買い物はギャンブルだった
勝敗は6対4といったところか。
今までの人生で、商品に一目惚れして購入し、それが大正解だったのが6割。そして失敗だったのが4割。私は買い物中に一目惚れしてしまいやすいタチらしく、20代前半の頃は、一目惚れをしては買い、それが失敗に終わるか成功に終わるかは使ってみないと分からない……という実にギャンブラーな買い物の仕方をしてきた。
しかし、やがて私は立派(?)な"捨て変態"(変態的に捨てることが好きな人間)になり、買い物で失敗したいらないものを処分しては反省をする……ということをしまくった結果、少しずつではあるが一目惚れセンサーの精度も上がり、大失敗をすることは少なくなってきた。
ひと目で息をのんだストール
その精度が上がった一目惚れセンサーのおかげで出会えたものの1つが、「仙台光原社」で出会ったインド刺繍のストールである。
お店の壁に掛けられていたこのストールを見たとき、あまりの美しさに、私は思わず息をのんでしまった。優しく輝く麻シルクの生地に、「これ、仕上げるまでにどれくらいの時間がかかったんですか?」と聞いてみたいくらいの細かな刺繍が施されていて、しばらくの間、私はストールの前から動くことができなかった。
お店の人には、ストールとして使うのはもちろん、これを生地として何かを仕立ててもいいし、壁に掛けて美術品として楽しんでもいいとの説明を受けた。なるほど確かに、ただ飾って愛でてもいいなと思うほどの美しさだ。けれど、その美しい生地をストールとして首に巻いて、いろいろな場所を闊歩したらどんなにか楽しいだろう……と想像しただけでワクワクしてしまい、興奮を抑えるのに必死だった。
しかし私は、今までたくさんの買い物で失敗をした女。一目惚れで即座に購入とはいかず(いや、即決できない金額だったのも大きい)、一旦冷静になるために数日間、冷却時間を置いた。が、やはり忘れられるわけもなく、財布を握りしめて再度お店に駆け込んだことは言うまでもないだろう。
一目惚れも悪くない
以来、このストールは春と秋になると、私のワードローブに登場するようになった。買った当初は少しハリがあったけれど、今ではいい感じに柔らかくなってきて、それもまた嬉しい気持ちにさせてくれ、私の一目惚れセンサーも悪くはないなと思わせてくれるのであった。
大好きな山葡萄の籠とも相性抜群 |
著者プロフィール: ゆるりまい
1985年生まれ。仙台市在住。漫画家、イラストレーター。
夫、母、息子の人間4人 +猫4匹ぐらし。
生まれ育った汚家の反動で、現在ものの少ない暮らし街道爆進中。
ものを捨てることが三度の飯より大好きな捨て変態。
そんな日常を描いた『わたしのウチには、なんにもない。』(KADOKAWA)は2016年、夏帆主演で連続ドラマ化された。
現在cakesにて「ゆるりまいにち猫日和」、赤すぐにて「赤すぐみんなの体験記」を連載中。