じに煤けた壁や天井が昭和そのもの。懐かしいなあ。
でも、このご時世ということで、全卓に大きめのアクリル製パーテーションが並んでいる光景はなかなか壮観でもあります。万全の感染対策には敬服しますが、なんだかすごい雰囲気になっており。
なお伺ったとき、いちばん奥の厨房には調理担当のおかあさんがふたり。店内は、大学生っぽいアルバイト男子が担当していました。で、その男子がお水を持ってきてくれたタイミングでオーダーを。
「カツカレーで」
バリエーション豊富なメニューはどれも魅力的なんですけど、迷わずカツカレーにしたことには理由があるのです。単純な話で、数十年前に食べておいしかったことを覚えているから。なにしろひさしぶりなんだから、当時の記憶をたぐり寄せたいじゃないですか。しかも待っていたら、奥からジュワ〜ッとカツを上げる音が聞こえてくるわけですよ。そりゃもう、期待も高まりますさ。
でもね。
「お待たせしました」と男子くんが持ってきてくれたカツカレーを見たとき、思わず絶句してしまったのです。
「え、うそ……こんなにデカかったっけ……?」
いや、前述したとおり、どのメニューも全体的にボリュームがあることは知っていたのです。でも長い歳月を経た結果、記憶はずいぶんぼやけてしまっていたようです。少なく見積もっても記憶の1.5倍くらい、一般的な大盛りと比較してもさらに多めという感じだったので。
一瞬、「食べ切れるだろうか?」という思いがよぎったものの、まーこういうときは、なんだかんだいいながら食べられちゃったりするものですよね(強気でいくしかないんだけど)。
しかし、眺めれば眺めるほど美しいビジュアルです。カレーのとろみと、カラッと揚がったカツの対比が完璧。向こう側に添えられた、いかにも着色料たっぷりといった福神漬けもいいですね。
なんというかもう、「健康にいいとか、カロリーがどうとか、そういうことは考えるのをやめにしようよ」と強く主張したくなるような感じ。そりゃー“ヘルシー”とは対極にあるタイプかもしれませんけど、そういうものって、ときどき無性に食べたくなったりもするじゃないですか。
豚肉、ネギ、シメジ、ニンジンなどがたっぷり入ったカレーは、典型的な日本のカレー。辛すぎず、甘くもなく、中辛といった感じかな。はっきりとした味なので、かなりの量が盛られたご飯もどんどん進んでしまいます。
そして、大ぶりのカツですよ。揚げたばかりで衣がカリカリで、しかも予想以上にアツアツ。豚肉も厚く、非常に食べごたえがあります。いや違う。食べごたえが「ありすぎます」。
近辺のハラペコ大学生にとって、このボリュームはうれしいだろうなあ。なにしろ食べたい盛りだもんね。と思っていたら、あとから入ってきた大学生は静かに「さば味噌煮定食」を食べていたりしたので、「若者とおじさんと、食べるべきものが逆では?」などと自己ツッコミをしてしまったりもしたのでした(いーじゃんよ)。
●だるまや
住所:東京都国分寺市本町2-9-8
営業時間:11:00?21:30L.O.
定休日:木曜