暑くなると気になってくる汗の臭い。蒸し暑い気候では、少し動いただけで汗が噴き出してくる。気が付いたら汗染みができていたり、ふとした瞬間に臭いが気になったりしたことがある経験がある女性も多いのではないだろうか。

  • 汗の臭い対策何をすればいい?

    汗の臭い対策何をすればいい?

夏を快適に過ごすためには、汗への対策を行いたいところ。そこで、美容皮膚科・美容外科・形成外科のやながわ厚子医師に、効果のある汗への対策について解説してもらった。

 汗には種類がある?

人の汗は汗腺で作られている。汗腺には二種類あり、ほぼ全身に分布されるエクリン汗腺と特定の場所に分布されるアポクリン汗腺がある。

エクリン汗腺は主に温感性発汗といって、暑さや熱の刺激によって全身で発汗し、体温の調節に関与している。辛いものを食べた時になどに顔などから発汗することは未覚性発汗という。緊張した時などに脇や手のひらから発汗することは精神性発汗といい、エクリン汗腺から出る汗は、無色透明で無臭である。

一方のアポクリン汗腺は腋窩(脇の下)、耳の穴の中、鼻の横、乳輪、お臍の周り、外陰部などに多く存在するが、数はエクリン汗腺より少なく、毛穴に開口部がある。二次性徴期に発達し、感動や興奮などの情緒刺激で発汗する。汗自体は無臭だが、エクリン汗腺から出る汗と比較すると、脂質や蛋白(たんぱく)成分が含まれているのが特徴だ。

 汗の臭いの原因は?

汗自体は無臭であるが、なぜ臭うのだろうか。

「汗は皮膚の表面に出ると、皮脂や分泌物、垢と混ざります。そして常在する細菌により分解、酸化されるために、臭いの原因物質が作られます。脇汗が臭うのは、脇はエクリン汗腺とアポクリン汗腺の両方があるからです」

エクリン汗腺とアポクリン汗腺の数や比率には個人差があるとのこと。

 臭い対策は汗をかくこと?

汗が臭わないようにするためにはどのような対策をすればいいのだろうか。やながわ医師に聞いてみると意外な答えが返ってきた。

「運動し発汗と共に老廃物を出しておくことは良いと思います。有酸素運動がおすすめです。毎日20分から30分、汗ばむ程度の速さでのウォーキングをして体を動かすことや、半身浴も良いでしょう。エアコンも体温調節しやすい温度26度か27度にしておきたいですね」

普段あまり汗をかかないと、汗の臭いも強くなる。体の老廃物を出してしまうことで、臭いにくい状態にしておくと良いだろう。

 汗が臭う食べ物とは?

汗が臭いやすくなる原因のひとつに、食べ物が関係している。食べたものによって、汗の臭いも変化していくのだ。特に、香りの強い食べ物や、刺激性の強い食べ物、ニンニク、玉ねぎ、スパイスなどは、汗の臭いも強くなるため、食べる時は気を付けたい。

また、腸内環境が悪いと体臭が強くなり、汗の臭いも気になってくる。動物脂肪のチーズ、ヨーグルトや、トランス脂肪酸が含まれているマーガリンやショートニングなどの摂り過ぎは控えたいところだ。揚げ物や脂っこい食品、肉類も摂り過ぎには要注意。

アルコールの摂り過ぎや、ダイエットで糖質制限をやり過ぎると、ケトン臭というツンとした臭いになる。たばこの吸い過ぎも体臭が強くなるので、控えたほうが良いだろう。

 食べたほうがいいものとは?

汗が臭わないようにするためには、まず健康な体でいることが大切だ。そのためには、バランス良く食べ物を摂取することが重要になってくる。新鮮な野菜や果物など、ビタミンA・C・Eを多く含まれるものや、抗酸化作用のある食品を摂取することを心がけるといいだろう。豆腐や豆乳などの大豆製品、お酢やオリーブオイル、食物繊維が多い野菜や玄米など、腸内環境を整えてくれる食材も意識的に摂取していきたいところだ。

 オフィスでの汗対策

冷房がついた室内でも、じわっと汗をかいたり、臭いが気になったりするもの。オフィスでできる汗対策にはどのようなものがあるのだろうか。

「制汗剤、制汗シートを上手く利用し、朝着替える前に使用することおすすめします。オフィスでは外気温と室温の差を5度以内に設定して、冷風が体に直接当たらないようにすることも対策になります。下着は通気性の良い綿素材を選ぶといいですね。肌に直接触れていないと思っている衣服にも、汗は染み出しています。汗をかいてそのまま同じ衣類を着ることは、雑菌の繁殖が汗の臭いの原因になるので気を付けましょう」

気が付かないうちに汗をかいていることもある。汗をかく前に制汗剤を使うと効果が期待できる。消臭スプレーは、肌に直接当たるとかゆみの原因になることがあるので、様子をみながら使うようにしたい。

 通勤や外出時の汗対策

暑い室外に出ると、汗をかくことは避けられない。外に出る時は、どのような対策が効果的なのだろうか。

「外回りなど外出の際は、暑さ対策としてこまめに日傘をさすようにしましょう。直射日光を避けるだけで、体温の上昇を防げます。最近はミニ扇風機や冷感スプレーもあるので活用しても良いと思います」

体温が上がることで汗が出てくるため、グッズを活用しながら夏を乗り切りたいところ。汗をかいた後には、ちょっとした対処で臭いの対策ができるコツがあるそうだ。

「冷房を良く効かすことはスッキリしやすいですが、臭いの観点からまず汗を拭き取り、制汗シートを上手く利用することをおすすめします。臭いをできるだけ抑えるためには、こまめに汗を濡れたタオルなどで拭き取ることでことが大切です。汗をかき過ぎてしまった場合には、雑菌の繁殖を防ぐために着替えることも良いでしょう」

体温が上がっている時は、水分補給も忘れずにしたい。おすすめの飲み物を聞いてみた。

「東洋医学的には、体を冷やす働きがあるとされている飲み物は、お茶やコーヒーなど。冷たいものの摂り過ぎは良くないですが、体質によっては体の中から熱を冷ますほうが良い方もおられるかもしれません」

気になる汗の臭いを改善するには、汗をかく以前に食事や運動など健康に気を付けることが大切だ。汗をかいた後もこまめに拭き取ることで、臭いを抑えることができる。状況に合わせて対策をするとより効果を感じられるだろう。

取材協力: やながわ厚子(ヤナガワ・アツコ)

美容皮膚科・美容外科・形成外科。En女医会所属。
美容皮膚科クリニック ヤナガワクリニックの院長を務める美容のエキスパート。
美容医療や化粧品に詳しく新しい美肌治療や化粧品や食事やサプリメントも含まれて体の中からも美肌を目指す。インスタグラムなども活用し、積極的に情報を発信している。二児の母でもある。

En女医会とは
En女医会は150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。