人生における30代は、悩み多き年代と言えるのではないだろうか。就職間もない20代に比べ、結婚や出産といったライフステージの変化を経た人が圧倒的に多くなり、年収や貯金額も同世代間で差が付き始める。それに伴い、悩みの種も増えてくるというわけだ。

そこで本特集では、30代の悩みとしてあげられることが多い「結婚」「貯蓄」「健康」「住宅購入」の4テーマに関し、各分野のエキスパートによるアドバイスを紹介する。今回のテーマは「貯蓄」。ファイナンシャルプランナーの續恵美子氏に、お金をすぐに使ってしまう「浪費体質」からお金を貯めやすくする「貯蓄体質」へ変わるためのポイントをうかがった。

  • 貯蓄体質を目指そう

    貯蓄体質を目指そう

30代になって貯金がほとんどない――これってちょっと焦りますよね。30代といえば、これから結婚を考えたり、子どもを欲しいと思ったり、人それぞれに思いは違えど、ライフプランが変わってくる頃。近い将来必要となるお金のためのマネープランの計画が必要になる年代です。

日常必要なお金は問題なくても、有事にまとまったお金が必要になったときに貯蓄ゼロでは困ります。貯蓄ゼロから脱出できるよう、4つのステップを実行してみましょう。

ステップ1:お金の使い道を確認し、収支を把握する

30代で貯金がないということは、今まで稼いだお金を気の向くままに使っていたのかもしれませんね。自分が1カ月の間、「何に」「どれだけ」お金を使っているか知らないという人も多いのではないでしょうか。

貯蓄ゼロから脱出するためのステップ1つめは、「自分が月々使っているお金の状況を把握する」ことです。

きちんと意識しながらお金を使わないと、何にどれだけ使っているのか把握できないものです。お金の使い道を把握していないということは、ムダな使い方をしている可能性は否めません。貯金ができていない一番の原因は、本来なら使わなくていいお金を使っていることですから、今一度、自分のお金の使い方を確認してみましょう。

とはいえ、これまで家計簿の類とは縁がなかった人も多いと思います。取り急ぎ次のものを用意してください。

・レシート(財布やポケット、バッグなどに入っているだけのものでOK)
・預金通帳
・クレジットカードの明細書

これらを見ると財布や口座から出て行っているお金が確認できます。金額はもちろん、コンビニ、スーパーといった店舗の種類、商品内容なども確認を。通帳ではATM手数料を月に何度払っているかチェックしましょう。

お金を使った(引き出した)ときのことを振り返り、なぜこの支出が必要だったのか思い出してみましょう。もしよく思い出せないのなら、必要のない衝動的な買い物だったのかもしれません。このステップでムダ遣いに気づけたら、今後はムダ遣い削減にトライしてみましょう。

ステップ2:貯蓄目的を決める

ダイエットや勉強と同じように、貯金も目標があるほうが実行しやすいものです。貯蓄ゼロから脱出するためのステップ2として、何のため・いつまで・いくらという貯蓄目的を設定してみましょう。

もちろん目的は1つに絞らなくても構いません。30代なら、結婚資金、旅行資金、万が一の緊急資金、etc.とさまざまな目的があるのは普通のことです。それぞれ「いつまでに、いくら」と金額と期間を組み合わせてゴールを設定しましょう。士気も高まりますし、具体的な貯蓄方法も選びやすくなります。

ステップ3:先取り貯蓄を仕組み化する

貯蓄の目的を決めても、これまで自由にお金を使っていた人にとって、いきなり貯蓄に励むのは簡単そうで簡単にできるとは言いにくいものです。貯蓄を成功に導くためには、使えるお金を少なくし、強制的に貯金する方法をとるのがいいでしょう。

貯蓄ゼロから脱出するためのステップ3では、貯蓄ができるシステムとして「先取り貯蓄」の仕組み化に取り組みましょう。

先取り貯蓄はお金が余ったら貯金をするというのではなく、給料を使う前に毎月一定額を貯蓄に回す方法です。給与天引きや自動振替などを利用すると簡単です。会社に財形貯蓄社内預金などの天引き制度がある場合には申し込み、自動的に貯蓄できる仕組みをつくると良いでしょう。天引き制度がない人は、銀行の積立定期預金などでもいいでしょう。

大切なことは、生活口座とは別に、貯蓄用商品に定期的かつ強制的に貯めていく仕組みです。その際、ステップ2で決めた目的に適した貯蓄商品を選ぶとより効果的です。たとえば目的が旅行資金なら、旅行会社などが取り扱っている旅行積立を利用するのもいいですよ。

ステップ4:支出の見直しを実行

先取り貯蓄で使えるお金を減らす分、これからは節約していかなければなりません。最後のステップとして、支出を見直し、節約を実行していきましょう。

ステップ1のところでムダなお金の使い方がわかった人もいると思います。まずはこのムダを削減します。とはいえ、仮にATM手数料を削減できたとしても、せいぜい月当たり数百円から1,000円程度かもしれません。それ以上に節約するためには家計の固定費も見直してみましょう。

毎月一定額が引かれる固定費は、一度見直すと効果がずっと持続するため高い節約効果を期待できるものです。固定費には家賃・光熱費・水道代・プロバイダ契約・生命保険料などがあります。

可能なら、家賃の安いところに引っ越しをしたり、賃貸契約更新時に値下げ交渉してみたりするのもいいでしょう。家賃が無理でも電気契約や生命保険契約を見直す方法もあります。ほかにもスマホのオプションで不必要なものを解約するなど、ムダな支出を削る方法は多々あります。

貯蓄体質になるには無理のしすぎに注意!

今回紹介した4つのステップを実行していくうちに、少しずつ貯金ができていくと思います。お金が貯まっていくのを確認できるのは嬉しいもので、貯蓄への意欲をさらに加熱させる人もいるでしょう。

しかし本当に貯蓄体質になろうと思ったら、無理をしすぎないことも大切です。ダイエットと同じで目標が大事だということは前述しましたが、実はリバウンドも同様です。無理に使えるお金を絞りすぎても、度々貯金を下ろしていては意味がありませんし、過度な節約に疲れて、今まで以上に散財してしまうこともあります。

「いくら貯まったら、いくら使う」というように、小さなご褒美出費を計画しておくのもいいでしょう。節約と出費をうまくコントロールしながら貯蓄体質を目指していってくださいね。

■ 筆者プロフィール: 續恵美子

女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。ファイナンシャルプランナー(CFP)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。