ゴールデンウィークに休みが取れない人、出かけられない人には、「劇場」という魔法の空間への小トリップをおすすめしたい。ひとたび足を踏み入れれば、国も時間も瞬く間に飛び越えることができるとっておきの場所だ。ここでは、あこがれのスターを生で見ることだってできるかも!? パスポートも重い荷物もいらない旅にいざ──。今回は、たくさんの選択肢のなかから、注目の3つの「旅」をご案内しよう。

『春のめざめ』 - 世界で話題沸騰のミュージカルを「劇団四季」が上演

2007年に、トニー賞の最優秀ミュージカル作品賞を含む8部門を受賞したミュージカル。19世紀末のドイツを舞台に、思春期の若者たちの心の揺れや性への葛藤を描いた。19世紀末に初演されたが(物語の舞台と同じ!)、自殺やセックス、同性愛などを正面からとらえた舞台が衝撃的すぎるということで、以来100年あまり上演が禁止されていた。そのセンセーショナルな戯曲が、21世紀のニューヨークで、ミュージカルとして蘇ったのである。

photo by Joan Marcus

ロックに乗せて、少年少女の心の叫びを表現した同作は若い世代を中心に大きな支持を得て、全米ツアー、ロンドン、ウィーン、トロント、ヘルシンキなど国境をこえて感動を生み続けている。「あなたの物語でもある」といったメッセージが込められているのだろうか、舞台上にも客席を配置したり、ほかの多くのミュージカルのようにワイヤレスマイクを使うのではなく、演者がハンドマイクを取り出して歌い出す演出も斬新。「俺の心の叫びを聴いてくれ!」といわんばかりに、若者のもどかしさがストレートに伝わってくる。過激な性描写が話題だが、不思議といやらしさを感じないのは少年少女の純粋なまでの必死さゆえ? 映画化も検討されているという世界的な話題作、ぜひ自身の目で確かめたい。

photo by Joan Marcus

誰もが経験した「普遍的なテーマ」がロックミュージカルに

『春のめざめ』
日程 2009年5月2日(土)~ロングラン(~8月30日(日)分までチケット発売中)
会場 自由劇場(東京・浜松町)
フランク・ヴェデキント
台本・歌詞 スティーヴン・セイター
料金 S席9,000円、A席7,000円、B席6,000円(学生料金3,000円)、ステージシート7,000円

『楽屋』 - 個性派女優4人のぶつかり合いを小劇場で堪能する至福

「女優」と生き様にスポットを当て、女優の業を闊達に、そして包み込むような温かな筆致で描き出す『楽屋』。これまでも何度となく上演されてきた清水邦夫の傑作戯曲に、今回、小泉今日子、蒼井優、村岡希美、渡辺えりの4女優が挑む。経歴も個性もさまざまな4人の個性派女優の熱演が、シアタートラムという客席数200強の箱で拝めるのは純粋にうれしい。自身も俳優である生瀬勝久が演出を手がけるという点でも注目で、演劇ファンならずとも胸高まる顔合わせだ。

チェーホフの『かもめ』を上演している劇場の楽屋が舞台となっていて、劇中には、まるで宝物のようにチェーホフやシェイクスピアのせりふが散りばめられている。清水邦夫独特の誌的なせりふも見どころ、聴きどころだ。前売券はすでに完売しているが、当日券は電話での前日予約にて全ステージ販売予定。「チケットが取れなかった~」と、あきらめるのはまだ早い。当日券情報はこちら

宝探し気分で、劇中随所に散りばめられた名せりふを探して!

『楽屋』
日程 2009年5月10日(日)~6月14日(日)
会場 シアタートラム(東京・三軒茶屋)
清水邦夫
演出 生瀬勝久
キャスト 小泉今日子、蒼井優、村岡希美、渡辺えり
料金 全席指定7,000円

『流れ星』 - うつみ宮土理が出演を熱望した人気劇団作は、ハンカチ必携!

テレビドラマ『花より男子』『歌姫』などで活躍中の脚本家、宅間孝行が主宰する劇団「東京セレソンデラックス」。2006年の初演以来、3年ぶりの再演となる『流れ星』は、「涙と笑いのウェルメイドプレイ」を身上とする同劇団の真骨頂ともいえる作品だ。おおいに笑い、最後には涙を禁じえない作風は、「最近、心が乾いているな」「最後に涙を流したのって、いつだっけ?」という人におすすめ。ベタなつくりだが、だからこそ(!?)ホロリとさせられる。

本作のテーマは「夫婦愛」「家族の絆」。同劇団のほかの作品をみて宅間に出演を熱望したといううつみ宮土理が、初演に続き、熟年離婚を考える妻を演じる。うつみ演じる妻が、夫の急死後に魔法使いと出会い、結婚前の昭和45年にタイムスリップするというファンタジーだ。衣裳や音楽など、昭和45年に関するキーワードがたっぷり詰まった舞台づくりも必見。ハンカチ持参で、2時間あまりのタイムスリップを楽しみたい。

ヒロインとともに、「昭和45年」の世界へ

『流れ星』
日程 2009年5月20日(水)~6月14日(日) ※地方公演あり
会場 シアターサンモール(東京・新宿)
作・演出 宅間孝行
キャスト 宅間孝行、うつみ宮土理、山田まりやほか
料金 全席指定5,000円
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、All About演劇・コンサートや女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している

イラスト:gnk