先に紹介した「介護休業給付」は、失業保険制度からの給付でした。同じように家族が介護することへの負担を配慮した制度に、介護保険制度からの給付となる「家族介護慰労金制度」があります。
介護保険制度の中で、地域の特性に即したきめ細やかな支援計画が可能となる地域支援の重要性は、今後ますます増加しています。家族が孤立して介護のために疲弊していくようでは、介護の質も低下するでしょうし、介護する家族自身の生活設計も成り立ちません。
介護保険制度の地域活動として、具体的に家族の支援にはどのようなものが用意されているのでしょうか。詳しくみていきましょう。
家族介護慰労金制度の支給を受けるには、東京都世田谷区を例にすると、下記の要件を満たすことが必要です。支給額は年間10万円となっています。各自治体によって、要件や支給額は異なりますので、詳細は直接管轄の市区町村へお問い合わせください。
(1)要介護4または5に1年以上認定されている家族を家庭内で介護している
(2)過去1年に介護保険サービス(短期に入所等)を受けていない
(3)要介護者および介護する人の属する世帯全員が世田谷区内に住所があり、住民税非課税である
(4)病院等へ継続して90日以上入院していない
(5)介護することで報酬や謝礼を受け取っていない
地域支援事業の利用も選択肢の一つ
年間10万円という金額は決して少なくありません。せっかくの貴重な支給金ですから、要介護者のために有効活用したいですよね。
平成25年に厚生労働省より都道府県知事宛てに示された指針によると、介護保険上の地域支援事業による介護者の家族の支援には、以下のようなものが行われています。
ただ、一つひとつみていくと、家族の支援もなかなか簡単ではないことがわかります。支援には限りがあり、介護する家族の負担が思いやられます。
家族介護支援事業
要介護被保険者の状態の維持・改善を目的とした、適切な介護知識・技術の習得や、外部サービスの適切な利用方法の習得等を内容とした教室を開催する。
認知症高齢者見守り事業
地域における認知症高齢者の見守り体制の構築を目的とした、 認知症に関する広報・啓発活動、徘徊高齢者を早期発見できる仕組みの構築・運用、認知症高齢者に関する知識のあるボランティア等による見守りのための訪問等を行う。
家族介護継続支援事業
家族の身体的・精神的・経済的負担の軽減を目的とした、要介護被保険者を現に介護する者に対するヘルスチェックや健康相談の実施による疾病予防、病気の早期発見や、介護用品の支給、介護の慰労のための金品の贈呈、介護から一時的に解放するための介護者相互の交流会等を開催する。
家族介護の固定化を防ぎ、家族の生活の質も維持しつつ、介護される側にとっても最善の介護を行うことができるか否かは、極めて難しい問題です。制度を維持するには事業費の有効活用も必要でしょう。