連載コラム『株トリビア』では、「わかっているようで、実はよく知らない!?」株式用語、経済用語について、経済キャスターの鈴木ともみ氏が解説します。


今回は、世界の投資家が常に注目している「ROE」を取り上げます。

ROEは英語の「Return On Equity」の頭文字をとったもので「アール・オー・イー」と読み、日本語では「株主資本利益率」と訳されます。

「ROE=純利益÷株主資本×100」の計算式で求められ、この数値を見ることで、株主から集めた資金をいかに効率的に活用し、どのくらいの利益を生み出せているかを確認することができます。

ROEは、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)のように株価が割高であるか割安であるかを判断するものではなく、株主の出資した資金を効率よく使って実際に利益を上げているかどうか、つまり、企業が無駄遣いをしていないかどうか見る指標と言えます。

一般的に外国人投資家がこのROEを重視する傾向にあり、ROEが高い企業ほど株主資本を有効活用していることになり、逆に、低い企業は資本を有効利用できてないと判断されます。ROEが高い企業は、世界的にも優れた企業という評価につながるため、最近では、日本企業のなかでも、一定水準以上のROEを経営目標に掲げる企業が増えてきました。中期経営計画などで「ROEを○○%まで高める」といった目標を定める企業も少なくありません。

そうした流れのなか、2013年度の東証1部上場企業のROEは8.6%と、前年度に比べ3%強上昇し、6年ぶりの高水準となっています。

とは言え、米欧企業のROEは10%超が主流であるため、日本企業のROEはまだまだ世界的には低水準であるとの見方が根強くあります。日本企業のROEは、直近で最も高かった2005年度でも、9.5%程度と10%に満たないのです。

そのため、企業はひき続き、収益を伸ばす努力をするのはもちろんのこと、自社株買いを決めたり、増配を発表するなど、具体的に資本を有効活用している姿をアピールし始めました。株式市場でもROE向上を意識して事業展開する企業(銘柄)の株価が上昇する傾向にあります。

129兆円の公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も、ROEの高い企業(銘柄)を対象とした株価指数「JPX日経インデックス400」を国内株式のパッシブ運用のベンチマーク(運用指標)として採用する、新たな投資を始めました。

「JPX日経インデックス400」(出典 : 東京証券取引所ホームページ)

日本の株式市場でROEが広まり始めたのは1990年代以降のことですが、ここにきて、ROEと株価の相関関係が急速に高まりつつあるため、株式投資をする上では、各企業(銘柄)のROEの推移を常にチェックしておく必要があるでしょう。

執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)

経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。