病気やけがは、いつ何時起きるかわかりません。中には長期の入院や手術を必要とする場合もあるでしょう。入社間もない若い年代であれば、貯蓄もほとんどなく、高額な医療費ための余力がないのが普通です。また高齢になれば、限られた年金からでは出費できず、預貯金を取り崩すことになります。働き盛りで収入が多くても住宅ローンの返済や教育費などで、家計は必ずしも楽とは言えないでしょう。

どの年代であっても、病気になったとしたら、最大どのくらいの出費になるかを知っておくことは生活設計上、大切です。わが国には医療費が高額になったときの医療費の負担を軽減する「高額療養費制度」があります。その制度の概略をまとめてみましょう。

  • 高額療養費制度の仕組みをきちんと理解しよう(写真と本文は関係ありません)

高額療養費制度の上限額は年齢や年収で異なる

高額療養費制度とは、ひと月に支払った医療費が決められた上限額を超えた場合、超過分の金額が払い戻される制度です。その上限額は年齢や年収によって異なります。原則一旦は自分で支払い、のちに申請することにより払い戻されます。

下記の表は、高額療養費制度の負担上限額の計算式となっています。制度は大きく70歳以上と69歳以下に区分され、それぞれ収入に応じて負担額の上限が定められています。70歳以上の項目で赤字となっている部分は、平成30年8月以降に負担増となる金額です。70歳以上の上限額は平成29年8月にも増額になっていますので、2年続いての改正となります。

自分の収入に応じて3カ月、6カ月、1年間の療養などのケースの出費の概略を計算してみてください。厚生労働省によると、退院患者の病院の在院日数は35歳~64歳の働き盛りの場合は、およそ30日です。1カ月程度の入院であれば、医療費負担はその後の生活に大きく影響する額ではないでしょうから、最悪の事態を想定して長期の療養のリスクを考えてみましょう。

例えば35歳、500万円程度の年収のケースでは、ひと月の上限額は8万100円+(医療費-26万7,000)×1%です。計算式が難しく見えますが、「×1%」があるためカッコ内の数値はほとんど考慮する必要がなく、およそ8万円が上限となります。保険適用の診療である限り、100万円の医療費でも負担はさほどではないのです。

  • 70歳以上の高額療養費制度の負担上限額

  • 69歳以下の高額療養費制度の負担上限額