梅雨も明けて真っ盛り。夏の風物詩といえば、夜空を彩る「花火」でしょう。美しい花火を写真に収めたい前から思っていたのですが、難しそうな気がして1度も挑戦したことはありませんでした。しかし花火撮影は、極めようとすると奥が深いものですが、基本的な撮影だけなら誰でも大丈夫とのこと。そこで今回は、初めて花火撮影に挑戦したレポートを届けたいと思います。

周りの夜景を入れて撮影。しかし余計な提灯まで入ってしまった

花火撮影に必要な機材と設定

まず、調べてわかった花火撮影の基本から。当たり前ですが、花火は夜に打ち上げられ、花火が開くタイミングは見ていないとわかりません。そのため、花火撮影の露出はマニュアルモードのバルブ撮影が基本です。絞りはF8~13を目安に設定して、花火のタイミングに合わせてシャッターを開けて長めに露光。撮影後に画像を確認して、シャッタースピードや絞り値で露出を修正していきます。ホワイトバランスは「オート」が基本で、見た目の色と違うなら「晴天」にしてみます。ピントはマニュアルフォーカスに設定して、レンズの目盛は∞(無限遠)に固定。撮影中は、テープでピントリングを固定しておくと、目盛のズレ防止になるそうです。また撮像感度は最低感度に設定し、ノイズリダクションはオフ。長時間露光でノイズリダクションをオンにすると処理時間が長くかかるので、次の花火を逃してしまうからです。

機材は、ブレを防ぐために三脚とレリーズケーブルが必須になります。遠隔操作用のリモコンもありますが、花火の開くタイミングとわずかなタイムラグがあるので、直接的な操作ができるレリーズケーブルがいいようです。それと暗い中での撮影のため、レンズやメディア交換がしづらいので、レンズは交換しなくても大丈夫な高倍率ズーム、メディアは大容量のものを用意したほうがいいでしょう。そのほかに、花火を観覧するときと同じように、レジャーシートや懐中電灯、虫除けスプレーなどもあると便利です。

以上、花火撮影の基本を頭に詰めこんで、いざ花火会場へ向かいました!

花火撮影では三脚とレリーズケーブルは必須

通常の花火撮影のようにレジャーシート、虫除け、懐中電灯があると便利。多重露光用の黒い厚紙を用意したが、出番はなかった

場所の確保が成功の第一歩

今回は、都内で今期最初の大きな花火大会となる「第42回葛飾納涼花火大会」へ行ってきました。打ち上げ会場は金町浄水場のすぐ目の前ですが、私にとっては土地勘のない初めて訪れる場所。早めに場所を取ろうと2時間以上前には会場に着いたのですが、どこに場所を確保したらいいのかよくわかりません。どんな撮影でもいえるのですが、特に花火は場所の確保が撮影の善し悪しに関わります。会場を歩いて撮影場所を探していると、土手のいちばん上に三脚を立てている人がいたので、どのような絵が撮れるか教えてもらいました。

その方が言われるには、レンガ造りの取水塔と組み合わせて花火が撮影できる場所を選んだそうです。「打ち上げ場所の近くまで寄ってしまうと、花火以外の風景を入れるのが難しくなるし、人も多くなるからね」とのこと。また、土手のような場所のほうが後ろから見る人の迷惑にならず、人で遮られることもないそうです。確かに、純粋に花火を楽しみに来た人にとっては、目の前に三脚を立てたカメラマンがいたら迷惑でしょう。

私もその方の隣に撮影場所を確保。土手の芝の上に三脚を設置したのですが、足場が悪く風も強かったので、持っていった三脚(1万円程度で購入)ではちょっと不安定。もう少ししっかりした三脚のほうがいいように感じました。回りの撮影機材を見ると、三脚の安定性を良くするためのストーンバッグ(重り)を付けている方も。風の強いなかではこれは便利そう。それとアウトドア用の小さなイスがあると便利とのこと。確かにレジャーシートに座るより、イスを使ったほうが目線がカメラの高さに近くなるので撮影が楽になります。

場所を確保するために早めに会場へ行ったのですが、1人で来たので買い出しやトイレなどに行くとき、設置した機材の盗難が心配です。しかし今回は、声をかけた方がとても親切で、場所を離れるときは荷物番をしてあげるよと言っていただき、それに甘えることにしました。しかし、いつも親切な人が周りにいるとは限りません。1人で撮影を行く場合には、そのあたりも考えておく必要がありそうです。

撮影ポイントの場所は、映画「男はつらいよ」にもでてくる取水塔ごしに、花火を見ることができる

打ち上げ開始40分前の、打ち上げ会場目の前。身動きができないほどの人が押し寄せていた

今回使用したソニーのα350とDT 18-250mm F3.5-6.3。高倍率ズームはレンズ交換の必要がないなど、花火撮影に最適

誤作動を防ぐため、手ブレ補正機構はオフに。足場の悪い場所では、しっかりした三脚を用意したい

想像以上にライブビューが便利

今回の撮影に使用した機材は、ライブビュー機能を搭載したソニーの「α350」と「DT 18-250mm F3.5-6.3」。普段、ライブビュー機能をあまり使用しないのですが、花火撮影では構図を決めるときにとても役に立ちました。通常のファインダーでの撮影も試してみたのですが、打ち上げの合間の暗いなかで構図を決めるのはかなり大変。ライブビューの便利さを痛感しました。ただ、ライブビューは見やすいといっても、構図については隅々まで気を使わなければ意味がありません。撮影後に画像を確認したら、余計な提灯が入っている画像がたくさんありました。ライブビューを過信して、隅々まで構図を確認しなかったことを反省。

花火が上がる高さや位置は、打ち上げられる花火の種類によって若干違ってきます。花火をアップに撮影しようとするには、あらかじめ予測してレリーズしなければいけません。画面いっぱいに花開く花火はとても迫力があります。しかしそれには慣れが必要で、初めのうちは位置がずれたり、端が切れてしまったりします。

いちばん難しかったのは、花火が開いているタイミングに合わせてシャッターを開けることでした。花火は1発づつでなく、次から次へと打ち上げられます。長く開けすぎていると、次の花火がフレームに入っておかしな形になったり、露出オーバーで花火が真っ白になってしまうこともありました。逆にシャッターが短いと「花」の形がきれいに出ないとか、失敗ばかりです。

それで、本当はフレームいっぱいに広がる花火を撮りたかったのですが、とりあえず広い構図にして、花火に合わせてシャッターを切る練習を始めました。小さくても花火の形がきれいに写ると、とても嬉しいものです。あれこれ悩んでいるうちに花火大会は終わってしまったのですが、次は画面いっぱいの花火にチャレンジしたいです。

さて、初めて花火を撮影してみて感じたのは、上手に撮影するポイントは、まずなんといっても場所取り。それと慣れだと思いました。花火撮影を調べていると、シャッターを開けている間にズームリングを動かす「露光間ズーム」や、レンズの前を黒い紙で塞いでカメラの位置をずらし、画面の空いた部分に花火を写し込む「多重露光」などの技術も紹介されていました。それで黒い紙なども用意していったのですが、とてもそれどころじゃありません。花火の形をきれいに出すだけでいっぱいいっぱい(笑)。下の写真は偶然撮れたものばかりですが、それでも成功した写真を見つけると嬉しいもの。次は偶然であなく、狙いどおりに撮れるようになりたいです。

夏の花火大会はまだまだ開催されます。花火は季節が限られた被写体で、しかも打ち上げ時間が決まっています。その限られた時間の中でいかにきれいに撮影できるかが、花火撮影の魅力のようにも感じました。みなさんも期間限定の花火撮影を、この夏に挑戦してみてはいかがでしょう?

花火撮影の失敗例

花火が構図から切れてしまった。最初のうちは、フレームに入れるのだけでも一苦労

煙が邪魔で、露出がオーバーになってしまった。フレームに余計な提灯も写り込んでいる

提灯など、余計なものがたくさん写り込んだ。橋などの背景をバランスよく入れるのはありだけど……

花火が開くタイミングがずれた。タイミングをつかむには慣れるしかないと思う

今回の撮影の中で成功と思われる例

被写体をもう少し大きく入れたかったが、背景が黒く締まり、花火の色、形ともにきれいに撮れた
シャッタースピード:1秒 / 絞り:F11 / 焦点距離:75mm(112mm相当) / WB:オート / ISO 100

取水塔の橋を組み合わせて撮影。風景と組み合わせることで、ワンパターンになりがちな構図から脱却できる
シャッタースピード:2秒 / 絞り:F11 / 焦点距離:35mm(52mm相当) / WB:晴天、ISO 100

今回、一番大きく撮影できた花火。黒の締まりなど、改善の余地はまだありそう
シャッタースピード:1秒 / 絞り:F8 / 焦点距離:80mm(120mm相当) / WB:晴天、ISO 100

露光間ズームで遊んでみた。絞りや回す速度を変えると、いろいろ形が変わっておもしろい
シャッタースピード:5秒 / 絞り:F11 / 焦点距離:ズーム / WB:晴天、ISO 100

撮影・レポート : 加藤真貴子 (WINDY Co.)