うららかな気候に誘われ、ちょっと遠出したい気分の5月。が、そんな気分とは裏腹に、なかなか休みが取れない~! という人も多いことでしょう。そんなあなたにおすすめなのが劇場での異文化体験。ほんの2、3時間で、場所も時間も超え、日常生活と異なる世界にどっぷりと浸れます。現代、過去への旅も思いのまま。さあ、どこに出かけましょうか。
黒い十人の女 - 市川崑監督の『黒い十人の女』が初の舞台化!
1961年に公開された市川崑監督の映画『黒い十人の女』が初めて舞台化される。9人の愛人と妻との間で、決定的な関係を作らず生きる男、風松吉が主人公の同作の、舞台版のオリジナル脚本と演出を手掛けるのは、劇作家や演出家、映画監督、そしてミュージシャンとして幅広く活躍中のケラリーノ・サンドロヴィッチ。映画版は、船越英二、岸恵子らが出演、2002年には市川監督自身が小林薫、鈴木京香らのキャスティングでリメイクし、ドラマ化した同作はいまも根強いファンを持ち、日本版ヌーヴェルヴァーグの傑作との評価も高い。この名作が、舞台でどのように生まれ変わるのか。主宰する劇団「ナイロン100℃」にとっても、映画を原作とした作品は初の試み。映画では用いられなかったエピソードも加えられることに加え、円形劇場という空間で、演劇ならではの手法がどう用いられるかも興味深いところ。
円形劇場で、傑作映画がどう生まれ変わる!?
ナイロン100℃『黒い十人の女~version100℃~』 | |
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日程 | 5月20日(金) ~ 6月12日(日) |
会場 | 青山円形劇場(東京・青山) |
脚本 | 和田夏十(映画『黒い十人の女』市川崑監督) |
上演台本・演出 | ケラリーノ・サンドロヴィッチ |
キャスト | 峯村リエ、松永玲子、村岡希美、新谷真弓・みのすけ/中越典子、小林高鹿・緒川たまきほか |
料金 | 全席指定6,900円 |
『たいこどんどん』 - 歌たっぷり! 井上ひさし作品の醍醐味が集結
『天保十二年のシェイクスピア』、『表裏源内蛙合戦』などに続く、井上ひさし&蜷川幸雄のタッグの第5弾。井上ひさしが直木賞受賞後の第一作として書いた小説「江戸の夕立ち」をみずから劇化したのが、この作品だ。江戸日本橋の薬酒問屋の若旦那とたいこもちが、ひょんなことから漂流。拾われた船に、東北・釜石に連れて行かれた彼らの珍道中を描く。9年をわたる漂流のあと、江戸に戻った彼らを待っていたのは──? 歌、踊りがたっぷりなことに加え、市井の人々を見つめる温かい目線が井上芝居の真骨頂。上質なエンタテインメントが、若旦那役は中村橋之助、お供の桃八には古田新太、また、11年ぶりの舞台出演となる鈴木京香が複数の役柄を務める豪華キャストで蘇る。
『たいこどんどん』 | |
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日程 | 5月2日(月)~5月26日(木) |
会場 | Bunkamura シアターコクーン(東京・渋谷) |
作 | 井上ひさし |
演出 | 蜷川幸雄 |
キャスト | 中村橋之助、古田新太、鈴木京香、宮本裕子、大石継太、大門伍朗、市川夏江、大林素子、飯田邦博、塚本幸男、立石凉子、六平直政、瑳川哲朗ほか |
料金 | S席10,000円、A席8,500円、コクーンシート5,000円 |
井上ひさし初期の名作に、蜷川演出初挑戦となる中村橋之助が挑む
『カレーライフ』 - 究極のカレーを追求する若者たちの「自分探し」の旅
2001年に刊行された小説『カレーライフ』を原作とした、自分探し真っ最中の若者たちを描いた青春群像劇。5人のいとこたちが懐かしい「じいちゃんのカレー」を作ろうと、世界各地を巡るなかで、生きることの辛さや人生の喜びを知り、成長していく様をつづっている。
彼らの「旅」の過程で、日本の国民的食べ物とも言われるカレーの魅力を存分に表現しているのが秀逸! 祖父が亡くなった日。大人になったらみんなでカレー屋をやろうと誓い合っていた5人のいとこたちは誓い合う。13年後、ケンスケは、カレー屋の夢をスタートさせるため、行動を開始した。アメリカ、インド、そして、沖縄と次々と移動していくシチュエーションを舞台で、どう表現していくかも楽しみ。
『カレーライフ』 | |
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日程 | 5月14日(土) ~5月22日(日) |
会場 | 銀河劇場 (東京・天王洲アイル) |
原案・原作 | 竹内真 |
劇作・脚本 | 鈴木哲也 |
演出 | 深作健太 |
キャスト | 中村蒼 、倉科カナ、井上正大、植原卓也、崎本大海、大口兼悟、長谷部優、是近敦之 |
料金 | 全席指定7,500円 |
終演後はきっと、カレーを食べたくなっている、はず!?
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、演劇専門誌や女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している
イラスト:gnk