連載コラム『株トリビア』では、「わかっているようで、実はよく知らない!?」株式用語、経済用語について、経済キャスターの鈴木ともみ氏が解説します。
今回は、株式ニュースで頻繁に出てくる『メジャーSQ』を取り上げます。
『メジャーSQ』のSQとは、「Special Quotation」の略で、日本語では『特別清算指数』と訳されます。株式市場では上場している銘柄を売買する通常の現物取引の他に、株式先物取引やオプション取引などが行われています。現物の株式取引では、同じ株を何年も保有し続けることが可能ですが、先物やオプションの取引では、決済期日というものが定められており、その期日には決済をしなければなりません。そのため、期日前までに反対売買を行わなければならず、反対売買を行わない場合には、このSQ=特別清算指数で決済されることになります。
反対売買を期日までに行わない場合に使われる精算価格のことをSQ(値)と呼んでいるのです。
オプション取引では各限月ごとに毎月第2金曜日が(オプション)SQ算出日となっており、先物取引では3月・6月・9月・12月の第2金曜日が(メジャーSQ)算出日となっています。
先物やオプション取引では、清算値が高ければ利益が出る人と、低ければ利益が出る人がいるため、指数を上げようとする投資家と下げようとする投資家の双方が存在します。そのため寄付き前は、各々の思惑が交錯し、気配値が乱高下することもあります。
また、SQ算出日には裁定取引に伴う現物株の大量注文も出やすくなります。
通常、先物の価格は決済を先に伸ばしているために、その間の金利分だけ現物の価格よりも高くなります。例えば日経平均先物の価格は、現物の日経平均株価よりも通常は高いと言うことになります。そこに強気心理が働くと、先物の価格が金利分を上乗せした価格よりもさらに高い価格で取引されるというケースが出てきます。そのような時に、割高な先物を売って(売り建て)、割安な現物を買うという価格差を狙った裁定取引が行われます。
【先物売り+現物買い】という裁定取引のポジションが最終売買日まで持ち越されると、SQによって強制的に【先物売り】のポジションが清算されるため、セットとなっている【現物買い】のポジションも反対売買の売りとなって市場に出てくるのです。
■【先物売り+現物買い】⇒現物売り注文
■【先物買い+現物売り】⇒現物買い注文
上記のように、裁定解消取引に伴う現物株の売買注文が、SQ算出日にまとめて出るため、現物の株価への影響も大きく出やすいのです。
大量の売り注文と買い注文が、(3月6月9月12月)第2金曜日の寄付きに集中し、東証全体の売買高や売買代金も通常取引の3倍近くに膨らむこともあるため、メジャーSQ算出日に株式取引する際には注意が必要です。
直近では9月12日がメジャーSQ算出日となります。
執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)
経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。