流し撮りはシャッタースピードでずいぶん雰囲気が変わります。簡単にいえば、遅い(長い)シャッター速度のほうが背景の流れが大きく、カッコいい写真になります。ただしシャッタースピードが遅いぶん、ブレたりして失敗の確率が高くなります。そんなわけで、いろいろ流し撮りを試してみました。サーキット撮影の第2回目です。
練習なくてし成功無し!
脚立のない私は、最初はコースから近い第1ヘアピンの観客席から流し撮りを始めました。ここならフェンスの上から撮影できるからです。フェンスに極力近づいて金網をぼかして撮影できなくもありませんが、ソフトフォーカスがかかったようなぼやけた画像になったり、オートフォーカスの精度が低くなるようです。
また、フェンスにはところどころ金網が切り取られた場所がありました。たぶんレンズやカメラを突出して撮影するために誰かが切ったのでしょうけど、明らかに器物破損ですね。危険だからフェンスがあるわけで、撮影のためにそれを切り取るのは非常識です。それに、そういった穴からカメラを突き出すのはとてもカッコ悪いと思います。
実際に撮影で、最初に苦労したのはフレームにバイクを入れることでした。被写体のスピードの動きが速いので、シャッターを押したときにはフレームから外れてしまいます。フレーム内に収まったとしても、被写体の動きに合わせてレンズを振ることができず、ブレしまったり、ピンボケ写真になったり、金網が写り込んでしまったり……。初めは失敗写真ばかりで、30~40枚に1枚程度しか成功しませんでした。今日は練習だからいいですけど、特定のライダーを狙ったり、運動会などでチャンスが1回しかない撮影は大変だろうなあ、と思いました。もっと練習して流し撮りの成功率を上げないと……。
あまりに失敗ばかりだったので、シャッタースピードを速くして、とりあえず被写体をフレームに収める練習に切り替えました。背景は流れませんが、このときも素振りのように被写体に合わせてレンズは振り続けました。この時のシャッタースピードは1/500~2000秒。被写体がきちんと収まるようになってから、シャッタースピードをだんだん遅くしていくと少しずつ成功率が上がってきました。
流し撮りで起きやすい失敗例】
ピンボケ。被写体にピントが合う前にシャッターを切ってしまった状態 |
ブレ。被写体をうまく追い切れず、カメラが上下左右に動いてしまった状態 |
フレーム外れ。初めのうちはフレーム内にバイクを収めるだけでも苦労する |
写り込み。手前のフェンスの柱が写り込んでしまった |
シャッタースピードによる効果の違い
シャッタースピード1/800秒で撮影。止まったように見える |
シャッタースピード1/250秒で撮影。流し撮りらしくなったが、ゆっくりに見える |
シャッタースピード1/100秒で撮影。相当いい感じ。スピード感もある |
シャッタースピード1/80秒で撮影。カッコイイ!。撮れたのはほとんど偶然で、今日の私はこの速さが限界でした |
撮れば撮るほど成果が上がる面白さ
だんだん慣れてきて、写真も"流し撮り"らしくなってきました。そうこうしていると、親切な方が「撮影ポイントを何カ所か確保しているから、使用していないときは脚立を使ってもいいよ」と、脚立をお借りできることに。流し撮り初心者が撮りやすいコーナーだと教えていただいた第1コーナーの脚立をお借りして撮影しました。
この日は合計して1250枚ほど撮影したのですが、そのうち198枚がなんとか成功していました。おおざっぱに計算して6.3枚に1枚の成功です。はじめは失敗写真ばかりで流し撮りの面白さがぜんぜんわからなかったのですが、ちょっとカッコイイ写真が撮れはじめると「次はピタっと決めてやる!」と闘志が燃えてくるから不思議です。
予選も含めると、レースは朝8時から4時ごろまで続くのですが、終わり近くでバッテリーがカラになってしまい、最後まで撮影できませんでした。どうやら手ブレ補正をずっと使っていたのがバッテリーの消費を早めてしまったようです。寒さも影響しているかもしれません。普段のスナップ撮影だとD80のバッテリーは余裕で1日もつのですが、流し撮りでは予備のバッテリーが必須だなと思いました。
初めて真面目に流し撮りに挑戦してみたのですが、撮れば撮るほど成功率が上がっていくのでとても面白かったです。サーキット撮影は流し撮り以外に、集団写真やバトル、レースクイーンなどシャッターチャンスがたくさんあります。なにより、サーキットの熱い雰囲気は見ているほうも高揚してきます。この楽しさは現地に行かないと伝わらないと思います。まずはカメラをもってサーキットへ出かけてみてください。
ちなみに撮影した翌日は、腕と肩がパンパンに筋肉痛になってしまいました(笑)。改めてスポーツカメラマンはすごいなあ、と思いました。
撮影・レポート : 加藤真貴子 (WINDY Co.)
協力:筑波サーキット