『マンティコア vs U.S.A.』

この映画のタイトルだけで何かを感じ取った方、そうそこのあなた! もう立派なB級映画中毒だネ!

……ということで、今回レビューする映画は「マンティコア vs U.S.A.」。 タイトルだけで内容の全てを物語ってしまっているのはご愛嬌です。

タイトル、迫力、秀逸なキャッチコピー、どれをとっても最高峰のB級エンタテインメント!

それにしても何度見てもこのタイトル、イイ! 原題は単に「マンティコア」なのですが、あえて「vs U.S.A.」をくっつけた邦題のセンスには降参です

ここまで読まれて「こいつはタイトルだけで何をごちゃごちゃと語っているのか?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、違うのです。タイトルこそが重要なのです。たとえば同じような例を挙げるなら、「エイリアンVSプレデター」や「フレディVSジェイソン」あたりでしょうか。……ね? 何かお祭り気分になってきたでしょう?

そう、この「〇〇VS〇〇」という響きには何かこう、強大な力を持つ者同士がぶつかり合うドリームマッチなワクワク感が漂っているのです。ま、そんなことはゴジラシリーズを見て育った僕たち日本人のDNAに刻み込まれているわけで、ここであえて説明するほどのことではないと思うのですが、念のため。

もし万が一、ここまで読んで「この人何言ってるかわかんなーい。キモーい」と思った人は、まず『ウルトラマンVS仮面ライダー』から勉強して出直すように!

っと、つい興奮してしまいました。失敬失敬。 とまあそんなわけで、いきなりタイトルから(個人的に)盛り上がった本作品ですが、じゃあ肝心の内容はどうなのか。 ……これが驚くなかれ、同ジャンルの有名作品にも決して引けを取らない完成度だったのです。

ではあらすじを簡単に。

イラク戦争の末期。アメリカに対抗するためイスラム・ゲリラたちが解き放ったのは、神殿に封印されていた伝説の魔獣「マンティコア」だった。ライオンの胴体・コウモリの翼・サソリの尾を持った無敵の怪物と、アメリカ軍の壮絶な戦いが始まった――。

物語の舞台は、まだ記憶に新しいイラク戦争の末期。 映画の冒頭では、イラクに駐屯するアメリカ軍とイスラム・ゲリラの小競り合いが描かれるなど、世界情勢を反映したディープな世界観が語られます。

え、これってそういう重いテーマの映画? と勘違いしそうになったところで雰囲気は一転、イスラム・ゲリラの男たちが対アメリカ軍の最終兵器として、伝説の魔獣「マンティコア」を2,000年の眠りから解き放ちます。ちょっと大げさにいうと、最初の30分は『プライベートライアン』だったのが、いきなり『ハムナプトラ』になる感じなので、ちょっと戸惑うかもしれませんが、すぐ慣れるので問題はありません。

さて、その前後の細かいストーリーもなかなか上手くできているのですが、そこは各自ご覧いただくとして、いよいよ目覚めてしまった魔獣マンティコアとアメリカ軍の対決がスタートします。

いかにもモンスターといった姿形のマンティコア。こいつが猛スピードで突進してくる!

ところが、このマンティコア、おそらく映画史上最悪クラスの化け物で、銃火器はもちろん他のあらゆる攻撃を受け付けないという反則レベルの無敵っぷり。対するアメリカ軍は、常識の範囲内なら間違いなく世界最強なのでしょうが、いかんせん相手が相手だけにどうすることもできず、一方的な殺戮ショーが始まってしまいます。

ミリタリーマニアならアメリカ軍の装備も見逃せない!

この窮状をどうやって脱するのか。果たしてマンティコアを倒すことはできるのか。次々となすすべなく倒れていく仲間の無残な姿には、見ている僕たちも感情移入して思わず拳を握ってしまいます。もちろん戦いの結末はネタバレになるので、皆さん自身の目で確かめてください。 序盤の伏線が一気に回収されながらのラストバトルは圧巻です。

また、本作でもうひとつ注目すべきは「誰が死んで、誰が生き残るのか」ということ。

一応主人公らしきキャラクターはいるのですが、『CUBE』や『SAW』シリーズと同じく、主人公だからといって死なないとは限らないのがこの作品の特徴です(もちろん死ぬとも限らない)。

劇中には、メインとなるアメリカ軍の皆様の他にも、ジャーナリストの女性、彼女に同行しているカメラマン、マンティコアに襲われた村の生き残りの少年、あとは……なんかよくわかんないオッサンなど、個性豊かなキャラクターたちがぞろぞろ登場するので、各キャラの結末を友達と予想しながら見るのも楽しいかもしれませんね。

死にそうで死ななかったり、あっさりやられたり……

さて、ではまとめとして、本作品をより楽しむための心構えを復習しておきましょうか。

  1. マンティコアのグロテスクな造形美に震える

  2. アメリカ軍の装備に萌える(ミリタリーマニア限定)

  3. テンプレ通りの死亡フラグにやきもきする

  4. 『世界樹の迷宮』プレイヤーはマンティコアに心の中で詫びる

……何かだんだん自分でも何を言ってるのかわからなくなってきたので今回はここまで!

ああそうだ、最後にひとつ。 マンティコアは容赦なく残虐な殺し方をしてくるので、その手のシーンに弱い人は注意して見ること! お兄さんとの約束だ!

Film (C) 2005 Universal Studios. All Rights Reserved.

今回ぶった斬られていただいた愛すべき作品

『マンティコア vs U.S.A.』

原題:MANTICORE

CAST : ロバート・ベルトラン「破壊神」 / ジェフ・フェイヒー『プラネット・テラーinグラインドハウス』 / チェイス・マスターソン / ヘザー・ドナヒュー『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』 / ファラン・タヒール / A・J・バックリー
監督:トリップ・リード「エグゼクティブ・コマンド」 / 製作:ジェフリー・ビーチ / フィリップ・J・ロス / 脚本:ジョン・ワーナー / 撮影:ロレンツォ・セナトーレ / 音楽:デヴィッド・C・ウィリアムズ

アルバトロスより3月7日発売 5,040円
山田井ユウキ

レビューサイト「カフェオレ・ライター」主宰。サイトでのP.N.は「マルコ」。映画はもちろんマンガ、ゲーム、さらにはBL作品に至るまで幅広くレビュー記事を執筆、その独特な視点とテンポのよい文章で人気を博し、このほど累計1千万アクセスを突破した。これを記念して放送したWebラジオはリスナーが殺到、実況BBSは6スレッドをほぼ消費した