連載コラム『株トリビア』では、「わかっているようで、実はよく知らない!?」株式用語、経済用語について、経済キャスターの鈴木ともみ氏が解説します。
今回は、10月1日に発表される『日銀短観』について取り上げます。
日銀短観は日本銀行(日銀)が公表する「企業短期経済観測調査」の通称で、内閣府が公表するGDP(国内総生産)と同様に、景気の状態やサイクルを総合判断するために用いる経済指標です。
日銀短観は、日銀の調査統計局による上場企業や中小企業、計1万社以上を対象とした業況(アンケート)調査をもとにしており、企業経営上の実績や計画を調査する計数調査と、企業経営者の実感(マインド)を集計する判断調査の2種類によって構成されています。
計数調査は売上高、設備投資額、雇用者数、金融機関借入金を計数的に計るものです。一方、判断調査は、生産、売上、在庫調査、設備投資、企業収益、雇用、企業金融の項目に対して、経営者が「良い」「さほどよくない」「悪い」の3つの選択肢から選んだものを集計しています。
この「判断調査」において、最も注目されるのは業況判断DI(ディフュージョン・インデックス)という指数です。
これは、業況が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いて算出され、なかでも大企業製造業の指数が注目されます。
例えば「良い」と答えた経営者の割合が40パーセントで、「悪い」と答えた割合が20パーセントだったとすると、業況判断DIは20となります。
前回の調査で業況判断DIが15だった場合は、景気が良いと答える経営者が増えたことになり、景気が上向いているという見方が強まったと判断できます。
実際、この業況判断DIが上昇、下降に転じる時期が、景気サイクルの転換点となっていることが多いのも特徴です。
また、サンプル数が1万社以上と多数であること、回収率が100%近いことなどから、信頼度が高く、国内景気の実態を知る重要な経済指標として、その結果には毎回、エコノミストや市場関係者からの注目が集まります。
日銀短観の調査は3、6、9、12月と、年4回行われ、調査月の翌月、4、7、10月の初頭と、12月の半ばに公表されます。
直近では、10月1日(水)に2014年9月調査が公表されます。
なお、同時に3カ月先の次回調査までの予測を集計した「予測DI」も発表されますので、あわせてチェックしておくと良いでしょう。
執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)
経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。