AI共生時代の人間価値創造を追求する総合人材サービス会社「イマジンプラス」。求人サイト「ジョブマルシェ」なども運営する同社の代表取締役社長、笹川祐子氏。本稿では、人材の育成に貢献してきた同氏に、若いビジネスパーソンの人脈の作り方を聞いていく。

  • 出会いを縁に変え、深める - 人材派遣会社社長が語る人脈作りの秘訣とは

    左から、日比谷尚武氏、イマジンプラス 代表取締役社長 笹川祐子氏、徳本昌大氏

聞き手は、ビジネスプロデューサー・書評ブロガーの徳本昌大氏、IT企業 Sansanで"コネクタ"の肩書きを持つ日比谷尚武氏の2名。仕事、働き方、人脈のこれからを考える3氏の対談から、人脈構築術について考えてみたい。

株式会社イマジンプラス、株式会社イマジンネクストの代表取締役社長を務める笹川氏は、長年にわたり人材派遣事業に携わってきた、いわば人材教育のプロフェッショナルだ。現在では、匠アカデミージャパン、そらぷちキッズキャンプの理事など、教育事業にも深いかかわりを持っている。同氏の学生時代、新人時代を振り返りつつ、人脈の築き方を伺っていこう。

人脈作りとは"出会い"を"ご縁"に変え、深めること

子供のころは病弱で、多くの時間を病院や縁側で過ごしたという笹川氏は、眠りながら多くの大人たちの会話を聞いていたという。そこで生まれたのが「同じ人間に生まれてきて、どうしてお金持ちとそうでない人に分かれるんだろう? 」という疑問だ。そして、高校から大学へと進学するにつれて、哲学書や自己啓発本などを読むようになった。

この疑問への探求心は、大学生時代に形となって表れた。アルバイト先の企業の社長に対し、「どうして成功したんですか? 」「どんな子供時代を過ごしたんですか? 」といった質問を直接聞いたのだそうだ。こうして社長に質問を投げかけながらついて回っているうちに「今日、社長仲間と会うんだけど、一緒に来るかい? 」と、さらに多くの経営者や医者、士業などに出会うことができたという。

「大学生が話を聞きに行きたいといったら、みんなウェルカムですよ。たぶんこれは今でも一緒です。会いたい人に会って話を聞かせてもらえるのは学生の特権です!」

しかし、社会に出てしまうとこのような人脈の広げ方は難しい。それでも、基本となる部分は同じだ。「まず相手のお役に立つこと、貢献すること、喜ぶことを提供すること。自分に都合の良いものだけをかっさらっていこうとする人は信用されません」笹川氏はこのように述べる。

「相手に時間を使うと、その人はなにかを返してくれようとします。目上の人の時間給は、駆け出しのビジネスパーソンよりも高いのです。御礼や報告をきちんとする人が少ないので、礼儀正しさは目立ちます。人と会う時は、相手が時間とお金を使ってくれているという想像力と感謝の気持ちを持ちましょう」

仕事をしていく中で、ビジネスパーソンは多くの人と出会う。注意していないと名刺を交換しただけで終わるかもしれないそのような出会いを、"ご縁"へつなげていくことが大事なポイントだ。そのための話題は仕事に限らず、出身地でも、趣味でも良いだろう。相手を知り、話し相手になることが大切。結果的に、ヒアリング力や質問力、知的好奇心がアップし、目をかけられ、どんどん紹介の輪が広がります。

「だれと会う、どこに行く。それが人生の探求だ」…… 笹川氏は自身のポリシーをこのように説明する。そして、"出会い"を"ご縁"に変え、深めていくことこそが人脈作りだと述べた。

あなたの中にある知恵と人脈は誰も盗めない

「あなたの中にある知恵と人脈は誰も盗めない。それは必ずあなたの財産になる」

新人として社会に出たばかりのころ、笹川氏は先輩にこう伝えられたという。同氏の駆け出しの時代といえば約30年前。当然、携帯電話もメールも、SNSも存在しなかった。当時の人とのつながりを構築する手段は直接会って話すこと。今ほど「人脈を作りましょう」と具体的な言葉で示されてはいなかったが、今以上に人付き合いの密度は濃かったのかもしれない。そして最初の言葉に続けて、具体的なアドバイスも伝えられていた。

「営業に行って、喫茶店に入ってはいけません。お客さんのところに行くか、書店に行きなさい」…… 連絡手段の少なかった当時は、営業活動などで気軽に客先に顔を出すのも一般的だった。これは、喫茶店で時間を潰すよりは、顧客のために時間を使うか、自分の学びのために時間を使えという教えだ。行動様式こそ現代とは異なるものの、知恵と人脈がビジネスパーソンにとっての財産になる、という考え方は今でも同じだということだろう。

さらに笹川氏は、この教えに加えて「3マメ」という持論を述べる。それは「口マメ」、「筆マメ」、「足マメ」だ。これもまた、SNSでも適用できる論だ。メールやメッセンジャー、SNSでこまめにコメントを入れ、お礼を言う、報告をする、相手に負担にならない範囲で直接会う。

「SNSなどが普及している時代だからこそ、ハガキや手紙を利用した挨拶状やお礼状が感動されることもあるかもしれません。また、自分で会を主催することも人脈作りとスキルアップになります。朝会や勉強会、交流会でも代表者には多くのメリットがあるんです」

年上は年下の価値観を知りたがっている

年上の人にはお金があり、人脈もある。では若いビジネスパーソンに何があるかと言えば、それは時間や体力、新しい発想だ。笹川氏が語る人脈作りは、まだ時間や体力に余裕があり、新しい発想力に富んだ若いビジネスパーソンこそ実践しやすいものだろう。

笹川氏は最後に、お金があり人脈もある年上のビジネスパーソンが、なぜ若いビジネスパーソンの世話を焼き、人脈作りに貢献してくれるか、その理由を教えてくれた。

「若いころ、私は年上のメンター(指導者、助言者)を持っていました。しかし自分がその立場になった今は、年下のメンターを持っています。若い人は『若い人の価値観』という、とても価値のある情報を持っているのです。あなたが年上の人からなにかを得ようと考えているのと同時に、年上の人もあなたから何かを得ようとしています。何よりも若さのエネルギーや元気さは相手に希望を与えます。ぜひ想像力をもって、相手の信頼に応えてください」