連載コラム『株トリビア』では、「わかっているようで、実はよく知らない!?」株式用語、経済用語について、経済キャスターの鈴木ともみ氏が解説します。


今回は、最近の株式ニュースで頻繁に出てくる『PBR』を取り上げます。

PBRは英語の「Price Book-value Ratio」の頭文字をとったもので「ピー・ビー・アール」と読み、日本語では「株価純資産倍率」と訳されます。

「PBR=株価÷BPS(1株当たり純資産)」の計算式で求められ、単位は倍で表示します。

この数値を見ることで、株価が割高か割安かをチェックし、その銘柄(企業)の過去のPBRと現在のPBRを比べたり、同業他社との比較などに用いることができます。

企業の資産面から、現在の株価が企業価値に見合った水準であるのかどうかを判断する指標ですので、同業他社と比較しやすいPER(株価収益率)と比べると、PBRは、同じ企業の過去と現在を比較する方が適しています。

計算式にあるBPSとは、企業が解散した際に、1株当たりどのくらいの資産が返還されるのかを表した指標で、PBRと同様にこの数値も高いと株価が割高となり、低いと割安であると判断できます。

また、「純資産」は、貸借対照表の「資本の部」に相当し、会社の資産総額から負債総額を差し引いた金額となります。

当面の下値を予測する指標として用いるのが有効

一般的に、PBRが1倍の時には、企業の解散価値と株価が一致しているということになり、1倍未満の株価は、企業が持つ資産価値を株価が下回っていることを意味しますので、割安であると考えられます。

ただ、1倍を割っている場合には、業績の悪化が続いていたり、不良資産(在庫や売掛金など)を過剰に抱えているなど、その企業が何か大きな問題を抱えている可能性もあります。また、PBRは、分母が純資産であることから利益成長を見据えた短期的な投資尺度にはなりにくいため、PBRから見て割安だからと言って、今すぐ買い時であると判断するのは早計です。

当面の下値を予測する指標として用いるのが有効でしょう。

ただ、株式相場全体が下落している地合いでは、通常はPBRが1倍を下回らない優良企業も1倍を下回ることもありますので、長期投資の観点からの銘柄選びには、適していると言えます。

一方、株式公開したばかりの企業などは、資本が積み上がってないことからPBRが高くなるケースもあり、企業の特徴や個性を見極めることも重要です。

PBRには予想PBRと実績PBRの2種類があり、予想PBRは今期の純資産予想値から算出し、実績PBRは直近の決算で計上した純資産から算出します。

PBRを指標として用いる際には、この指標だけでなく、他の指標と合わせて総合評価して判断するのが良いでしょう。

(※画像は本文とは関係ありません)

執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)

経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。