ボルベール<帰郷>
10代の頃、火事で母を失ったラインムンダ(ペネロペ・クルス)は15歳の娘パウラ(ヨアンナ・コバ)と失業した夫を支え、生活のためにひとり忙しく働いていた。しかし、この夫はラインムンダの留守中にパウラに肉体関係を迫り、嫌がるパウラは彼を刺してしまう。
主役のペネロペ・クルスは第79回アカデミー賞主演女優賞ノミネート、第59回カンヌ国際映画祭最優秀女優賞受賞しただけでなく、主な5名の女優全員がカンヌ国際映画祭最優秀女優賞を受賞した。監督・脚本はペドロ・アルモドバル(カンヌ国際映画祭最優秀脚本賞受賞)
TOHOシネマズ六本木ヒルズ、有楽座、シネフロント他にて全国ロードショー中
放談メンバー | ||
---|---|---|
はなこ |
マサオ |
ステラ |
主なキャストはペネロペ・クルスを中心とした5人の女性たち。彼女らが激しく思いをぶつけ合うシーンは、思わずいつものクセで壁の裏に隠れたくなるほどの迫力だったよ。
あんた、普段いったいどういう女と付き合ってるの? あれ? ステラは? ?
……チーッ! もう、涙も鼻水も止まらないわよッ。母と娘、祖母と孫娘、そして母になっても女の子は死ぬまで生母の娘…。いいわね、同性の母子って。オカマの場合、それは難しいもの……。
そりゃそうよね。
涙が止まらないのは、それだけじゃないの。ペネロペ・クルス扮するラインムンダの、決して思うようにならない人生を強く生きる姿に感動~。ペネロペ、好きよー!
あらステラ、ペネロペ嫌いじゃなかったの?
それは『バニラ・スカイ』(2001年)の頃の話ヨ。トム様とイチャついてたのが許せなかったのぉ!!
いま思えば、これまでペネロペが出演してきたハリウッド映画で、彼女の演技がつたなく見えたのは英語のせいだな。『ボルベール』ではネイティブのスペイン語を話しているだけあって演技がすごく自然なんだよ。さすが、カンヌ主演女優賞をとるだけのことはある。
都会のマドリッドと生まれ故郷のラ・マンチャ。この2カ所を往復するとき、途中に風車がたくさん出てくるの。その風景の空の青さとモダンな風車のデザインがすごく素敵。
衣装や部屋の内装の色づかいもすごく鮮やかで可愛かったワ!
そういう風景の切り取り方とか小物の使い方も賞賛ものなんだけど、この監督は3世代、5人の女性を通して、女性の持つ強さと儚さをうまく描いているよ。さすが『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年スペイン、アカデミー賞最優秀外国語映画賞)や『トーク・トゥ・ハー』(2002年スペイン、同賞最優秀脚本賞)で、女性を描くことに定評のある名監督。
母、ふたりの娘、孫娘、叔母、隣人と、6人の女それぞれの"笑いと涙と秘密"が盛り込まれていたりね。
長い人生の中で岐路に立ったときに見直してほしい作品だな。たぶん、そのときのタイミングで気持ちが揺れる場面がまったく違うと思うよ。いま君たちは誰に一番共感する?
ラインムンダよ! 思うようにいかない人生をアタシもたくましく生きるわっ!!
わたしは……パス。
どうして?
だって、登場する5人とも、重い運命を背負いすぎなんだもん。わたしにとって映画は、現実と向き合うものじゃなくって、軽く楽しむものなのよ! そんなわたしがお奨めするシーンはダイナミックなペネロペの胸の谷間! 巨乳を真上から見下ろす場面。もうね、すごいよ。生唾ゴクリ。
あんた、女のクセになに発情してんのよっ!!
だって~。ボッ・キュッ・ボンと、あそこまでスタイルいいと妬む気も失せるよ。あのお尻は監督が「このタイプの女性はお尻が大きいものだが、ペネロペは小さすぎる」って、この映画のためにつけさせた"付け尻"なんだって。
そのおかげで、いっそう彼女がたくましく見えたね。特にレストランを切り盛りする姿は色っぽくてドキッとしたよ。
そう! ? じゃ、あたしも今日から早速つけるわっ♪
……。
いや、君はいいよ。でも、女ってずるいよな。本当はすごく強いくせに、その緊張の糸が途切れた途端、メロメロに弱くなる。その繊細さをペネロペは大胆に表現してた。全身で強がった後に、あの大きな瞳いっぱいに涙を溜めて……。もうね、放って置けなくなるんだ。反則。女はズルすぎる。
(イラスト:アサダニッキ)