ふだんデジタルカメラで写真を楽しんでいるなら、オークションなどに出品するときに写真にもこだわりたくなるもの。しかし、印象的な写真や美しいシーンを切り取る一般的な撮影と、明確な目的を持った「商品撮影」とはまた違います。ここではオークション向けの撮影方法の基本を考えてみましょう。
まずは商品をクリーニング
オークションの目的は商品を売買することです。出品する側から見れば、少しでも高い値段で商品を買ってほしいと思います。買う側からすれば、汚い商品には入札したくないものです。まず撮影をする前に、オークションに出す商品のクリーニングしましょう。特に光沢のある部分についた指紋や、細かいほこりのつぶは、肉眼では気にならなくても写真に撮ると意外と見えてしまうもの。めがね拭きやクリーニングクロスなどを使って商品を掃除します。
ホコリはブロワーなどを使用して吹き飛ばしますが、それでも落ちない場合には、クリーニング用のブラシなどがあると便利です。ブラシは専用のものでなくても、大きめの絵筆や、100円ショップなどで販売されているメイク用のブラシなどを利用してもいいでしょう。またメッキされたパーツや光沢のある部分は指紋がつきやすいので、クロスなどで念入りに拭いておきましょう。
ボンベタイプとポンプタイプのブロア。威力はボンベタイプのほうが強力だが、ガスが液晶のまま出てしまうことがあるので注意 |
商品撮影にはブラシとクリーニングクロスは必需品。HCLロゴが入っているものは、写真のプロラボとして有名な堀内カラー(http://www.horiuchi-color.co.jp/index2/index2.html)のレンズ清掃用キットに含まれているもの |
仕舞っていたカメラを取り出して撮影。レンズやピントリングなどに白いホコリが大量に付着しているのがわかる |
ボンベタイプのブロアーで吹いて清掃したもの。ずいぶんホコリが少なくなった |
クロスを使い、レンズの汚れなどを拭き取る。ここまでやれば大丈夫だろう |
商品を見せるのがオークション写真の基本
デジタル一眼レフが普及し、オークションの商品写真にもデジタル一眼レフで撮影したものが増えています。デジタル一眼レフの魅力のひとつに、ピントの合う範囲を狭くしたボケがありますが、こと商品撮影では、ボケは商品を見にくくする要素でしかありません。一眼レフで撮影するなら、絞りを絞って被写界深度を深くし、商品の手前から奥まできっちりピントが合っているように撮影したいところです。
室内などで撮影する場合、よく使われる「P」(プログラムAE)モードやオートモードでは、できるだけシャッター速度を上げるために、絞りは開放か、それに近い状態になります。意図的に絞りを開けなくても、勝手に絞りが開いてしまうのです。
だいたい商品撮影の場合、絞り優先AE(もしくはマニュアル)にして、絞りをF11かF16あたりまで絞り込んで撮影します。逆に、あまり絞り込むと「回折現象」と呼ばれる光の回り込みが発生し、像がゆるくなってしまいます。レンズやカメラによって異なりますが、一般的なデジタル一眼レフなら、早いものはF16あたりから、F22ではほとんどで回折が発生するようです。一度絞りを変えて比較撮影し、自分の機材の特性をつかんでおきましょう。
絞りを絞り込むことによって当然シャッター速度は遅く(長く)なります。三脚を使用し、ぶれないように撮影してください。またレリーズのショックによるブレを避けるために、リモートケーブルやリモコンを使用するのがベターです。それらがないのなら、セルフタイマーで撮影するのも有効です。セルフタイマーの待ち時間が長いと時間がムダなので、2~3秒に設定すると快適に撮影できます。また、撮像感度を上げてシャッター速度を稼ぐこともできますが、一般的な室内の照明やスタンド程度では、それほどシャッター速度を上げられないものです。また、感度を上げすぎるとノイズも発生します。素直に三脚を使いましょう。
絞りによる違いをわかりやすくするため、ワイヤレスマウスを焦点距離200mmで撮影。絞りはF5.6。商品の非常に少ないエリアにしかピントが合っていない |
絞りF8。F5.6よりはマシだが、それでも右上部分がボケてしまっている |
絞りF11。ほぼ全てにピントが合っている状態 |
絞りF13。F11よりもさらにくっきりした。これくらいになれば問題ないだろう |
絞りF16。F13との違いはもうほとんどない。全体にピントを合わせられる絞り値は被写体の大きさや、焦点距離によっても変化する |
オークション出品用なら背面なども撮影しておこう |
内蔵フラッシュは使わず電気スタンドで照明
暗い場所での撮影というと、カメラの内蔵ストロボを思いつきます。しかし商品撮影では使わないほうが無難です。商品にイヤな陰が出たり、プラスチックケースなどでは反射したりして、とても安っぽい写真になってしまいます。商品撮影では内蔵フラッシュの使用は避け、外部の照明を利用したいところです。
といっても、高価な外部フラッシュなどは不要です。蛍光灯などの電気スタンドを利用しましょう。2灯あれば商品全体を明るく照らしたり、影を消すなどの応用が効きますが、1灯でもそれなりに撮影できます。また、2灯使用する場合でも白熱球と蛍光灯のように光源の種類が異なるものは避けて、同じタイプにそろえてください。種類の異なる光源を同時に使用すると、ホワイトバランスを合わせきれなくなり、影に色がついてしまいます。
ライトやレフ板を工夫してきれいに撮ろう
商品を撮影する時には、ファインダーを覗きながらライトの位置を変えたり、商品の向きなどを調整し、その商品がきれいに見える場所やアングルを探してください。斜めから狙えば商品の立体感が表現できますし、正面から撮れば全体がわかりやすい写真になります。
スタンドが1灯の場合、影が強くなってしまうことがあります。そういった場合は、鏡やアルミホイル、コピー用紙を段ボールに貼り付けるなどして、レフ板代わりに使うと影を弱めることができます。レフは光源の反対側から影の部分を照らすように配置します。また、スタンドにスーパーなどのビニール袋を1~2枚かぶせると影やテカリ(反射)を弱められることもあります。いろいろ工夫してみるのも商品撮影の楽しみのひとつといえます。
また、背景がごちゃごちゃしていると見栄えが悪く、商品がわかりにくくなってしまいますので、無地のテーブルなどのシンプルな背景の場所で撮影しましょう。ただ、テーブルでは壁などの向こう側が入ってしまうことが良くあります。そういった場合はコピー用紙やカレンダーの裏側をバック紙として使いましょう。シワのないきれいなシーツや布団を広げてその上で撮影してもいいと思います。色は、白やグレーの無彩色のものがベターです。あまり色の強いものは、商品に背景の色が写りこんでしまう場合がありますので注意が必要です。
頻繁に商品撮影をする人なら、市販のミニスタジオを使ってもいいでしょう。これは白い布で囲まれた撮影用のボックスで、小さいものなら2000円程度で購入できます。
撮影した写真のレタッチはほどほどに
撮影後の写真データはフォトレタッチソフトで色を正しく補正したり、うっかり写ってしまったホコリなどをレタッチで消したりします。しかし商品を販売するオークションでは、商品のキズなどを安易に消してはいけません。買い手にきちんと伝えなければいけない情報ですから、キズを消したことでトラブルになる可能性もあります。色も過剰にいじってしまうと、現実とは違う写真になりますので、レタッチはあくまで「補正」にとどめておきましょう。きれいな写真が撮れたらいよいよ写真を掲載して出品です。後は高値で売れるのを待ちましょう。
オークション用に限らず、商品撮影は奥が深く、いろいろ工夫して撮影していると楽しいものです。オークションなどだけでなく、自分で気に入ったものや、新しく購入したものなどを撮影して、ブログなどに掲載したり、携帯電話の待ち受け画面にしてみるといった楽しみ方もあります。商品撮影を通し、カメラの楽しみ方をまたひとつ知っていただければと思います。