夜中に一人でDVDを見ていると、友達から電話がかかってきました。
「おっす! 今な、飲み会やってん! めっちゃ楽しいわ~!」
「それはよかったなー。で、どうした?」
「いや、めっちゃ楽しいからお前にも雰囲気だけ味わってもらおうかなと思って! あ、ちょっとお前、それ俺の酒やで!(以降、声が遠くなる)」
「楽しそうだな……じゃあ俺、DVD見るから」
ガチャ。
言えなかった……最後まで言えなかったんだ……。 友達が楽しくお酒を飲んでいる頃、僕が一人で見ていたDVDのタイトルが、
『ミッドナイト未亡人』
だったってこと……。
……とまあ、そんな実話はさておき、その『ミッドナイト未亡人』こそが、今回僕がレビューする、最高級エロティック・サスペンス(自称)作品なのです。
どう考えてもタイトルで完全に出オチ……と思いますよね? 僕もそう思っていました。しかしこの作品、実はただのネタ作品ではなかったのです! そのあたりも含めてがっつりレビューしていきますので、今回は最後まで気を抜かずご覧くださいね!
※もちろん重大なネタバレはしませんよ。
まずはタイトルとパッケージを味わうのだ!
もはや僕がつっこむまでもないのですが、タイトルである『ミッドナイト未亡人』の破壊力が凄すぎます。
仮に全部日本語に訳すと「真夜中の未亡人」。そのままフランス書院のタイトルに使えそうです。うっかり親にでもこのタイトルを見られた日には……考えただけでも恐ろしい……。
続いて、パッケージをご覧ください。
いかがですか、これ。
何やら墓に寄り添って半ケツ出している女性が写っていますが、皆さんの予想通り、彼女が主人公のイザベル。彼女は物語が始まってすぐ、夫であるフランクを交通事故で失うことになります。
……未亡人ってことはつまり"夫を亡くした妻"なわけで、それならもうちょっとこう、墓参りにふさわしい服装ってものがあるかと思うのですが、そこはもちろん最高級エロティック・サスペンス(自称)ですから、きっとこの服装がTPOに適したものなのでしょう。そうに決まっています。
そして、パッケージの右上に情緒のあるフォントで書かれた「なぐさめて、ほしいの…。」というキャッチコピー。こんなに短いセリフなのに、これだけでもうこのDVDが普通の内容じゃないということがわかるから凄いですよね。何気にスタッフ、良い仕事していると思います。
最大の見せ場は……やっぱりエロ!?
パッケージである程度方向性が見えたところで、いよいよ内容をレビューしていきましょう。
このDVD、ジャンルを「エロティック・サスペンス」と謳っているだけあって、最初から最後までベッドシーンのオンパレードです。ちょっと具体的に数えてみたのですが、約90分ある本編のうち、ベッドシーンが47分を占めていました。つまり、半分です。これはもう、ちょっとしたアダルトビデオと何ら変わりません。
……ですので、ベッドシーンが苦手だという方には、正直お勧めできません。 そこをご理解いただいた上で、どうぞレビューを読み進めてください。
さて、物語のあらすじはシンプルです。
夫婦で食事をした帰り道、交通事故で夫フランクを亡くしてしまったイザベル。未亡人となった彼女は、友人であるケイトのもとを訪れます。しかし、ケイトは傷心のイザベルを無視して、恋人との情事に耽りっぱなしでした。
なぜ仲が良かったはずのケイトが自分を無視するのか……そして、何で目の前でベッドシーンを見せられなきゃいけないのか。理由がわからず戸惑うイザベルでしたが、事態はさらに不可思議な方向へと展開していくのでした――。
という感じに物語は展開していくわけですが、とりあえずまずつっこませていただきたいのは、冒頭に登場するイザベルの喪服姿がエロすぎること。
全身が黒なのでかろうじて喪服の体裁を保っているのですが、はっきりノーブラだとわかるほどに襟首が開いていたり、妙にクネクネとセクシーな歩き方をしたりと、どう考えても"未亡人"ではなくて、"未亡人っぽい服でマニアックなプレイをしている人"にしか思えません。
この時点で、一般的な人生を歩んできた方なら「このDVD……何かがやばい」と感じるはずですが、ミッドナイト未亡人の本当の恐ろしさはこれからです。
さすが、海外はエロシーンも一味違うぜ!
この作品、あらすじにも書いた通り、ベッドシーンが冒頭からガンガン出てきます。しかも一回一回が長い!
前述した通り、エロシーンが全編の半分を占めている作品ですから、ここはむしろ積極的にエロを楽しんでいくべきでしょう。とはいっても、アダルトビデオ的な楽しみ方ではありません。そんなものはお近くのレンタルショップで済ませてください。
ミッドナイト未亡人的エロの楽しみ方……それは次の通り!
1."視線"に注目!
このDVDには4人の女優の濡れ場が収録されていますが(しかも1人あたり複数回)、どいつもこいつもベッドシーンの最中、あからさまにカメラに視線を送ってきます。 これはぜひ皆さんでご覧になっていただき、「こっち見んな!」とモニターに向かって全力で叫んでやってください。
2."シチュエーション"に注目!
次に注目したいのはエロ行為が行われるシチュエーションです。たとえば、本編開始5分で突入するケイトのベッドシーンは、何やら教会のような場所で行われています。それだけならまだ納得できなくもないのですが、なぜかだだっ広い無人の教会にポツンと置かれた不自然なまでに輝く黄金の椅子……。そして、その椅子に腰掛けて喘ぐケイト……。もはやここまでいくと、僕が知らないだけで、何かこのシチュエーションには深い意味があるんじゃないかと勘ぐってしまいます。……もちろんないんですけどね!
黄金の椅子で行為に没頭するケイトと、それを見つめるイザベル。ある意味かなりシュールな光景 |
3."変なBGM"に注目!
この作品、なぜか「ベッドシーンに突入すると変なBGMが流れ出す」という、スタッフのこだわりなんだか、特に意味はないんだかよくわからない演出があります。最初の頃は気づかないかもしれませんが、だいたい5回ぐらい同じパターンが続くと、おなじみのBGMがかかるだけで「きたっ!」と思えるようになりますので、とりあえずそこぐらいまではご覧ください。……まあ、だから何って言われると非常に困るんですけど、とりあえず見終わる頃には、ほんのり達成感ぐらいは味わえるようになっているかもしれません。
実は正統派(?)サスペンスだった、『ミッドナイト未亡人』!
ここまで、本作品のエロの部分ばかりをフィーチャーしてきました。 作品の特性上、それもやむをえないかなと思いますが、実はこの作品、だてに「サスペンス」を名乗っていませんでした。
なんと、ラストに衝撃のオチが待っているのです。
こればっかりはネタバレできないので実際にご覧いただきたいのですが、それまでの伏線がぴたっとハマり、「そうだったのか!」と驚くこと間違いなしです。
まさか『ミッドナイト未亡人』で、こんな気持ちを味わうことになるなんて……なんかわからんけど無性に悔しいわ……。
ということで、一見するとエロばっかりの『ミッドナイト未亡人』ですが(実際そうなんですが)、実はしっかりとサスペンスしていた意欲作でした。
しょーもないエロと、最後にひっくり返される楽しさ、そのあたりをワイワイと楽しみながら、ぜひ友達や恋人と一緒に見てみてくださいね(僕は真夜中に一人で見ました!)。
このシーンだけでもつっこみどころが多すぎる…… |
今回ぶった斬られていただいた愛すべき作品
『ミッドナイト未亡人』
原題:DECADENT LOVE
CAST : マンディ・ブライト / リタ・アルトヤノ / ミック・ブルー / ニッキー・ベルーシ / マヤ・ゴールド
監督・脚本:ディ・サルヴォ / 編集:ダニーロ・タビタ 撮影:アントニオ・アダモ / 製作総指揮:サルヴォ・ディ・リベルト
アルバトロスより発売中 5,040円
山田井ユウキ
レビューサイト「カフェオレ・ライター」主宰。サイトでのP.N.は「マルコ」。映画はもちろんマンガ、ゲーム、さらにはBL作品に至るまで幅広くレビュー記事を執筆、その独特な視点とテンポのよい文章で人気を博し、このほど累計1千万アクセスを突破した。昨年末にはYahoo! Japanからカテゴリ登録の通知が来たが、そのカテゴリが「BL」だったため、複雑な心境のようだ