まだまだ寒い日が続きますが、ニッポンのエンタメ界は元気いっぱい、ホットです。各賞を受賞し、再演を待ち望まれた作品に、日本を代表する演出家と豪華キャストのタッグなど、いつ何を観ようか迷ってしまうほどの充実のラインアップ! テレビでおなじみの俳優の芝居を生で見られるという魅力もあらがえません。
『焼肉ドラゴン』 - 各演劇賞を総なめにした佳作が待望の再演
2008年、在日コリアン3世の鄭義信が作、演出を手掛け、東京とソウルで上演された日本と韓国のコラボレーション作品。初日を開けたあと、口コミで評判が広がり、読売演劇大賞 大賞・最優秀作品賞、紀伊國屋演劇賞 個人賞(鄭義信)をはじめ、同年の各演劇賞を総なめに! 大阪万博に沸く1970年前後の関西の地方都市に暮らす在日コリアン一家と、彼らが営む小さな焼肉屋に集う人々を描いた同作は、笑いと涙に包まれ、登場人物の体温が伝わってくる佳作。自らのルーツに真正面から向き合った鄭の筆力は圧巻だ。
そして、日本人、韓国人の俳優が入り混じり、日本語と韓国語が交差する舞台(字幕あり)は力強く、リアリティに満ちている。月並みな言い方だが観たあとに、生きるエネルギーがあふれてくるお芝居。そして、帰路は焼肉が食べたくなっているはず!?
両国の言葉が飛び交う日韓コラボレーション作品
『焼肉ドラゴン』 | |
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日程 | 2011年2月7日(月)~2月20日(日) |
会場 | 新国立劇場 小劇場(東京・初台) ※地方公演、韓国公演あり |
作・演出 | 鄭義信 |
キャスト | 千葉哲也、粟田麗、占部房子、若松力、笑福亭銀瓶、佐藤誓、水野あや、山田貴之、朴勝哲、申哲振、朴帥泳、金文植、高秀喜、朱仁英 |
料金 | A席5,250円、B席3,150円 |
『南へ』 - 妻夫木聡と蒼井優が、野田作品で初共演!
火の山が大好きな男(妻夫木聡)が事務員として火山観察所に赴任すると、そこには虚言癖を持つ女(蒼井優)が待っていた!
妻夫木、蒼井のほか、渡辺いっけい、高田聖子、チョウソンハ、銀粉蝶など、野田秀樹が豪華キャストを迎えて贈る新作は、「嘘」をテーマにした作品だ。妻夫木と蒼井は、CM以外では本作が初共演。蒼井は、野田作品も初出演となるが、2009年の舞台『楽屋』の演技に感嘆した野田が、自ら声をかけたのだそう。なるほど、『楽屋』の蒼井は瑞々しく、あやしく、非常に魅力的だっただけに野田や妻夫木とのタッグも楽しみ。
信じるとは何かを問う、野田の最新作
『南へ』 | |
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日程 | 2011年2月10日(木)~3月31日(木) |
会場 | 東京芸術劇場 中ホール(東京・池袋) |
作・演出 | 野田秀樹 |
キャスト | 妻夫木聡、蒼井優、渡辺いっけい、高田聖子、チョウソンハ、黒木華、太田緑ロランス、銀粉蝶、山崎清介、藤木孝、野田秀樹 |
料金 | S席9,500円、A席7,500円、サイドシート5,500円 |
『シングルマザーズ』 - 永井愛がシングルマザーたちの5年間を描く
今年30周年を迎える二兎社の新作は、児童扶養手当の削減をめぐって国会を動かそうとするシングルマザーたちの活動を描いたもの。紀伊國屋演劇賞個人賞や岸田國士戯曲賞などこれまで様々な賞を受賞してきた永井愛の書き下ろし新作を、沢口靖子、吉田栄作など、お茶の間でおなじみの俳優たちで上演する。
細やかな筆致、演出に定評のある永井は、「シングルマザーを描くことで、シングルマザー以外のことが描ける。今シングルマザーがどのように暮らしているかを描くことが、今の私たちを描くことにつながる」とコメント。シングルマザーたち支援団体「ひとりママ・ネット」の事務局を舞台に、彼女たち、そして、吉田演じるゆがんだ価値観をもつ男性の5年間を綴っていく。永井が切り取る「今」から見えてくるものは──?
沢口靖子、吉田栄作の新たな一面に出会える!?
『シングルマザーズ』 | |
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日程 | 2011年2月20日(日)~3月27日(日) |
会場 | 東京芸術劇場小ホール1(東京・池袋) |
作・演出 | 永井愛 |
キャスト | 沢口靖子、根岸季衣、枝元萌、玄覺悠子、吉田栄作 |
料金 | 一般5,000円(2月20日のみ4,000円)、学生3,000円 |
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、演劇専門誌や女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している
イラスト:gnk