サラリーマンは、社内・社外を問わず、時には食事のマナーを意識して、相手に気を使いながら食事する機会もあります。

そんなときに、基本的なマナーや作法にしたがった立ち居振る舞いを知っていることで、周囲より好感を得たり、楽しい時間を共有したりすることができます。

  • 和食を食べるときのマナーを理解していますか?

今回は和食を食べる際のマナーを解説します。

箸を正しく使う

和食は、一品目の料理から最後のご飯が出されるまで、すべて同じ箸で食べますから、箸づかいが美しく出来ているかどうかで、社会的教養を判断されたり、箸づかい以外のことまで連想されたりします。

毎日使う箸だからこそ、正しい持ち方や扱い方を知らないと恥ずかしい思いをすることになるので注意しましょう。

持ち方のポイント

下の箸は固定して動かさないのがコツ。 

  • 箸を正しく使えていますか?

1.薬指の第一関節から爪のつけねの間にのせる。
2.親指と人差し指の付け根で挟み、親指で固定して動かないようにします。

上の箸はペンを持つようにするのがコツ。

1.中指の第一関節と爪の付け根の間にのせる。
2.人差し指の付け根の乗せ、親指で固定し、人差し指をそっと添えて、三本の指ではさみます。
3.箸で動かすのは上だけ、下は固定して動きません。
※筆を持つように指を伸ばして持ってはいけません。

箸を左手で取らない

正しい箸づかいを習ったことがないと、つい左手で箸を取り、右手に持ち替えて、料理を食べようとしますが、それは間違いです。正しくは右手から動作が始まるのです。

右手で箸の真ん中か少し上を取り上げ、すぐに左手で支え、右手を返して下から正しく箸を持ちます。箸をおくときは、その逆の順番にすればよいのです。

箸づかいの美しい人はそれだけで上品な印象を周囲に与えますから、ビジネスでも役立ちますね。是非、流れるような箸づかいを身につけてください。

1.右手の親指と人差し指、中指の三本の指で箸の真ん中か少し上側をつかみ、取り上げます。
2.左手の人差し指と中指あたりで、すぐに箸の真ん中からやや左側にそっと乗せ、箸を左手で支えます。
3.右手を返して、下から箸を正しく持ち替えます。
4.左手を離して出来上がりです。

右手は利き手、左手は利き手と反対の手のことを指していますので、左利きの人は逆さにしてご理解ください。

箸を汚す食べ方をしない

箸先は可能な限り先だけを使い、汚さないようにして食べるのが美しい所作といわれていますから、一口で入る量を口に運べばよいのです。

一度にたくさん食べようとすると、箸も口元も汚れますし、料理をこぼすかもしれません。結果として周囲へ不快感な思いをさせてしまいますね。

箸をひっくり返して使わない

盛り合わせの料理を取るときに、自分の箸を逆さに返して使う人がしますが、食事が終わるまで、両端の汚れた箸を使うことになり、見苦しいものです。絶対しないことをおすすめします。

そのようなときは、取り分け用の箸をもらいましょう。

箸を持ったまま、器を持たない

箸を持ったまま、小皿以外のお茶碗などを片手で持つのは無作法です。器はまず、右手で取り上げ、次に左手で底を支え、丁寧に両手で持ち上げます。

そして左手でしっかり持ちます。箸を持ったままではそれができません。

箸はそのあと、右手で取り上げ、器を持っている左手の小指と薬指で支え、右手を返して下から正しく箸を持ち直します。

箸を箸置きに戻すときも、その逆の順番にすればよいのです。器を大切に両手で扱おうとする姿は、とても上品な人という印象を与えます。

常日頃からこのことをマスターすれば、ワンランク上の美しい所作の持ち主と判断してもらえるでしょう。

嫌い箸をしない

箸づかいの中には、同席する人に不快感や無作法な印象を与えるものがあり、「嫌い箸」といわれています。

普段、うっかりしてしまいそうな嫌い箸を挙げましたので、大切な場面でそのようなことがないように参考にしてください。

探り箸:汁物などを器の中でかき混ぜて中身を探る
刺し箸:料理に箸を突き刺して食べる
指し箸:食事中に箸を持った手で人や物を指差す
ねぶり箸:箸についたご飯などを口でなめて取る
箸渡し:自分の箸から別の箸に、直接料理を渡す
迷い箸:どの料理にするかと箸を持ったまま迷う
寄せ箸:箸を使って器を自分の方に引き寄せる

割り箸を縦にして割らない

割り箸を割るときは、手が食器にぶつからないように膝の上あたりで箸を横にして扇を開くようにしてゆっくり割ります。

粗っぽく箸を縦にして食器の前で割るのは上品ではありません。

割った後に箸をこすり合わせて木クズを取るのもNG。気になるときは手で取りましょう。箸袋は箸置き代わりに使ってもよいし、箸置きがあれば、邪魔にならない左側や折敷の下におきます。

箸を割ったら、すぐ料理! ではなく、一度、箸置きに戻して、周囲へ「いただきます」と挨拶をする心のゆとりがあればステキですね。

食事が終わったら、箸袋の中に使った箸先を入れて見えないようにし、使用済みとわかるように箸袋を少し折ります。これは店側への気づかいのマナーです。

器を置いたまま食べない

和食は器を手に持って食べます。どんな大きさの器も持つわけではありませんが、大まかな基準は手のひらの大きさです。

  • 和食は器を手に持って食べる

小皿や小鉢、お椀は持ち上げて食べます。手のひらよりも大きな器は持ち上げませんが、ご飯の入ったお重や丼は左手で持って食べます。

器を置いたまま顔を近づけて食べるのは犬食いといってNGです。料理は大皿から小皿に移して、小皿は手に持って食べましょう。

手のひらサイズの器は手に持って食べるのが和食の基本ですが、刺身、焼き魚、天ぷらなどが盛られている平皿は置いたままにします。

また、こぼれないように手皿で食べるのはマナー違反です。小皿がなければ、もらいましましょう。

食べ終わって食器を重ねない

和食器はどれも繊細なものが多く、しかし、陶磁器の糸底はざらついているので、皿を重ねると下の皿に小さな傷がつくことがあります。

大皿の上に使い終わった小皿を重ねる人がいますが、それもよくありません。

特に塗椀は繊細ですから、汁を飲み終えたら、ふたは元通りに椀に戻します。ふたの塗りが傷つくので、ふたをひっくり返すのはNGです。

ふたを外したら、右側におかれている椀なら右側に、左側におかれているなら左側にふたの内を上に向けておきます。いくつもふたを重ねるのもNGです。

盛り付けを崩して刺身を食べない

刺身は盛り付けを崩さないように左手前から箸をつけます。また、お刺身が数種類盛り合わせてあるときは、味が淡白な白身から黄色の貝類、脂の乗った赤身の順で食べると味を存分に楽しむことができます。

  • 刺身は盛り付けを崩さず食べる

これは、天ぷらも同じで、淡白なものから食べます。薬味に添えてある花穂紫蘇や蓼(たで)は好みで醤油皿に入れます。そして、すりおろし山葵(わさび)は醤油皿に入れてかき混ぜず、刺身の中央に少量のせ、折り畳むようにして反対側に少量の醤油をつけましょう。

山葵の風味が楽しめ、刺身の味を引き立てます。また、お刺身を大葉で包んだり、途中でツマを食べたりすることはマナー違反ではありませんので。一緒に食べてみましょう。

身をひっくり返して魚料理を食べない

頭のついた姿焼きでも切り身でも魚料理は、左側の腹から食べるのが鉄則です。まずは胸びれや背びれなどをはずし、胸びれの下あたりから中骨に沿って箸を入れていきます。

上の身を食べ終えたら、身をひっくり返すのはNG。頭と中骨を外して、皿の向こう側に寄せた後、下の身も同じように左から一口大に箸を入れます。

また、食べ終わった後に残る皮や骨などは器の奥で一カ所にまとめ、敷いてある大葉やすだちの皮、または懐紙で覆って見苦しくないように整えます。食べた後をきれいにするのがマナーです。

著者プロフィール

渡邊忠司

エブリワーク代表取締役、全国サービスクリエーター協会相談役などを務める。皇室をはじめ国内外VIPへの接客の実績を活かしホテリエの養成と就職斡旋が評価され、平成26年に厚生労働大臣賞を受賞。ベストセラーとなった「食べ方とマナーのコツ」(監修/学研)や「接客の基本とコツ」(学研)などがある。