韓国系大手語学学校たちの躍進と日系語学学校の苦悩
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」(以下、コロナ)の流行から約2年が経過した2022年。フィリピン政府の入国制限緩和によって、ようやくフィリピン留学業界に復活の兆しが見え始めました。語学学校や留学エージェントはアフターコロナに向けて動き出します。
とはいえ、コロナ禍で日本人経営の語学学校は半分以上が閉校。先が見えずに辞めてしまった先生方も大勢おりましたので、すぐに再開とはいかず、足踏み状態でした。
そんななか、真っ先にスタートダッシュを切ったのは韓国系大手の語学学校です。彼らはオンライン英会話などによって、コロナ禍でも先生方をできるだけキープしていたのに加え、新たに大型の校舎も建設。
また生徒も韓国や日本だけでなく、台湾やベトナム、アラブ圏などからも獲得し始めるなど、アフタ―コロナを見据えて拡大準備を着々と進めていました。
フィリピン留学業界において、2022年の段階では韓国系の語学学校が一歩リードしている印象でしたね。
留学生の多国籍化や施設のハイグレード化の流れ
韓国系語学学校の躍進もあり、アフターコロナのフィリピン留学は留学生の多国籍化と施設のハイグレード化の流れをたどります。
元々フィリピン留学というと韓国人がほとんど。日本人も韓国系の語学学校に通うことが主流でした。
そこに10年ほど前から日本人経営の語学学校がフィリピンへ一挙に参入。生徒を奪われてしまうことに危機感を覚えた韓国系の学校は国際的なPRを図っていました。
その結果、韓国や日本に加え、台湾や中国、ベトナム、アラブ圏、さらにはヨーロッパ圏の生徒まで集まるようになってきたのです。ようやくフィリピン留学が世界で認知されてきたと実感しています。
生徒の多国籍化に伴い、韓国系の留学施設もハイグレード化。以前は古びた合宿所のような施設が多かったのですが、リゾート施設並みのクオリティの学校も今では珍しくはありません。
日本人経営の語学学校はというと、コロナ禍前からホテルタイプの施設が多く、きれいと評判でした。やはりその点に関しても韓国側もライバル意識があったのでしょう。フィリピン留学はアカデミック/英語教育面のクオリティだけでなく、施設も日々グレードアップしてきています。
例えば、最大規模の語学学校では約600人が滞在可。個々の部屋はベッドや学習机などが完備されて、まるでビジネスホテルのようです。カフェテリアやジム、ダーツスペースまで完備され、学校内で日常生活を楽しめます。
ちなみに、コロナ禍の感染防止策を経て、フィリピン全体としての衛生面も多少向上しました。アフターコロナのフィリピン留学は以前よりも快適な生活が期待できそうです。
会社をやめずに留学できる、リモートワーク留学の誕生
もう1つ、アフターコロナの留学業界には新たな変化が訪れました。それが「リモートワーク留学」の誕生です。
「リモートワークで仕事を続けながら、海外現地へ留学に行く」というスタイルで、主に社会人の方におすすめの留学方法です。
これまで社会人の方は、転職や退職など仕事を辞めるタイミングでなければ、長期間の留学は難しいという現実がありました。
しかし、コロナ禍の感染防止対策として多くの企業でリモートワークが導入され、会社に出勤せずとも仕事ができるように。住む場所に左右されずに仕事が続けられる環境がコロナ禍のおかげで整いました。
それをうまく活用したのがリモートワーク留学です。例えば現地時間の日中に学校に通い、夕方からはリモートで日本の仕事をする、というような両立が可能となります。
もちろんハードなスケジュールではありますが、現在の仕事を続けながらも留学に行けるメリットは大きいと考えています。フレックスに働けるなら留学できる国の選択肢も広がります。
現在リモートワーク留学は、フリーランスの方を中心に徐々に広まり始めています。仕事を理由に留学を諦めていたという方は多くいましたので、「こんな選択肢があったのか」と皆さん喜んでくれていますね。
新たな留学の形であるリモートワーク留学の誕生によって、社会人でも留学のハードルがぐっと下がりつつあります。今後は企業に務める社会人の方も、夢を諦めずに留学に挑戦できるようになってほしいです。
これから留学を検討する人たちへ
コロナ禍前と比べて留学スタイルも多様化し、フィリピン留学業界も日々進化しています。長く続いたコロナ禍が一段落※、「留学に行くなら今しかない!」と考えている方も多いのではないでしょうか。
※世の中的にはようやくコロナ禍から元の社会に戻りつつある
ここで留学を考えている方に、私から3点アドバイスしたいことがあります。
まず1つ目は、エージェント選びをしっかり行うことです。エージェントはコロナ禍からの立て直しを図っている真っ只中。新たにスタッフを補って研修をするところからスタートしているエージェントが数多くあります。
そして、そのなかには十分な研修がされないまま生徒さんの対応をしている場合もあるようです。留学ニーズの高まりに便乗して高額な費用を請求するエージェントもいるので、さまざま比較しながら、信頼できるエージェントであるかどうかを見極めていただきたいと思います。
2つ目は留学の目的を明確にすること。「今しか行けないこの機会に行く!」「留学をしてみたいから行く!」という勢いも大事ですが、明確な目標がなければ、ただの旅行の延長になりかねません。「何のために留学するのか」「留学の経験を生かして将来は何をしたいのか」改めて考えてほしいと思います。
最後は環境のせいにしないということ。いざ留学をしてみたら「思っていたのと全然違う……」とショックやカルチャーギャップを受けることは少なからずあると思います。
例えばフィリピンには日本人留学生が多くいます。その結果、つい日本人とばかり会話をしてしまって、思ったように英語力を身に付けられなかったという声を聞きます。
しかし、当然現地フィリピン人はもちろん、学校によっては多国籍な生徒がいますので、英語力を伸ばしたいのならば、ぜひ日本人以外の人たちと積極的に会話するという選択をしてほしいと思います。
どんな環境であれ、自分の行動や考え方を変えることで学びが得られるはずです。有意義な留学生活を送れるよう意識してもらえたらうれしいです。
コロナ禍を経て、学生であっても社会人であっても、留学に行けるチャンスが広がりました。興味のある方はぜひフィリピン留学にトライしてみてはいかがでしょうか。
著者プロフィール:太田英基
1985年生まれ、宮城県出身。大学在学中に広告事業「タダコピ」を手掛ける株式会社オーシャナイズを起業。退職後はフィリピン留学を経験し、世界50ヶ国を旅してきた。2013年に株式会社スクールウィズ を立ち上げ、英語学習サービスGaribenやリモートワーク留学などを提供している。