いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。

今回は、中野の洋食店「六曜舎」をご紹介。

  • ボリューム満点のレトロな洋食屋さん「六曜舎」(中野)

買い物をするため妻と中野に出かけ、用事を終えたのがお昼すぎ。なにか食べて帰ろうということになったとき、パッと頭に浮かんだのが六曜舎でした。

南口、中野通り沿いの三菱UFJ信託銀行角の「レンガ坂」を進んですぐ左側。「六曜舎」の文字が彫られた、味わい深い木の看板が目印です。お店は、その脇の狭い階段を上った2階。

  • 階段からすでにいい感じ

漆喰の壁が年季を感じさせる階段からして、すでにレトロな雰囲気です。が、ランプや古時計、絵画などが飾られた店内もまた昭和そのもの。僕の知る限り、もう何十年も前から営業を続けているお店です。

  • 壁にはモディリアーニの複製画も

でも考えてみると、ずいぶんご無沙汰していた気がします。最後にお世話になったのは、近くにある出版社に入り浸っていたころのことかな? だとしたら、おそらく5年ぶりくらいだな。

階段を上がってすぐ右のドアを開くと、お店は左右に広がっています。左奥が厨房で、そちら側に4人がけのテーブルと椅子が4席ほど。入り口手前右と、その向かいに2人がけの席がひとつずつ。そして右の窓際にも4人がけの席が2つ。

  • 文句なしにいい雰囲気

つまり細長い店内には、それなりの収容人数があるのです。なのに、いつ伺っても席が埋まっている印象があるのも事実。この日も、ランチタイムのピークを過ぎているにもかかわらず2人がけの席しか空いていませんでした。

窓際の席では、近くで働いていると思われる男女のサラリーマンのグループが楽しそうに食事をしています。みんな、このお店の魅力を知っているんでしょうね。そう、ここは単にレトロでかわいいだけでなく、料理がボリューム満点でとてもおいしいのです。だからお客さんが集まってくるわけです。

ちなみにご夫婦で切り盛りされており、奥様がホール担当、ご主人が厨房担当です。

しかしメニューを開いてみれば、やっぱり魅力的なメニューばかりだなー。だから、いつ来ても目移りしちゃうんですよ。とはいえ根が幼いものだから、いつも結局はハンバーグなどを頼むことになったってたんですけどね。そこで今回は毛色を変えて、「コロッケ盛り合わせ」にしてみました。妻はナポリタンをチョイス。

  • 窓側の席も落ち着けそう

それにしても、さすがは人気店です。先ほどのサラリーマングループが帰って空いた席も、すぐにまた埋まってしまったし。2人がけ席は狭いのでできれば移動したかったけど、これはあきらめるしかないですね。入れただけラッキーだと割り切ろう。

まずは妻が頼んだナポリタンが運ばれてきたのですが、相変わらず盛りがいいなー。しかもこれ、骨つきのチキンまで添えられてるんですよねー。「そうそう、そうだったよねー!」ってな感じで、以前に驚かされた記憶が一気に蘇ってきました。

  • いかにも正統派のナポリタン

とはいえ、続いて登場したコロッケ盛り合わせを目にしたら、そちらにも驚かされることになっちゃったんですけどね。なぜって当然のことながら、ボリューム満点すぎるから。

  • コロッケ盛り合わせ

ラインナップはコロッケが2個、目玉焼き、ハムのソテー、スパゲティのソテー、トマト、きゅうり、レタスなどがふんだんに入ったサラダ、それに加えてポテトサラダ。皿からあふれんばかりの状態だし、もちろん別皿のライスまでついているのです。

  • コロッケもホクホク

うれしいんだけど、食べ切れるかなあ……などと弱音を吐いてはみたものの、ひとつひとつの料理がどれもしっかりおいしいからどんどん食べられちゃうわけですよ。コロッケはホクホクだし、そこに半熟の目玉焼きを絡めるとまたたまらない味わいになるし、脇役のはずのスパゲティやポテトサラダの手作り感も魅力的だし……ってことで、ふと気がつけばナイフとフォークを離せない状態になっていたのでした。

いやー、これは大満足。味はもちろん奥様の元気っぷりまで、すべてが昔からまったく変わっていない。だから、そこにいるだけでうれしくなってくるような感じです。

  • 食後にはアイスティーを

妻も気に入ってくれたようなので、誘ってよかった。食後のアイスティーをいただきながら、満足感に浸ることができたのでした。

●六曜舎
住所:東京都中野区中野3-34-23 2F
営業時間:11:45〜22:00(L.O.21:30)
定休日:不定休