前回、気持ちよく、カッコよく波に乗るには、ピークからテイクオフすることが重要だというお話をしました。サーフィンの第一歩は、パドリングでピークが現れるポイントに向かって漕ぎ出ることです。これを強力にサポートしてくれるのが、自分のレベルに合ったサーフボードです。最初にどんなボードを手に入れるかが、サーフィンを楽しく長く続けられるかどうかに大きく影響してきます。ということで、今回はサーフボード、ウェットスーツと、これらを購入するサーフショップの選び方を伝授します。
ホントに大事! ボードの選び方
まずはサーフボード。始めたばかりだからといって、「とりあえずなんでもいい」とか「初心者だから安くていい」または「始めのうちは中古でいい」というのは、まったくおすすめできません。なぜなら、初心者こそ道具の性能に頼る部分が大きく、ステップアップできるかどうかの重要なポイントだからです。ボードとの相性は、とても大切です。ですから、お友達が「中古ボードをあげるよ。」と言ってくれても、ご親切には感謝しつつ、くれぐれも合わないボードで上達できずに挫折、なんてことにならないよう、御注意を…。
では、さまざまなボードがある中で、初心者にとってどのようなボードが良いのでしょうか? ポイントは「浮力」と、乗る人の「体重・身長・体型」のバランスです。浮力があるボードは安定感があり、初心者が練習しやすい小さな波でも波の力を受けやすいためテイクオフがカンタン。スープ波でも滑れる、というメリットがあります。ボードの種類で言えば、全長が9フィート(2.7m)以上の「ロングボード」は、ノーズが細い「ショートボード」よりも浮力があります。
ボードの浮力を決めるのは、ボード「長さ」「厚さ」「幅」「素材」ですが、浮力を求めて長く、厚く、幅の広いボードを選んだ結果、パドリングやターンがしづらくなっては元も子もありません。ちょうどいいボードは人それぞれ。同じ初心者でも、体格の大きい体重のある人と、小柄で体重の少ない人とでは、使いやすいボードの種類やボリュームは違うのです。一般的に、丸い体型の人は丸いボード、細い人は細いボードというように、体型と似た形のボードと相性がいいようです
さらに、サーフボードは1本1本、「シェイプ」により微妙に異なるアウトラインを持っています。一見同じように見えても、各々のボードは「波をスラッシュする!」 とか、「ノーズライディングする!」 とか、「台風のビックウェィブにチャージする!」 とか、「傾斜のきつい波のクリティカルポイントを攻める!」などのコンセプトにあわせて作られます。どんな波でどんなサーフィンをするのか(またはしたいのか)によって、そのアウトラインに違いが生じるのです。下の写真にあるような、コンセプトを具現化する複数の要素が組み合わさって特徴が決まるのが、サーフボードだと言えます。
ですから、自分に合う1枚を選ぶことは、そんなに簡単ではありません。波乗りの相棒となるマイボードを買う時は、しっかりしたアドバイザーがいるお店で、体格などを見てもらった上で、自分が憧れるサーフィンのイメージをしっかり伝えましょう。どんなサーファーになるか、すべてはあなた次第!! と、言われても何だかよくわからない人は、とりあえず、サーフショップの門をたたいてみてください。
レール
テール
厚みのバランス/ロッカー
フィン
ウェットスーツはカスタムオーダーが基本
日本列島は北太平洋に位置し、沖縄や九州の離島以外のほとんどの地域で、ウエットスーツが必要になります。真冬や春秋の防寒の他、クラゲ避けにも利用できるウエットスーツは、サーフィンを快適に楽しむために必要不可欠。サーフボードやフィンにぶつかったりする怪我の防止にも役立ちます。波の中を泳ぐためのサーフィン用ウエットスーツは、しっかり採寸をして、カスタムオーダーで買い求めるのが基本です。サイズが小さいと窮屈で動きにくく、疲労が早まります。逆に、大きくてゆるいと体とスーツの間に海水が入って動きにくく、保温効果も落ちてしまうのです。サーフボードもウエットスーツも信頼できるお店でしっかりした店員さんによって対面販売されるべきものだといえるでしょう。ウェットスーツのカスタムオーダーには、カラーやロゴの入れ方を好きに選べる楽しさもあります。
関東以南で初夏~秋口に活躍するウェットスーツ
サーフショップはスクールに参加して選ぼう
では、信頼できるお店とはどうやって出会えばいいのでしょうか。サーフショップに行くと、上述したサーフボードやウェットスーツの選び方をアドバイスしてもらえるということのほかに、スクールレッスンを受けられる、自分のボードを買う前に色々なボードをレンタルしながら試せるといったメリットが受けられます。また、そのような目的で通うことでショップの店員との交流が生まれ、ずっと付き合っていきたいお店かどうか、雰囲気を感じとることもできるでしょう。行きつけのサーフショップを持つと、友達ができたり、イベントに参加する機会が得られるなど、サーフィンライフがぐっと楽しくなります。海を遊び場にするためのベースキャンプとして末長いおつき合いができるショップに行き着くことができれば、楽しいサーフィンライフは保証されたようなものです。
素敵なサーフショップに出会うためにはまず、以下の3つの条件のどれかで大まかに絞るところから始めてください。
サーフショップを絞り込む3つの方法
- 自分の家の近所のお店を選ぶ
- 自分が行く(行きたい)海の近くにあるお店を選ぶ
- サーフィンの経験がしっかりある人に紹介してもらう
そして、スクールに参加することをおすすめします。きちんとしたサーフスクールでは、この連載でお伝えしていくような、サーフィンをするために必要な事柄を一回で教えてくれます。もしも、受講者をボードに腹ばいにさせたままパドリングをさせず、スープ波で押して波に乗せてあげる、というようなレッスン内容だったら、そのショップはあまりよくないと言わざるを得ません。「腹ばいの状態で押してもらい、ボードが滑り出したら立つ」ということを覚えただけでボードを購入し、いざ自分ひとりで海に行っても、ピークからのテイクオフやパドリングアウトができないばかりか、他のサーファーに迷惑をかけてしまった上に、そのことに気付きもしない、という悲しいことにもなりかねません。
プロサーファーがいるかどうかもひとつの基準ですが、プロのいるお店でも、レッスン内容に不安を感じることがあるかもしれません。なぜなら、プロと言っても、試合に出て順位を競う「コンペティータ-」としてのプロサーファー、「シェイパー」というボードづくりのプロ、そしてサーフレッスンで皆様のステップアップのお手伝いができる「レッスンプロサーファー」がいるからです。
たとえば、1回スクールレッスンを受けて、その後ボードをレンタルして自主練習をするなど、ショップのサービスを最大限に活用しながら、サーフショップを見極めていきましょう。
素敵な出会いが待っている…かも!? |
著者プロフィール
奥田みゆき(オクダ ミユキ)
サーフィン歴25年。ボディーボードからスタンドアップパドルでのサーフィンまでを多彩にこなす。オクダスタイルサーフィングで15年以上サーフレッスンを行い、初めての受講者のほとんどを自力のパドリングでテイクオフさせることで有名。冬期はスノーボードのレッスンも行っている、天性のインストラクター。初心者でも中級者以上でも確実にレベルアップさせてしまう、そのノウハウは自己流、なればこそオクダスタイル。