連載コラム『株トリビア』では、「わかっているようで、実はよく知らない!?」株式用語、経済用語について、経済キャスターの鈴木ともみ氏が解説します。
『HSBC中国製造業PMI』、先行きの景況感を示す指標として注目
今回は『HSBC中国製造業PMI』を取り上げます。
HSBC中国製造業PMIは、世界有数の金融グループHSBCホールディングスと英調査会社マークイット・エコノミクスが発表する景気指標で、中国製造業の購買担当者などへのアンケート結果を集計した数値です。
PMIは「Purchasing Manager's Index」の略で、日本語では「購買担当者景気指数」と呼ばれています。
この数値は、製造業やサービス業に属する約400社以上の購買担当者へのアンケートや聞き取り調査から、新規受注、生産高、受注残、価格、雇用、購買数量などを集計し、その指数に一定のウエイトを掛けることによって算出されます。
製造業の購買担当者は、売り上げの動向や自社の生産計画などを見通した上で、材料や部品を調達するため、HSBC中国製造業PMIは、先行きの景況感を示す指標として注目されています。
景況感の改善と悪化を判断する分岐点となるのが50という数値
景気が良くなると考える担当者が多いほどPMIの指数は高くなり、一方、悪くなると考える担当者が多くなれば数値は下がります。
そして、中国の景況感の改善と悪化を判断する分岐点となるのが50という数値です。通常、50を上回ると景気は拡大傾向にあり、50を下回ると景気が後退しているとの見方が強まります。
この数値は、GDPとの連動性が高く、GDPよりも約2カ月ほど先行すると言われています。
そのため、購買担当者だけでなく、原材料メーカーや金融機関の関係者も注目しており、景気動向を見極める重要な指標として位置づけられています。
2月分の「HSBC中国製造業PMI」速報値、4カ月ぶりの高水準
HSBC中国製造業PMIは、毎月1日に発表される中国物流購入連合のPMIよりも一足早く、その前月の20日過ぎ頃に速報値が発表されます。
直近では、2月25日に2月分の「HSBC中国製造業PMI」速報値が発表され、50.1という数値となりました。50.1という数値は4カ月ぶりの高水準となり、景気の好不況の分かれ目となる50を3カ月ぶりに上回りました。前月1月分の確報値49.7からも上昇しています。
項目としては、生産と新規受注の指数が改善しています。
なお、確報値は月末から翌月初にかけて発表される予定です。
昨年の中国経済は、1990年以来24年ぶりの低成長となり、エコノミストやマーケット関係者から中国景気の減速懸念が指摘されています。
HSBC中国製造業PMIは、今後の中国経済の先行きを見通す上で重要な景気指標となりますので、毎回、速報値、確報値と、いずれもぜひチェックしておきたいところです。
執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)
経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。