連載コラム『株トリビア』では、「わかっているようで、実はよく知らない!?」株式用語、経済用語について、経済キャスターの鈴木ともみ氏が解説します。
今回は、新聞やテレビのニュースでよく耳にする「GDP」を取り上げます。
GDPは英語の「Gross Domestic Product」の頭文字をとったもので、日本語では「国内総生産」と訳されます。
GDPは国内で一定期間(四半期ないし一年の間)に新しく生み出された財やサービスの金額の合計額で示されます。各国の経済規模を表す指標として、国際比較を行う際にも用いられます。GDPが一年間でどのくらい伸びたかを確認することで、その国の経済成長率を計ることができ、経済が好調なときはGDPの成長率は高くなり、逆に不調なときは低くなります。
内閣府は四半期ごとに、このGDPを前期比増減率(年率換算)で公表しています。
新しく生み出された財やサービスの合計額であるGDPは、利益として企業に、給料として個人に分配されます。企業や個人にとって、分配された分は所得となり、その所得をもとに企業は今一度、設備投資や生産活動を行ったり、個人はモノを買うなどの消費活動を行うわけです。このようにGDPが生産、所得、支出の三つの面で等しくなることを「三面等価の原則」と言います。
ニュースなどで伝えられるGDPは、このうち支出面からとらえたものとなっています。ですので、GDPの構成比を支出面から見ると、内需(国内需要)と外需(純輸出)の合計額ということになります。
そして、GDPには「名目GDP」と「実質GDP」があります。
実質GDPは名目GDPから物価変動分を差し引いた数値となり、景気動向を見る上で注目されているのは実質GDPの前期比増減率です。
実質GDP=名目GDP-(物価上昇率)で求められます。
内閣府は8月13日に2014年4-6月期のGDP速報値を公表しますが、まずはこの数値に注目が集まっています。なぜなら、4-6月期は消費増税後の影響が反映された初めてのGDPとなり、民間シンクタンク11社の最新予測によれば、実質GDP成長率は平均で前期比年率-7.4%と、消費増税前の駆け込み需要が押し上げた1-3月期の+6.7%から急減速するとの見方が広がっているからです。
さらに、次の7-9月期のGDPが、この4-6月期のマイナス分をどれだけ補い、回復できるかによって、政府は2015年10月に消費税を8%から10%に引き上げるかどうかの判断を下すとしています。
つまり4-6月期で落ち込んだGDPの回復力が7-9月期で示されるか否かによって、来年10月からの消費税アップの有無が決定してしまうのです。ちなみに4-6月期のGDP一次速報値は8月13日に、二次速報値は9月8日に公表され、7-9月期のGDP一次速報値は11月7日に、二次速報値は12月8日に公表されます。
いずれも日本経済がどこに向かうのか、また株価や為替の見通しを立てる上でも世界が注目するイベントとなりますので、ぜひともチェックしておいてください。
(※画像は本文とは関係ありません)
執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)
経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。