連載コラム『株トリビア』では、「わかっているようで、実はよく知らない!?」株式用語、経済用語について、経済キャスターの鈴木ともみ氏が解説します。


生産量の変動によって景気動向を見極めることができる

今回は『鉱工業生産指数』を取り上げます。鉱工業生産指数は、経済産業省が毎月発表している「鉱工業指数」の一つで、製造業の企業(メーカー)が生産した数量を示す経済指標です。鉱工業指数は「生産指数」「出荷指数」「在庫指数」などの指数で構成され、このうち最も重要視されているのが「鉱工業生産指数」です。

基準年を100とした上で、「生産動態統計」などの調査結果を系列化し、それを指数化することによって算出されています。

毎月の生産量が前年同月比でどのくらい増減したかを確認する指標です。

景気が好調な時には、個人消費も伸びるため、企業は製品の生産量を増やします。

逆に景気が低迷している時には、企業は生産を縮小します。

つまり生産量の変動によって景気動向を見極めることができるのです。

鉱工業生産指数が順調に回復するためには、国内の個人消費の持ち直しが不可欠

12月12日に発表された10月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)の確報値は、前月比0.4%上昇の98.4(速報値は0.2%上昇の98.2)となりました。

主にアジアで生産するスマートフォンなどの需要を取り込んだ機械や電子部品の生産が伸びた一方、4月の消費増税により個人消費が停滞し、乗用車などは在庫を抱えて生産が伸び悩む結果となっています。

鉱工業生産指数が順調に回復するためには、国内の個人消費の持ち直しが不可欠です。

また、鉱工業生産指数は企業の動向を表す指標であるため、株式相場との連動性も高く、毎月、多くの投資家がその数値に注目します。

次回、11月分の鉱工業生産指数の速報値は12月26日(金)の8時50分に、確報値は来年・2015年1月19日(月)の13時30分に経済産業省から発表されます。

また、鉱工業生産指数は米国でも同じように重要視されており、米鉱工業生産指数は、米国経済のファンダメンタルズ分析をする上で不可欠な指標として常に注目されています。米国ではFRBが毎月15日前後に発表しています。

景気の行方や株式動向を見通す上でも、重要な経済指標ですので、ぜひチェックしておきたいところです。

執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)

経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。