おバカな映画やDVDを数多く発売していることで有名なトランスフォーマー。この冬、満を持して彼らが世に送り出すおバカDVDが、今回レビューする作品『ボビー・オロゴンの日本文化講座 美しい国、ニッポン。』です。

出オチ。

……もはやタイトルで完全にオチてしまっている感は否めませんが、ところがどっこい、こいつがかなり完成度の高いバラエティだから困ります。その面白さの90%以上を占めるのは、やはり最強の外国人タレント、ボビー・オロゴンの秀逸なボケ。仮にも「日本文化講座」と銘打った作品のメインキャストにボビー・オロゴンを起用した、そのことだけでも僕はトランスフォーマーを高く評価したいと思います。

もちろん、「日本文化講座」と言ってはいるものの、内容はボビーのお笑いライブ(テーマ:日本)なので、まともに日本文化の勉強はできません。

その具体的な内容はというと、ボビーが日本にまつわるクイズに答えたり、「日本の文化体験」と称して様々な日本のイベントにチャレンジしていくというもの。ちなみに彼の友達(?)であるウェストンとヘンリーの二人も、「美しい国 青年隊」というユニット名で一緒に参加しています。なんだかネーミングからほんのり某アルタな番組の香りがしますが、このDVDはだいたい全編を通じてそういうノリですので、この程度でつっこんでは負けというものです。

では早速、各コーナーごとにツッコミを入れつつご紹介していきたいのですが、その前にタイトルについて言っとかないといけないことがあったんでした。

ええと、このDVD、始まってすぐのタイトルコールで「~第250回~」というサブタイトルが付いていますが、当然250回もやっていませんからね。 ※スタッフの方へ:タイトルでいきなりボケられても拾い切れないです。

1.クイズ「ニッポンの常識!」

日本人ならたいていの人が答えられるであろう簡単な問題に、ボビーと青年隊が挑戦するクイズコーナー。司会の進行や会場のセットなど、雰囲気は完全に某か〇くりTVのご長寿クイズそのまんまです。

クイズの内容は、最初の方こそ「桃太郎が連れていたのは、猿、キジ。あと一匹は?」といった割と普通の問題ですが、だんだんと「子供が好きな青くて耳のないネコ型ロボットの絵を描きなさい」といった、「さあボケんかい!」と言わんばかりの問題に変化していきます。ボビーたち3人がこれらニッポンの常識(というかもう常識でも何でもない)にどう答えるのか注目ですね。

全員外国人なのに日本の笑いをマスターしすぎだ!

2.スナック体験

日本のサラリーマンが疲れた心身を癒す場所である「スナック」を、ボビーが体験するというゆるいコーナー。スナックって日本の文化だったの? という疑問が出るかと思いますが、そういうことにしとかないと話が進まないのでそこはスルーでお願いします。

ボビーがやってきたのは、TVでもおなじみの有名スナック「ゆかり」。初っ端からハイテンションでマシンガントークを披露するゆかりの名物ママには、さすがのボビーも圧倒されっぱなしです。それにしてもゆかりママ、何の躊躇もなく放送禁止用語を連発してきて、しかもそれに「ピー」が入ってないんですけど……DVDだからってやりたい放題だなスタッフ!

都内某所に実在します

ゆかりママとボビー。このコントラストがもう……

3.お見合い

スナックと同じく、お見合いは日本の伝統文化なのか? という疑問がまず真っ先に思い浮かびますが、このDVDの主旨からしてそんなことは何ら問題ではありません。「とりあえずボビーに見合いをさせてみたかった」という製作サイドの見切り発車的なノリが僕は大好きです。

とはいえ、本当にお見合いっぽいのは最初の数分間だけで、その後はひたすらスタッフから「目の前のお茶が100度だったときのリアクションをとってください」「ものまねを披露してください」といった無茶ブリの連発。特に、無理やりエアギターをやらされたボビーが、恥ずかしさのあまり「止めて!」と悲鳴を上げるシーンは必見です。

何気に相手役の女性も相当に濃いキャラでした

4.ボビーズブートキャンプ

名前からしてあからさまにパクってしまったエクササイズのコーナー。たぶん、「ボビー」と「ビリー」の語感が近いという理由だけでスタッフが企画したんじゃないかと思います。そういえばこのコーナーにだけ猫ひろしが出演していて最後列で踊っているのですが、序盤は全員が彼をスルー。後半になってやっとボビーにいじられます。とはいえ、けっこうかわいそうないじられ方なんですけども。このあたりはぜひDVDでご確認を。

……コーナーが進むにつれて、いつの間にかDVDのタイトルでもある「ニッポンの常識」の要素は完全に消えてしまってますが、ここまで見た人なら誰もそこには文句を言わないと思うので特に問題はありませんよね!

DVDを購入すると「ボビーバンド」が手に入るぞ! 中身は見てのお楽しみ!

5.メイド喫茶体験

ここまでの本編映像だけで充分お腹一杯ですが、悪ノリしまくりの製作スタッフは特典映像にも手を抜きません。その気になる内容は、流行のスポット「メイド喫茶」をボビーが体験するというもの。

……メイド喫茶単体だけでも相当な数のツッコミ所があるのに、そこにボビーが加わるわけですからもう手に負えません。しかも、メイド喫茶のルールと称して、「食事は必ずメイドの『あ~ん』で食べる」、「メイドとのゲームを必ず注文しないといけない」、「ゲームに負けるとあなたがメイドにならないといけない(拒むと逮捕されます)」といった具合に、間違った知識を堂々と紹介してきます

ちなみに今回、ボビーが注文したゲームはぷりぷりジャンケン。なんかイラッとさせられるネーミングセンスですが、要するに普通のジャンケンです。もちろんボビーは台本通りにあっさりと負け、メイドの格好をさせられて、「イラッシャイマセゴシュジンサマ!」と笑顔を振りまいていました。どう考えても「ボビーにメイドの格好をさせたら面白いんじゃね?」というオチありきで企画された内容ですが、わかっていてもボビーのメイド姿を見ると吹くので、コーヒーなどを飲みながら見るのはやめたほうが賢明です。

このDVDで一番良い笑顔を見せていたメイド姿のボビー

以上、5つのコーナーを簡単にご紹介しましたが、この他にもボビーが日本の冠婚葬祭マナーを学んだり、お悩み相談のコーナーがあったり、まだまだ見所は紹介しきれないほどあります。

グダグダな企画に、やっつけ感漂う適当な展開。それでいてボビーの魅力を120%引き出した見事な構成。このDVDには、現代のTVバラエティが失ってしまったもの全てが詰まっていると言っても過言ではありません……いや、やっぱりそれはちょっと言いすぎた。絶対にそんな小難しいこと考えて作られてないです、これ。

――ま、とにかく。

日本人として、ゆかりママの放送禁止用語だけは絶対に聞いとこうぜ!

(c) Transformer,Inc.

今回ぶった斬られていただいた愛すべき作品

『ボビー・オロゴンの日本文化講座 美しい国、ニッポン。』

出演:ボビー・オロゴン / 猫ひろし ほか
製作:トランスフォーマー

12月22日、トランスフォーマーよりリリース。
山田井ユウキ

レビューサイト「カフェオレ・ライター」主宰。サイトでのP.N.は「マルコ」。映画はもちろんマンガ、ゲーム、さらにはBL作品に至るまで幅広くレビュー記事を執筆、その独特な視点とテンポのよい文章で人気を博し、このほど累計1千万アクセスを突破した