どんなスポーツにもルールがあり、サーフィンも例外ではありません。そして、他のサーファーと波を共有するサーフポイントで楽しくサーフィンするためには、ルールそのものはもちろんのこと、守るための方法も知っておきましょう。

「ドロップイン」しないために

大前提として、ひとつの波にはひとりしか乗れません(「ワンマン・ワンウェイブ」)。ひとつの波とは、ピークから崩れ始めた波がすべてスープになるまでを指します。そして、波に乗る優先権は、ピークに近い場所から乗っているサーファーにあります。

上のイラストは、同じサーフポイントを上空(上)と浜(下)の二箇所からみたところ。真上から見て、ピークから右方向に崩れていく波がレギュラー(=ライトウェーブ)、左方向がグーフィー(=レフトウェーブ)。陸から見ると、左方向に崩れていくのがライトウェーブ、右方向がレフトウェーブとなる。また、個々のサーファーのスタンスは左足前がレギュラーで右足前がグーフィー。レギュラーの人がレギュラーの波に乗ると、波のほうに体を向けてライディングするフロントサイド、グーフィーの波に乗ると波に背を向けるバックサイドとなる。グーフィーの人は、レギュラーの波がバックサイドでグーフィーの波がフロントサイド

ピークから波に乗っている人がいるのに、後からその波に乗ることを「ドロップイン」「前乗り」などといい、禁止事項です。イラスト上では、AとBの状態が、これにあたります。

ドロップインしないためには、他の人と同じ波にテイクオフしようとする時に、その人と自分の位置関係から、テイクオフしてもよいか否か、とっさに判断しなければなりません。自分がレギュラースタンスで、左にピークがある波に乗ろうとしている時、自分より左側の(ピークに近い)サーファーがテイクオフしようとパドルをしていたら、自分が譲るべき。逆に、自分の左側から崩れてくる波で自分より右にいるサーファーがパドルしてテイクオフしようとしていたら、声を出して自分の存在を知らせ、やめてもらうべきです。

混んでいるポイントでは、左右を良く見てテイクオフすること。そして、近くでパドリングしている人がいたら、声を掛け合ってお互いの意思(グーフィーとレギュラーどちらに行こうとしているのかなど)を確認しあうことが、ルール違反や衝突事故の予防策です。

とはいっても、波に乗りたい一心で周りが見えず、ドロップインしてしまうこともあるでしょう。その場合は、気付いたらすぐプルアウト(沖にむかって波を越えること)しましょう。もしもプルアウトが間に合わず、相手をパーリングさせてしまったら、きっぱりと謝りましょう。「すみません」の一言が言えるかどうかが、その後の気分を大きく左右します。

波待ちで他のサーファーの邪魔にならないために

また、波に乗らなくても、パドルで沖に出ようとしたり(イラストD)、波待ちをしているとき(イラストC)に、ピークから波に乗ってくる人の邪魔をしないようにしなければなりません。

大前提として、波が大きいほどピーク(崩れるポイント)はアウトサイド(沖寄り)に、小さいとインサイド(岸寄り)になります。そして、「ワンマン・ワンウェイブ」と「ドロップインの禁止」というルールがあることから、上手いサーファーはラインアップの一番沖の、最も優先権を得やすいところにいて、セットの波を狙っています。そして、その場所は、一番大きな波のパワーゾーン(つまり、一番危険な場所)にもなりやすく、競争率が高いところでもあります。みんながセットの波を狙っているので、仮に乗り損ねたりしたら、周りからの非難の視線を浴びることになります。つまり、初心者にとって厳しい場所なのです。そのようなわけで、初心者は、自然とピークよりも陸に近い場所で小さめの波を狙いたくなり、インサイド気味で波待ちをしてしまうことが多くなります。

このケースで、セットの波にアウトサイドから乗ってくるサーファーの邪魔をしてしまう危険があるのです。イラストのCの状態です。衝突を避ける必要がある場合は波に乗っている人が優先ですので、他の人たちには、波に乗っているサーファーを避けるという義務があります。そのためには、波が来るタイミングやアウトで波待ちするサーファーの動きを読み、早めにパドリングで移動しましょう。

また、混雑しているポイントのインサイド寄りでは、なかなかテイクオフできません。動きが読めないうちは、空いているほかのピークを探すか、インサイドであってもサーファーがライディングしてこない場所に波待ちのポイントを移した方が無難です。

パドリングアウトで他のサーファーの邪魔にならないために

また、Dのように、ピークのほぼ正面あたりからパドリングアウトしているときは、波に乗ってくるサーファーと十分に安全な距離を保つようにコントロールしましょう。もし、「気付いたときには接近してしまっていた」という状況になったら、サーファーの進行方向とは逆、つまり波が崩れ終わってスープになっている方によけなければなりません。それはつまり、最も避けたいパワーゾーンに突進していかなければならないということです。

そうならないためには、ぜひとも、リップカレント(離岸流 岸まで来た海水が沖のほうに帰ってゆく道筋)を使ってパドリングアウトしましょう。リップカレントがある部分は、チャンネルといってブレイクしているところよりも海底が深くなっているおり、波が立ちません。波に乗ってくるサーファーの邪魔になる心配もなく、沖に出る流れに乗ることで、楽にパドリングアウトができて一石二鳥なのです。