春、なにか新しいことを始めたくなる季節。「観劇? なんだか堅苦しくて……」と、敬遠気味の方も、ぽかぽかの陽気に誘われ、そろそろ重い腰をあげてみては? とくに、この春は、演劇初心者も演劇フリークも楽しめる作品がもりだくさん。 新年度のスタートは、エキサイティングな観劇で決まり!?

『容疑者Xの献身』 - 大ベストセラー小説を人気劇団が舞台化!

直木賞を受賞した東野圭吾の『容疑者Xの献身』。映画版のヒットも記憶に新しく、文庫版は発売3ヶ月で150万部を突破した大ヒット作が舞台化される。舞台版を手がけるのは、今年で結成24年目となる演劇集団キャラメルボックス。小劇場を中心に活動をスタートし、今では年間15万人の動員を誇る人気劇団だ。

(c)タカノリュウダイ

笑って、泣けるハートウォーミングな芝居を得意とする同劇団が、シリアスなミステリーを手がけると聞き、驚いたのも事実。が、脚本・演出の成井豊の原作物の丁寧な描き方には定評がある。製作発表でもセリフを含め、原作に忠実な舞台化を示唆するなど、原作ファンにとっても楽しみな公演になりそう。また、キャラメルボックスファンも、「いつもと一味違うキャラメルボックス」に出会えるはず。人気テレビドラマ『相棒』の刑事役でおなじみの川原和久など、個性的なゲストにも期待が高まる。

あの「究極の愛情」が、舞台でどう表現されるか見もの

演劇集団キャラメルボックス2009スプリングツアー『容疑者Xの献身』
日程 2009年4月30日(木)~5月24日(日)
会場 サンシャイン劇場(東京・池袋) ※地方公演あり
原作 東野圭吾『容疑者Xの献身』(文春文庫刊)
脚本・演出 成井豊
キャスト 西川浩幸、岡田達也、西牟田恵、斎藤歩、川原和久、大森美紀子、前田綾、三浦剛、筒井俊作、實川貴美子、石原善暢
料金 全席指定7,000円

『黒革の手帖』 - 装いも新たに、米倉涼子の「元子ママ」が帰ってくる!

原作は、松本清張の長編小説。元銀行員が銀行の機密事項を書き留めた黒革の手帖を楯に横領した1億8千万円ちかくの金を元手に銀座のクラブママとしてのし上がっていく。2004年放送のテレビドラマでも主演を演じた米倉涼子が2006年の舞台版でも主役を務め、初舞台とは思えない存在感が話題に。以来、再演の声があとをたたなかった舞台版『黒革の手帖』が、松本清張の生誕100年の今年、待望の再演となる。米倉の総額1億円にも及ぶ衣装はもちろん、1982年のテレビドラマ版に出演している萬田久子をはじめ、横山めぐみ、永井大といったキャストのゴージャスさもさながら夜の銀座のよう!?

芝居のほかにも、その名が示すとおり明治時代から歌舞伎の殿堂として親しまれている「明治座」という劇場そのものも堪能したい。歌舞伎でおなじみの花道を残す数少ない、東京を代表する老舗劇場のひとつだ。その花道を使った演出、昔の歌舞伎観劇のように幕間に土産ものを買ったり、食事をするのも楽しい。休憩時間もとことん満喫したい。

米倉の"当たり役"と豪華絢爛の衣装は必見!

『黒革の手帖』
日程 2009年4月29日(水・祝)~5月25日(月)
会場 明治座(東京・日本橋浜町)
原作 松本清張『黒革の手帖』(新潮文庫刊)
脚本 金子成人
脚本・演出 西川信廣
キャスト 米倉涼子、永井大、萬田久子、松本莉緒、横山めぐみ、左とん平、田山涼成、渡辺哲ほか
料金 A席12,000円、B席5,000円

音楽劇『三文オペラ』 - 初演から80年。世界的名作に宮本亜門が挑戦!

1928年にベルリンで初演され、早80年。『三文オペラ』は、20世紀を代表する劇作家、ベルトルト・ブレヒトの代表作だ。19世紀のロンドンの貧民街を舞台に、資本主義社会の矛盾を風刺したこの音楽劇は鮮烈なまでのメッセージ性をもち、日本でもこれまで何度となく上演されている。演劇にとりたてて興味のない人もタイトルは耳にしたことがあるのでは?

この稀代の名作に、『太平洋序曲』で東洋人演出家として初めてブロードウェイに進出した、宮本亜門が挑む。社会の仕組みを痛切に皮肉りながら、人間の根底に迫る作品は、世界が不況にあえぐ今、改めて観てみたい! 窃盗団のボス役を演じる三上博史が、劇中歌全曲の歌詞を担当するというのもエキサイティング。世界的な名作がまったく新しい形で、21世紀の日本で華麗に蘇る!

「過激」とうわさの三上博史の歌詞はいかに!?

音楽劇『三文オペラ』
日程 2009年4月5日(日)~29日(水・祝) ※地方公演あり
会場 Bunkamura シアターコクーン(東京・渋谷)
原作 ベルトルト・ブレヒト
音楽 クルト・ヴァイル
翻訳 酒寄進一
演出 宮本亜門
キャスト 三上博史、秋山菜津子、安倍なつみ、松田美由紀、明星真由美、米良美一、田口トモロヲ、デーモン小暮閣下ほか
料金 S席12,000円、A席9,000円、コクーンシート6,000円
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、All About演劇・コンサートや女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している

イラスト:gnk