サラリーマンは、社内・社外を問わず、時には食事のマナーを意識して、相手に気を使いながら食事する機会もあります。
そのとき、基本的なマナーや立ち居振る舞いを理解していると、周囲より好感を得たり、楽しい時間を共有したりすることができます。
今回は中国料理を食べる際のマナーを解説します。
オフィシャルな場で食べる中国料理を「中華」と呼ばない
中国料理といえば、みんなで円卓を囲み、円卓の上の回転テーブルにずらっと並んだ大皿の料理をみんなで楽しく頂くのが醍醐味です。日本でおなじみの中国料理も、「中華」とするとラーメンや焼き餃子といった日本向けにアレンジされて広まった料理を指す言葉になっています。
正式な本来の中国料理を食べに行くときは、中華とは言わず、きちんと「中国料理」もしくは「四川料理」など地方の料理名で言った方が正式な中国料理の印象を与えます。
四大中国料理の名前
中国料理といっても広域にわたるため、淡白で小麦を使った料理の多い北京料理、甘くて魚介の豊富な上海料理、辛さで有名な四川料理、素材の旨味を生かし、「飲茶」の発祥地としても有名な広東料理。このように4つに分けて覚えます。
日本の中華街は広東料理が中心ですが、私たちの口にする中国料理は日本人向けにアレンジされたものも多く、本場の料理を食べて「知っている味と違う」と感じることもあります。
日本での一般的なコース料理は、「前菜(オードブル)」→「スープ(フカヒレなど)」→「主菜(魚、肉、野菜などの料理が3~4皿)」→「主食(麺類や炒飯など)」→「点心(春巻き、小籠包、水餃子など)」→「デザート(杏仁豆腐、ゴマ団子など)」の流れが基本です。
回転テーブルの料理を全員分取り分けない
回転テーブルは、もともと円卓の上に並べられた大皿の料理を、長い箸を使って取り分けていたゲストの不便さを感じた日本人の発案者が、円卓の上に回転テーブルを載せることで、ゲストが座ったままスムーズに料理を取り分けられると考えたものです。
それが日本から中国全土に広まりました。本来の趣旨からすると、円卓を囲む全員分を下座の者が取り分ける必要はありません。取り分けても左右両隣の方までにしましょう。
取り皿を持ち上げて食べない
日本料理は、基本的に手のひらより小さな器はすべて手に持って食べてもよいとされていますが、中国料理では、器は食卓においたままで食べるのがマナーです。
そのため器から口まで、汁をこぼさずに運ぶ役を果たすのが、ちりれんげです。つい器を持って、ちりれんげで食べてしまいそうになりますが、器はおいたままで食べるようにします。
持ち上げてよいのは、お茶碗とちりれんげです。取り皿は持ち上げて食べるのはNGです。
麺類を食べるときも、ちりれんげで麺の下をちりれんげで受けて、汁がこぼれないようにしながら、口へ運ぶとスマートです。
回転テーブルを左に回さない
回転テーブルの料理は、上座の人から取りはじめ、時計回りに順番に左側の人へ料理をまわしていきます。回転テーブルを回すときは、他の人が取り分けていないかを確認し、順番が回ってきたら、左側の人へ「お先に」とひと声をかけると丁寧です。
順番が回ってきているのに、いつまで料理を取らないのは、次の人を待たせてしまうのでNGです。
回転テーブルを勢いよく回さない
回転テーブルを周囲に注意を払わず勢いよく回すとたいへん危険です。回転テーブルからはみ出した大皿や取り箸、サーバーが、周囲のビール瓶やグラスに当たり倒すことがあるからです。
はみ出していないかを確認し、グラスやボトルを倒さないように注意しながら、ゆっくり回転させます。はみ出していれば、ひと声かければみんなが協力してくれます。
大皿のサーバーを不安定な場所に置かない
料理の取り分けに使うサーバー用のスプーンとフォークは、しっかり大皿から落ちないように置きます。回転テーブルを回転させるため、置き方が悪いと大皿からはみ出していたり、大皿の料理の中にズレ落ちたり、回転テーブルから落下したり、不安定になりやすいので注意し、次の人が使いやすいようにしましょう。
回転テーブルにビール瓶を載せない
回転テーブルに載るのは、料理と調味料、お茶の急須、新しい取り皿など、みんなで共有するものだけです。倒れやすいビール瓶などのボトルは載せません。
また、使い終わった皿やグラスを回転テーブルの上に載せるのは大変失礼にあたります。
食べきれない分量を取らない
料理が人数分数えることができない料理を取り分けるときは、それぞれが均等になるように取り分けないといけません。目安はサーバーで取り皿にひとつかみです。自分が必ず食べきれる分量だけを取りましょう。
全員が料理を取り分けた後であれば、おかわりをしてもかまいません。また、席を立って料理を取るのはNGですから、必ず座って料理を取るように。
同じ取り皿を使わない
料理が出るときに新しい取り皿が一緒に運ばれてくるので取り替えましょう。同じ皿を使い続けて味が混ざってしまうようなことがないようにこまめに替えた方がよいでしょう。
北京ダックを手に持って食べない
北京ダックは、パリパリに焼いたアヒルの皮をネギやキュウリ、甜麺醤(テンメンジャン)と一緒に薄餅に包んで食べる料理です。
箸を使っても、手で食べても問題はありませんが、上品に食べるのなら箸を使いましょう。
お皿に敷いた薄餅にダック(アヒル)の皮を下に向けて載せ、そこに甜麺醤をたっぷり塗り、その上に具材のネギやキュウリなどを載せます。一度のたくさんの具材を載せないのがコツです。
つぎに薄餅を箸でつまみ、下から上に折ります。そして左端からクルクルと巻いて出来上がりです。お好みに合わせて、えびせんべいと一緒に頂きます。
エビの殻をそのまま口から取り出さない
中国式フィンガーボールには、油分を落とすためにプーアル茶などの中国茶が入れられています。殻付きのエビは旨みの詰まっている殻ごと食べますが、口の中の殻が気になるときは、口元を隠して殻を取り出します。
殻をむいて食べるときは、手を使ってもかまいません。汚れた指先は片方ずつフィンガーボールですすぎます。
小籠包を箸で直接つかまない
蒸籠から直接、箸でつかんで自分の皿に移そうとすると、皮が破れて肉汁がこぼれてしまいます。左手にちりれんげを持ち、箸でそっとちりれんげの上に載せます。
そして、箸で皮のふちに穴を開け、ちりれんげの上で肉汁を出し、肉汁を味わいます。そのあと、お好みで刻み生姜入りの酢醤油をつけ、ちりれんげの上の小籠包を頂きます。
ふたを取って中国茶を飲まない
ふた付きの茶碗の中には茶葉が入っているので、日本茶のようにふたを取って飲むと、茶葉が口に入ってきます。
手で受け皿ごと持ち、右手でふたを少しずらして、その隙間から飲みます。お茶のおかわりは、ふたをひっくり返すか、ずらして載せておけば、お店の人がおかわりを持ってきてくれます。もちろんお店のスタッフに直接頼んでもかまいません。
中国茶はウーロン茶やジャスミン茶、鉄観音をはじめ種類も豊富。レストランによってはさらに色々なお茶を揃えている所もあります。飲み方も一緒にお店に人に聞くのも楽しみにしてみてはいかがでしょうか。
紹興酒を割って飲まない
紹興酒は醸造酒と言いましたが、「かめ」に入れて貯蔵し、上質のものは8年以上貯蔵されます。長く貯蔵されたものほど風味もよくなるため老酒といわれます。
貯蔵年数が少ないと酸味が強いので氷砂糖を使うこともありますが、高級な老酒ならストレートで飲むのが正式な飲み方です。
瓶入の紹興酒をレストランでいただく機会があれば、是非、ストレートで試してみましょう。
著者プロフィール
渡邊忠司
エブリワーク代表取締役、全国サービスクリエーター協会相談役などを務める。皇室をはじめ国内外VIPへの接客の実績を活かしホテリエの養成と就職斡旋が評価され、平成26年に厚生労働大臣賞を受賞。ベストセラーとなった「食べ方とマナーのコツ」(監修/学研)や「接客の基本とコツ」(学研)などがある。